雨漏りしたら、まず水を受けて入居者を離し、水がかかった電気の設備を止めます。雨の日のうちに、時刻・雨の強さ・風向き・漏れた場所と量を記録しておくと、原因の特定が早くなります。原因を調べてくれる業者を選び、調べた結果をもとに直し方を決めます。
この記事の結論
- 水が出た場所と、建物に入った場所は違う
- 雨の日のうちに、時刻・雨と風・漏れた場所と量を記録する
- 照明や電気の設備に水がかかったら、触れずに電気を止める
- 原因を調べてから直す。調べずに直すと、次の雨でまた漏れる
- 経年の傷みによる雨漏りは、保険の対象外になることが多い
雨漏りを見つけたら、最初にすること
雨漏りを見つけたとき、最初にするのは、水から入居者の方と電気の設備を守ることです。原因を探すのはそのあとです。介護施設では、居室の天井や、廊下の照明から水が落ちてくることもあり、転倒や感電につながるおそれがあります。
- 水を受けて入居者を離すバケツや吸水シート、タオルで水を受けます。濡れた床で転ばないよう、入居者の方を別の場所に移し、通路をふさぎます。
- 電気の設備を止める照明、コンセント、機器に水がかかったら、触れずに、その回路のブレーカーを分電盤で切ります。受変電設備に水が近づいているときは、電気の保安の担当者に連絡します。
- 雨の日のうちに記録する時刻、雨の強さ、風向き、漏れた場所と量を、写真と一緒に残します。雨がやむと、手がかりが消えてしまいます。
- 上の階と屋上の様子を見る安全に見られる範囲で、上の階の窓まわりや、屋上の排水口に落ち葉やごみがつまっていないかを確かめます。
- 原因を調べる業者に頼む記録を渡して、原因の調査から頼みます。
夜間や休日の雨で漏れたときも、最初の3つは同じです。夜勤の職員は、水を受けること、入居者の方を移すこと、電気を止めること、記録を残すことまでを行い、業者への連絡は朝に引き継ぎます。漏れが広がって天井がふくらんでいるときや、電気の設備に水が近づいているときは、夜でも施設長や営繕の担当に電話で相談します。
雨の中で、職員が屋根や屋上に上がって様子を見たり、ブルーシートをかけたりするのは、転落の危険があるためやめてください。屋上に出られる扉から、排水口のつまりを見る程度にとどめます。屋根の上の応急の手当ては、業者に頼みます。風の強い日は、屋上に出ることも避けてください。
水が出た場所と、入った場所は違う
雨漏りの難しさは、水が出てきた場所と、雨水が建物に入った場所が違うことです。屋上の防水の切れ目や、外壁の継ぎ目、窓まわりのすき間から入った水は、梁や配管、天井の裏を伝って、離れた場所に出てきます。天井のしみの真上を直しても、漏れが止まらないことがあるのはこのためです。
| 場所 | 入りやすい理由 | 見つけ方の手がかり |
|---|---|---|
| 屋上の防水 | 防水の層の傷み、継ぎ目のはがれ、排水口のつまり | 強い雨のときに漏れる、雨のあとしばらく漏れる |
| 外壁の継ぎ目(シーリング) | 継ぎ目を埋める材料の硬化やひび | 横殴りの雨のとき、特定の風向きで漏れる |
| 窓・サッシのまわり | サッシと外壁のすき間、窓枠のシーリングの傷み | 窓の下の壁や床が濡れる |
| 外壁のひび | 塗装やモルタルのひびから水がしみる | 外壁の同じ高さの内側にしみが出る |
| 屋根・板金 | 屋根材のずれ、板金の浮き、雨どいのつまり | 最上階の天井に出る |
外壁の継ぎ目を埋めるシーリングは、塗装より先に傷むことが多い部分です。築10年を過ぎた施設で、窓まわりから漏れる雨漏りは、シーリングの傷みが原因のことがよくあります(シーリングの劣化は4段階。段階で、直し方と急ぎ方が変わります)。シーリングの打ち替えで止まることもあります。
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雨の日のうちに、記録を残す
雨漏りの原因を見つけるいちばんの手がかりは、どんな雨のときに漏れるかです。強い雨のときだけか、弱い雨でも漏れるか、特定の風向きのときだけか、雨が降り始めてすぐか、しばらくしてからか。業者がいちばん知りたいのは、この情報です。雨がやむと確かめられなくなるため、雨の日のうちに記録します。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 時刻 | 雨が降り始めた時刻と、漏れ始めた時刻 |
| 雨の強さ | 強い・弱い。天気予報の雨量が分かれば書く |
| 風向き | 強い風があったか、どの方向から吹いていたか |
| 漏れた場所 | 部屋の名前と、天井・壁・窓の下などの位置 |
| 量 | ポタポタ・したたる・流れる。バケツにたまった量 |
| 写真 | しみの広がり、水が落ちる所、外から見た窓や外壁 |
同じ場所で何度か漏れるときは、そのたびに記録を足していきます。何回分か記録がたまると、「南から強い風が吹く日だけ漏れる」といった傾向が見えてきます。傾向が分かれば、業者は、どこから水が入っているかの見当をつけやすくなります。記録の用紙は、漏れた部屋の近くに置いておくと、気づいた職員がすぐに書き込めます。
原因の調べ方
原因を調べる方法には、目で見る調査のほか、水をかけて漏れるかを確かめる散水の調査、建物の表面の温度の違いから水の通り道を見る赤外線の調査などがあります。どの方法を使うかは、建物の作りと、記録から見える傾向で業者が決めます。
| 調べ方 | やり方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 目で見る調査 | 屋上・外壁・窓まわりの傷みを見る | まず最初に。ひびやはがれが見えるとき |
| 散水の調査 | 入っていそうな場所に水をかけ、漏れるかを確かめる | 入った場所の見当がついているとき |
| 赤外線の調査 | 表面の温度の違いから、水が回った所を探す | 範囲が広いとき、目で見て分からないとき |
調べ方と費用は、建物と業者によって違います。調査の費用と、調査で分かることを、見積の段階で確かめてください。
調査の日は、雨の日でなくてもかまいません。散水の調査なら、晴れた日に水をかけて、雨の日と同じような状態をつくって確かめます。調査のあいだ、漏れていた部屋の入居者の方には、一時的に部屋を移ってもらうことがあります。日程は、入浴や食事の時間を外して組んでもらいます。
原因を調べずに、しみの真上だけを直すと、次の雨でまた漏れることがあります。見積を受け取ったら、原因をどう特定したか、ほかの可能性は残っていないかを、業者に確かめてください。調査に費用がかかっても、原因が分かれば、直す工事の範囲を絞れることがあります。
頼み先は、原因の場所で変わる
雨漏りを頼める業者には、防水の業者、塗装の業者、屋根や板金の業者、建設会社や工務店、雨漏りの調査を専門にする会社があります。どこから水が入っているかで、得意な業者が変わります。原因が分からないうちは、調査から頼める業者を選びます。
| 原因の場所 | 頼み先 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 屋上の防水 | 防水の業者、建設会社 | 部分の補修か、全体の改修かを見極める |
| 外壁・継ぎ目 | 塗装の業者、建設会社 | 足場が要ることが多い |
| 窓・サッシのまわり | 建設会社、サッシの業者 | シーリングだけか、サッシの交換が要るか |
| 屋根・板金・雨どい | 屋根・板金の業者 | 高所の作業になる |
| 原因が分からない | 雨漏りの調査をする会社、建設会社 | 調査の方法と費用を先に確かめる |
外まわりの修繕を、どの業態の会社に頼むかの違いは、外壁がはがれて落ちてきた。まず、下を通る人を守りますにまとめています。窓口では、送っていただいた記録と写真から、原因の見当と合う業者を見立てて声をかけます。
電気の設備に水がかかったとき
雨漏りの水が照明やコンセント、分電盤にかかると、感電や漏電、ショートにつながることがあります。水がかかった設備には手を触れず、その回路のブレーカーを分電盤で切ります。漏電のブレーカーが落ちたときは、何度も上げ直さないでください(介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがあります)。
電気の設備の修理を誰に頼むかは、施設の受電の形で変わります。受変電設備(キュービクル)がある施設は、電気の保安の担当者が最初の連絡先です。受変電設備のない施設は、電気工事の業者に頼みます。雨漏りが止まり、電気の設備がしっかり乾いてから、業者に点検してもらって電気を戻します。
保険と費用の考え方
火災保険では、台風や強風などの風災で屋根や外壁が壊れ、そこから雨が入った場合の損害が、補償の対象になることがあります。一方で、経年の傷みによる雨漏りは、補償の対象外とされることが多くあります。補償の範囲は契約で違うため、保険会社か代理店に確かめてください。
| 場面 | 保険の扱いの例 | 確かめること |
|---|---|---|
| 台風・強風で屋根や外壁が壊れた | 風災として対象になることがある | 被害の日時と、壊れた場所の写真 |
| 経年の傷みで雨が入った | 対象外になることが多い | 修繕の計画と予算に入れる |
| 雨漏りで濡れた天井・家具 | 原因によって扱いが変わる | 契約の補償の範囲 |
| 工事 | 費用の目安 | 工期 |
|---|---|---|
| 屋上防水の改修 | 500万〜3,000万円 | 1〜3か月 |
| 外壁の塗装・補修 | 800万〜3,000万円 | 1〜3か月 |
部分の補修なら、これより小さな金額で済むこともあります。建物の大きさ、工法、足場の有無で大きく変わります。
屋上の防水や外壁の工事は、工法によって次の工事までの年数が違います。見積を比べるときは、総額だけでなく、年あたりの費用で比べてください(屋上防水と外壁塗装は、総額より年あたりの費用で比べます)。
直したあとに、確かめること
雨漏りの修理が終わっても、本当に止まったかは、次に同じような雨が降るまで分かりません。修理のあと、最初の強い雨の日に、漏れていた場所を見て、記録を残します。止まっていれば、天井や壁の張り替えに進みます。
直したあとに確かめること
- 修理のあと最初の強い雨の日に、漏れていた場所を確かめる
- 天井の裏や壁の中が乾いてから、天井材や壁紙を張り替える
- 濡れていた所にカビやにおいが出ていないかを、数週間後に見る
- 修理の内容、原因の場所、保証の期間を記録に残す
- 同じ場所でまた漏れたときの連絡先を確かめる
雨漏りの修理には、保証の期間が付くことが多くあります。保証の期間のうちに同じ場所で漏れたときは、保証で直してもらえるかを確かめます。そのためにも、修理の内容と原因の場所を、写真と一緒に残しておいてください。工事の保証の種類と管理の仕方は、工事の保証は、3つに分けて部位ごとに控えますにまとめています。
モデルケース:何度直しても漏れた施設
モデルケース:4階建て・定員100名の特別養護老人ホーム(築18年)
しみの真上を2回直しても、雨漏りが止まらなかった
変わったこと(結果)
4階の居室の天井から、強い雨の日に漏れる雨漏りが続いていました。施設は、雨の日ごとに時刻・雨の強さ・風向きを記録し、3回分の記録をそろえて、調査から頼める業者に相談しました。記録から、南からの強い風の日だけ漏れることが分かり、散水の調査で、屋上の手すりの根元の防水の切れ目が原因と特定されました。その部分を補修したあと、雨漏りは止まっています。
背景と、困っていたこと
それまでの2回は、天井のしみの真上の屋上を部分的に直していました。記録をとっていなかったため、どんな雨のときに漏れるかが分からず、原因を絞れていませんでした。直すたびに費用がかかり、入居者の方の部屋の移動も2回くり返していました。
その後に決めたこと
施設は、雨漏りの記録の用紙を各階に置き、雨の日に職員が書き込む形にしました。あわせて、屋上の排水口の清掃を、年に2回の決まった作業にしました。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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施設長・法人・ご家族への伝え方
雨漏りは、くり返すほど修理の費用と入居者の方の負担がかさみます。施設長と法人には、事実、したこと、見込み、決めてほしいことに分けて報告します。くり返している雨漏りなら、これまでの修理の履歴も添えると、調査に費用をかけるかどうかの判断がしやすくなります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 事実 | いつ、どの部屋で、どんな雨のときに漏れたか |
| したこと | 水を受けた、入居者を移した、電気を止めた、記録をとった |
| 見込み | 業者の調査の予定、原因の見当、修理の見込み |
| 決めてほしいこと | 調査の費用、修理の範囲(部分か全体か)、保険の申請 |
居室で雨漏りしたときは、ご本人とご家族に、部屋を移した理由と、修理の見込みを伝えます。持ち物が濡れたときは、写真に残し、扱いを相談します。くり返し同じ部屋で漏れているときは、修理の計画と時期も伝えると、ご家族の不安が小さくなります。
雨の季節の前に、しておくこと
雨の季節の前にしておくこと
- 屋上やベランダの排水口の落ち葉やごみを取る(年に2回など、決まった作業にする)
- 外壁のひび、継ぎ目のシーリングの割れ、窓まわりのすき間を見る
- 雨漏りの記録の用紙を各階に置き、書き方を職員に伝える
- バケツ・吸水シート・ブルーシートの置き場所を決めておく
- 過去の雨漏りの場所と修理の履歴を、1枚にまとめる
- 屋上の防水と外壁の改修の時期を、修繕の計画に入れる
外まわりの修繕の頼み先は外壁がはがれて落ちてきた。まず、下を通る人を守ります、防水と塗装の費用の比べ方は屋上防水と外壁塗装は、総額より年あたりの費用で比べますにまとめています。
屋上に太陽光の設備を載せている施設、載せる予定の施設は、防水と太陽光の工事の責任の分け方も先に決めておきます。雨漏りが起きたときに、どちらの工事が原因かでもめないためです(太陽光と防水を同時にするなら、先に責任の分け方を決めます)。
よくある質問
雨漏りを見つけたら、まず何をすればよいですか
水を受けて入居者の方を離し、照明やコンセントに水がかかっていたら、触れずにその回路のブレーカーを切ります。そのうえで、雨の日のうちに、時刻・雨の強さ・風向き・漏れた場所と量を記録します。
天井のしみの真上を直したのに、また漏れます
雨水が入った場所と、出てきた場所は違うことがほとんどです。原因を調べずに真上だけを直すと、次の雨でまた漏れることがあります。記録をそろえて、原因の調査から頼んでください。
雨漏りの原因は、どうやって調べますか
目で見る調査のほか、水をかけて漏れるかを確かめる散水の調査、表面の温度の違いから水の通り道を見る赤外線の調査などがあります。記録から見える傾向で、業者が方法を決めます。
雨漏りの修理は、どこに頼めばよいですか
屋上の防水なら防水の業者、外壁なら塗装の業者や建設会社、屋根なら屋根・板金の業者が得意です。原因が分からないうちは、調査から頼める業者を選びます。
職員が屋上に上がって、ブルーシートをかけてもよいですか
雨の中で屋根や屋上に上がるのは、転落の危険があるためやめてください。屋上に出られる扉から排水口のつまりを見る程度にとどめ、屋根の上の応急の手当ては業者に頼みます。
照明から水が落ちてきます
照明には触れず、その回路のブレーカーを分電盤で切り、照明の下から入居者の方を離します。受変電設備がある施設は、電気の保安の担当者に連絡します。乾いてから業者に点検してもらって電気を戻します。
雨漏りの修理代は、火災保険で戻りますか
台風や強風などの風災で屋根や外壁が壊れ、そこから雨が入った場合は、補償の対象になることがあります。経年の傷みによる雨漏りは、対象外とされることが多くあります。契約の範囲を保険会社か代理店に確かめてください。
雨の日だけ天井から漏れるのか、晴れの日も漏れるのか分かりません
晴れの日にも漏れるなら、上の階の設備や配管の水漏れの可能性があり、頼む先が変わります。漏れた日の天気を記録して見分けてください。
屋上の防水は、何年ごとに直せばよいですか
工法によって、次の工事までの年数が違います。見積を比べるときは、総額だけでなく、年あたりの費用で比べてください。
外壁の継ぎ目のひびは、雨漏りの原因になりますか
外壁の継ぎ目を埋めるシーリングは、塗装より先に傷むことが多く、ひびや割れから雨水が入ることがあります。窓まわりから漏れる雨漏りは、シーリングの傷みが原因のことがよくあります。
雨漏りを防ぐために、日ごろできることはありますか
屋上やベランダの排水口の落ち葉やごみを、年に2回など決まった作業として取ることです。排水口がつまると、屋上に水がたまって防水の弱い所から漏れることがあります。
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