スプリンクラーから水が出たら、まず本当に火災でないかを確かめます。火災でなければ、その区域の制御弁を閉めて水を止め、次にポンプの制御盤でポンプを止めます。そのうえで、消防署と消防設備の点検業者に連絡し、水がかかった電気を止めて、入居者の方を移します。
この記事の結論
- 最初に、本当に火災でないかを確かめる。火災なら止めない
- 止める順番は、先に制御弁、次にポンプ
- 火災通報装置と連動している施設は、消防に誤作動を伝える
- 水がかかった電気を止め、入居者を移し、拭く前に記録する
- 止めている間の備えを消防署と相談し、早く復旧する
最初に、本当に火災でないかを確かめる
スプリンクラーから水が出たとき、最初に確かめるのは、本当に火災ではないかです。スプリンクラーは、火災の熱でヘッドが開いて水を出す設備です。火災で作動しているのに水を止めてしまうと、火が広がります。煙、炎、焦げたにおいがないかを、水が出ている部屋と、その近くの部屋で確かめます。
- 火災でないことを確かめる煙、炎、焦げたにおいがないかを確かめます。少しでも火災の疑いがあれば、水は止めずに、入居者の避難と119番の通報をします。
- 入居者を離す水が出ている部屋と近くの部屋から、入居者の方を移します。濡れた床で転ばないよう、通路をふさぎます。
- 制御弁を閉める火災でないと分かったら、その区域の制御弁を閉めて、水を止めます。
- ポンプを止める制御弁を閉めたあとに、ポンプの制御盤で、スプリンクラーのポンプを止めます。
- 連絡と記録消防署と消防設備の点検業者に連絡します。水がかかった電気を止め、拭く前に写真を撮ります。
スプリンクラーのヘッドは、一つの部屋で一つが開いても、ほかのヘッドが一緒に開くわけではありません。水が出ているのが、物が当たって壊れたヘッド一つだけで、近くに煙も熱もないときは、誤作動の可能性が高いと考えられます。それでも、壁の向こうや天井の裏で火が出ていないかは、近くの部屋も含めて確かめます。
火災かどうかの判断に迷うときは、止めない側に立ってください。避難と通報を優先し、消防の判断を待ちます。誤作動だとはっきり分かったときだけ、止める手順に進みます。判断した職員の名前と時刻も、記録に残しておきます。
止める順番は、先に制御弁、次にポンプ
スプリンクラーを止めるには、2つの操作が要ります。その区域への水を止める制御弁を閉めることと、水を送るポンプを止めることです。順番は、先に制御弁、次にポンプです。
スプリンクラーのポンプは、配管の水が流れて圧力が下がると、自動で動き出す仕組みになっています。そして、多くの場合、自動では止まらず、制御盤で止める必要があります。先にポンプを止めても、制御弁が開いていれば、配管や水槽に残った水が出続け、圧力が下がるとポンプがまた動き出すことがあります。先に制御弁を閉めて、その区域への水の流れを止めてから、ポンプを止めます。
| 場所 | よくある置き場所 | 操作 |
|---|---|---|
| 制御弁 | 各階の「制御弁」と書かれた扉の中、パイプシャフトの中 | 弁のハンドルを回して閉める |
| ポンプの制御盤 | ポンプの機械室(地下や1階が多い) | 停止のボタンを押す |
| 自動火災報知設備の受信機 | 事務所やナースステーション | 表示を確かめる。音を止める操作は手順に従う |
設備の作りは、施設によって違います。止め方は、点検の日に業者と一緒に確かめておいてください。
小規模な施設には、水道の配管につながったスプリンクラー(特定施設水道連結型)を設けていることがあります。この形は、ポンプを使わず水道の圧力で水を出すため、止め方が違います。自分の施設がどちらの形かを、点検の業者に確かめておいてください。
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消防への連絡と、火災通報装置
スプリンクラーが作動すると、配管の水の流れを感じて、自動火災報知設備の受信機に表示が出ます。介護施設の多くは、平成27年の制度の改正で、自動火災報知設備と連動して消防に自動で通報する火災通報装置を備えています。そのため、誤作動でも、消防に自動で通報されることがあります。
誤作動だと分かったら、消防署に、火災ではなく誤作動であること、水を止めたこと、入居者の方にけががないことを伝えます。消防隊が向かっている場合も、到着したら状況を説明します。勝手に受信機を操作して表示を消すのではなく、点検の業者か消防の指示に従います。
| 項目 | 伝える中身 |
|---|---|
| 施設名と所在地 | 通報を受けた消防が場所を確かめるため |
| 誤作動であること | 煙や炎がなく、火災ではないと確かめたこと |
| したこと | 制御弁を閉め、ポンプを止めたか |
| 入居者の様子 | けがや体調の変化がないか |
| 原因の見当 | ヘッドに物が当たった、など分かる範囲で |
水損への対応
スプリンクラーのヘッド1つから出る水の量は、思っているより多く、短い時間でも部屋が水浸しになります。下の階にも水が回ることがあります。水を止めたら、すぐに水損への対応に移ります。
水を止めたあとにすること
- 水がかかったコンセント・照明・機器には触れず、その回路のブレーカーを切る
- 下の階の天井や部屋に水が回っていないかを見に行く
- 拭く前に、水が出たヘッド、濡れた範囲、濡れた物を写真に撮る
- 濡れた寝具や家具、入居者の持ち物を乾いた場所に移す
- 床の水を吸い取り、換気と送風で乾かす
水が出ている間に、入居者の方を移すときは、濡れた床で職員も転ばないよう、足元に気をつけます。車椅子の方は、水のかからない場所まで押して移し、ベッドで過ごす方は、ベッドごと動かせるなら部屋の外へ出します。移した方の体が濡れていたら、すぐに着替えと保温をします。
水がかかった電気の設備は、感電や漏電のおそれがあります。漏電のブレーカーが落ちたときは、何度も上げ直さず、電気工事の業者か保安の担当者に見てもらいます(介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがあります)。床や壁、天井にしみ込んだ水は、表面を拭いても残るため、乾くまで張り替えを待ちます。水漏れのときの記録と乾燥の考え方は、老人ホームで水漏れ。修理より先にすることがありますにまとめています。
施設の火災保険によっては、スプリンクラーの設備からの放水による損害が、補償の対象になることがあります。補償の範囲は契約で違うため、保険会社か代理店に確かめてください。申請には、拭く前の写真と、原因の記録が要ります。
介護施設で、誤作動が起きやすい場面
スプリンクラーのヘッドは、天井から少し出ているため、物が当たると壊れて水が出ることがあります。介護施設では、ほかの建物にはない当たり方をすることがあります。
| 場面 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 介助の器具・リフトの操作 | リフトのアームや器具がヘッドに当たる | ヘッドの位置を職員に知らせ、器具の動く範囲を確かめる |
| 背の高い家具や物の移動 | 棚やカーテンレールの取り付けでヘッドに当たる | 天井の近くで作業するときは、ヘッドの位置を確かめる |
| 物干し・吊り下げ | ヘッドに物を掛ける、ひもをかける | ヘッドに物を掛けないことを職員と入居者に伝える |
| 寒さ・凍結 | 配管の水が凍って、配管やヘッドが傷む | 寒冷地は、凍結の対策を点検で確かめる |
| 工事や内装の作業 | 業者の脚立や材料が当たる | 工事の前に、ヘッドの位置を業者に伝える |
| 経年の傷み | 配管やヘッドの腐食 | 点検の報告書の指摘を修繕の計画に入れる |
誤作動が起きた場所と原因は、記録に残しておきます。同じ場所で器具が当たりやすいなら、器具を動かす場所を変える、ヘッドに保護の部品を付けられるかを業者に相談する、といった対策につなげられます。保護の部品を付けるときは、散水の妨げにならないよう、消防設備の業者に頼みます。
ヘッドの近くで暖房の器具を使うと、熱でヘッドが開くおそれもあります。ヘッドのそばに熱を出す器具を置かないよう、居室の家具の配置のときにも気をつけてください。入居者の方の持ち込みの家具や家電も、配置の確認に含めます。
止めている間の備えと、復旧
制御弁を閉め、ポンプを止めている間、その区域はスプリンクラーが働かない状態です。火災が起きても水が出ません。止めている時間をできるだけ短くするため、消防設備の点検業者に、すぐに復旧を頼みます。業者は、壊れたヘッドを交換し、配管に水を戻して、ポンプと制御弁を元の状態に戻します。
復旧までの間は、消防署に連絡し、その間の対応を相談します。見回りを増やす、消火器を近くに置く、火を使う作業を控える、といった備えをします。夜間に止めた場合は、夜勤の人数で見回れるかも見直します。止めた時刻と、元に戻した時刻は、必ず記録に残します。
ヘッドの交換と復旧は、消防用設備の工事や整備にあたるため、消防設備士などの資格を持つ業者が行います。職員がヘッドを交換したり、配管に手を入れたりすることはできません。復旧のあとは、自動火災報知設備の受信機の表示が正常に戻っているか、業者と一緒に確かめます。
スプリンクラーの設置と点検の決まり
介護施設のスプリンクラーの設置の義務は、平成27年4月に施行された改正で広がり、特別養護老人ホームや認知症の方のグループホームなど、自分で避難することが難しい方が多く入る施設では、延べ面積にかかわらず、原則として設置が必要になりました。くわしくは火災報知器が鳴りやまない。受信機の表示から、止め方が決まりますにまとめています。
| 点検 | 周期 | 内容 |
|---|---|---|
| 機器点検 | 6か月ごと | 外から見て、機器の状態と配置を確かめる |
| 総合点検 | 1年ごと | 設備を動かして、全体が働くかを確かめる |
| 消防署への報告 | 1年ごと(介護施設などの特定防火対象物) | 点検の結果を報告する |
点検は、消防設備士などの資格を持つ人が行います。点検の報告書の指摘は、修繕の計画に入れてください。
点検の日は、止め方を職員が確かめるよい機会です。制御弁の場所、ポンプの制御盤の場所、止める順番を、点検の業者に実際に見せてもらい、夜勤の職員も含めて共有しておきます(消防設備の点検は年2回、消防署への報告は年1回です)。
モデルケース:リフトのアームがヘッドに当たった施設
モデルケース:定員60名の特別養護老人ホーム(ユニット型)
入浴の介助中に、浴室の前の廊下でスプリンクラーが作動した
変わったこと(結果)
移乗用のリフトを動かしたとき、アームが天井のスプリンクラーのヘッドに当たり、水が出始めました。職員はすぐに煙や炎がないことを確かめ、入居者の方を移しました。点検の日に止め方を確かめていたため、2階の制御弁を閉め、地下のポンプの制御盤でポンプを止めるまで、5分ほどで済みました。火災通報装置で消防に通報されていたため、消防署に誤作動を伝えました。点検の業者がその日のうちにヘッドを交換し、夕方には元に戻りました。
背景と、困っていたこと
この施設では、1年前に同じような誤作動があり、そのときは止め方が分からず、業者が来るまで20分ほど水が出続けました。廊下と2部屋の床が水浸しになり、床の張り替えに数週間かかりました。
その後に決めたこと
前回のあと、施設は、点検の日に業者と一緒に止め方を確かめ、制御弁とポンプの制御盤に手順の札を付けていました。今回は、リフトのアームが届く範囲にヘッドがあることも分かったため、リフトを動かす場所を変えることにしました。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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施設長・法人・ご家族への伝え方
スプリンクラーの誤作動は、水損と、止めている間の防火の両方に関わるため、施設長と法人に早めに報告します。報告は、事実、したこと、見込み、決めてほしいことに分けます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 事実 | いつ、どこのヘッドから水が出たか。原因の見当。火災ではないこと |
| したこと | 制御弁とポンプを止めた時刻、消防署への連絡、入居者の移動、電気の遮断 |
| 見込み | 点検業者の復旧の予定、床や壁の乾燥と張り替えの見込み |
| 決めてほしいこと | 張り替えの決裁、保険の申請、再発を防ぐ対策 |
水がかかった部屋の入居者の方とご家族には、何が起きたか、火災ではなかったこと、部屋を移した理由と、元に戻るまでの見込みを伝えます。持ち物が濡れたときは、写真に残し、扱いを相談します。驚かれた入居者の方には、落ち着くまで職員がそばにいます。
誤作動の前に、平日のうちにしておくこと
平日のうちにしておくこと
- 制御弁とポンプの制御盤の場所、止める順番を、点検の日に業者と確かめる
- 制御弁とポンプの制御盤に、止める手順の札を付ける
- 夜勤の職員も含めて、止め方を年に一度確かめる
- 介助の器具が届く範囲にヘッドがないかを見直す
- ヘッドに物を掛けない、そばに熱を出す器具を置かないことを伝える
- 点検の報告書の指摘を、修繕の計画に入れる
設置の義務は火災報知器が鳴りやまない。受信機の表示から、止め方が決まります、消防用設備の点検と報告は消防設備の点検は年2回、消防署への報告は年1回ですにまとめています。
業務継続計画(BCP)や防災の計画に、スプリンクラーの誤作動のときの手順を一行加えておくと、運営指導でも、備えとして説明できます(運営指導の建物・設備は、届け出と記録と実態を見られます)。
よくある質問
スプリンクラーから水が出たら、まず何をすればよいですか
本当に火災でないかを確かめることです。煙、炎、焦げたにおいがないかを見ます。少しでも火災の疑いがあれば、水は止めずに、避難と119番の通報をします。
スプリンクラーは、どの順番で止めればよいですか
先に、その区域の制御弁を閉めて水を止め、次に、ポンプの制御盤でポンプを止めます。ポンプは水が流れると自動で動き出し、多くの場合は自動では止まらないためです。
制御弁はどこにありますか
各階の「制御弁」と書かれた扉の中や、パイプシャフトの中にあることが多いです。施設によって違うため、点検の日に業者と一緒に場所を確かめ、手順の札を付けておいてください。
誤作動でも、消防に連絡する必要がありますか
必要です。火災通報装置と連動している施設では、消防に自動で通報されていることがあります。火災ではなく誤作動であること、水を止めたこと、入居者にけががないことを伝えてください。
職員がスプリンクラーのヘッドを交換してもよいですか
できません。ヘッドの交換と復旧は、消防用設備の工事や整備にあたり、消防設備士などの資格を持つ業者が行います。
スプリンクラーを止めている間は、どうすればよいですか
消防署に連絡して、その間の対応を相談します。見回りを増やす、消火器を近くに置く、火を使う作業を控える、といった備えをし、点検の業者にすぐに復旧を頼みます。
スプリンクラーの水で濡れた床や家具は、保険で直せますか
施設の火災保険によっては、スプリンクラーの設備からの放水による損害が、補償の対象になることがあります。契約の範囲を保険会社か代理店に確かめてください。拭く前の写真が要ります。
介護施設で、誤作動はなぜ起きるのですか
移乗用のリフトや介助の器具がヘッドに当たる、ヘッドに物を掛ける、工事の脚立が当たる、寒さで配管が凍る、経年で傷む、といった原因があります。
小さなグループホームのスプリンクラーも、止め方は同じですか
小規模な施設には、水道の配管につながったスプリンクラー(特定施設水道連結型)を設けていることがあり、ポンプを使わないため止め方が違います。自分の施設の形を、点検の業者に確かめてください。
スプリンクラーの点検は、どのくらいの頻度ですか
消防用設備の点検は、機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごとです。介護施設などの特定防火対象物は、点検の結果を1年ごとに消防署へ報告します。
誤作動の水が電気の設備にかかりました
コンセントや照明、機器には触れず、その回路のブレーカーを切ります。漏電のブレーカーが落ちたときは、何度も上げ直さず、電気工事の業者か保安の担当者に見てもらいます。
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