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補助金

基金で大規模修繕の補助を受けるには、
まず創設の条件を確かめます

外壁や浴室、給排水の傷みが進み、大規模修繕を考え始めた。調べると「地域医療介護総合確保基金」という名前が出てくるものの、自分の施設で使えるのかは、県の案内を読んでもよく分からない。そう感じている事務長や施設長は少なくありません。この記事では、基金の仕組みと、大規模修繕の補助を受けられる施設と工事、県の要綱にある創設の条件、要望から交付の決定までの流れを、着工から逆算して整理します。

構成:介護施設 修繕の窓口監修:鈴木貴行(介護施設営繕・修繕専門家)更新:読む時間:約21分

この記事が答える質問地域医療介護総合確保基金で、介護施設の大規模修繕に補助は出る?対象になる施設と工事は?

地域医療介護総合確保基金には、介護施設の大規模修繕に補助が出るメニューがあります。対象は主に、定員30人以上の広域型施設(特養・老健・介護医療院・養護・軽費)です。基金は国が3分の2、都道府県が3分の1を出して県ごとに置かれ、県(政令市などは市)が補助します。令和7年度の広島県の案内や長崎県の資料では、介護施設等を1施設創設することを条件に、広域型施設1施設の大規模修繕・耐震化を対象にしています。対象の工事は、築おおむね10年以上の施設の防水、浴室や食堂の改修、給排水・空調などの改造です(名古屋市の要綱の例)。前の年の夏〜秋の県の調査から動くので、着工の1年半前に準備を始めます。

この記事の結論

  1. 基金の大規模修繕の対象は、主に定員30人以上の広域型施設
  2. 介護施設等を1施設創設することを条件にする県の例がある
  3. 対象の工事は、築おおむね10年以上の施設の防水・改修・設備の改造など
  4. 創設の予定がなければ、ほかのメニューや交付金、県や市の補助を比べる
  5. 入口は前の年の夏〜秋の県の調査。着工の1年半前から動く

基金で大規模修繕の補助を受けられるのは、主に定員30人以上の広域型施設です

地域医療介護総合確保基金(以下、基金)の介護の分には、介護施設の大規模修繕に使えるメニューがあります。ただし、どの施設でも使えるわけではありません。対象は主に、定員30人以上の広域型施設です。名古屋市の要綱では、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム、軽費老人ホームが挙がっています。

要綱の例を見ると、ここに2つの条件が加わります。1つは、建ててからおおむね10年以上たっていること。もう1つは、介護施設等の創設を条件にすることです。令和7年度の広島県の案内でも、長崎県の資料でも、大規模修繕・耐震化は「介護施設等の創設を条件に」行う事業とされています。

基金の大規模修繕・耐震化の条件(要綱の例)
項目要綱の例確かめるところ
対象の施設特養・老健・介護医療院・養護・軽費(広域型)有料老人ホームやサ高住は、このメニューに入っていない
定員30人以上29人以下の施設は、市区町村の補助などを確かめる
建ててからの年数おおむね10年以上(名古屋市)何年目からかを、県の要綱の数字で確かめる
創設の条件介護施設等を1施設創設することを条件に、広域型施設1施設(長崎県)同じ法人か、年度のずれをどこまで認めるか
対象の経費工事費・工事請負費。工事事務費は工事費の2.6%まで(長崎県)設計や監理の費用がどこまで入るか
着工の期限その年度中に着工すること(名古屋市)年度をまたぐときの扱い
定員と創設の予定で、最初の見当がつく。最後は県の要綱と担当で確かめる。基金の大規模修繕が使えそうか定員30人以上の広域型施設で、介護施設等の創設の予定があるかある大規模修繕のメニューの候補要綱で条件を確かめるないほかのメニューや交付金、県や市の補助を確かめる
図1 定員と創設の予定で、最初の見当がつく。最後は県の要綱と担当で確かめる。

名古屋市の要綱の対象の施設には、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、デイサービスは入っていません。こうした施設の修繕は、防災・減災の交付金や、県・市区町村が独自に設ける補助を確かめます。どの施設でも、最後に決めるのは県の要綱と担当の答えです。

基金は、国が3分の2、都道府県が3分の1を出し、県の計画で使い道が決まります

基金は、消費税の増収分を財源に、都道府県ごとに置かれた財布のようなものです。国が3分の2、都道府県が3分の1を出します。根拠は、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律です。都道府県が計画を作り、その計画に載せた事業に基金のお金を使います。

基金には、医療の分と介護の分があります。介護の分は、介護施設等の整備と、介護の仕事をする人の確保の2つに分かれます。大規模修繕は、介護施設等の整備の中の1つのメニューです。見守り機器などの導入の支援は、施設の整備とは窓口や募集の時期が別になることがあります。

基金にかかわる4者の役割
担い手すること施設から見たとき
国予算を組み、都道府県に基金の財源を配る施設と直接のやり取りはない
都道府県計画と要綱を作り、要望を集めて、補助を決める大規模修繕の主な窓口
政令市・中核市など県から財源を受け、市の要綱で施設に補助することがある市が窓口になる施設もある
施設(法人)要望を出し、交付の決定のあとに工事をして報告する工事の中身と金額、日程を決める

国から都道府県への配分は、国の予算が決まったあとに行われます。そのため、県が施設に内示を出す時期は年度の途中になることがあります。広島県の令和7年度分の案内では、県の内示は「秋頃」の見込みとされていました。工事は交付の決定を待ってからなので、着工は年度の後半になりやすいのです。

政令市や中核市では、市が窓口になることがあります。名古屋市は、市の要綱で基金の補助をしています。どこに聞けばよいかの見分け方は大阪で修繕をまとめて頼む前に、改修の相談先が府か市かを確かめますにまとめています。

相談・見積は無料|お断り可・理由は不要

基金の介護施設等の整備には、大規模修繕・耐震化のほかにも、建物の改修に使えるメニューがあります。創設の予定がない施設は、まず、こちらに当たる工事がないかを見ます。令和7年度の広島県の調査に並んでいたメニューを、修繕との関係で整理すると次のとおりです。

令和7年度の広島県の調査に並んでいたメニュー(修繕に近いもの)
メニュー中身修繕との関係
広域型施設の大規模修繕・耐震化創設を条件に、広域型施設の修繕や耐震の補強外壁・屋上・設備の大規模修繕そのもの
ユニット化改修従来型の居室をユニット型に改める居室の大きな改修とあわせて行う
プライバシー保護改修多床室に間仕切りや壁を設ける内装の改修と同じ時期にしやすい
多床室の個室化改修多床室を個室に改める設備の更新と組み合わせることがある
看取り環境整備看取りとご家族の宿泊のための個室の改修居室1〜2室ほどの改修
介護ロボット・ICT導入見守り機器や通信の環境を入れる大規模修繕とあわせて行う形で示されてきた
簡易陰圧装置・ゾーニング感染症の広がりを防ぐ設備や区分けの改修換気や間仕切りの工事
災害レッドゾーンなどの移転改築危ない区域にある施設を移す・建て替える修繕ではなく建て替え

ユニット化改修やプライバシー保護の改修は、工事を段階に分けて、工事中の居室をどう回すかが要になります。その進め方は多床室の改修は、空ける居室の数で工事の区切りが決まりますにあります。介護ロボット・ICTのメニューは、国の資料で「大規模修繕の際にあわせて行う」導入として示されてきました。壁や天井を開ける工事と同じ時期に考える理由はWi-Fiの工事は機器と一緒に申請し、天井を開ける時期に合わせますにまとめています。

メニューの名前は県で少しずつ違い、毎年見直されます。県のページに載る今年度の要綱と、調査の案内に添えられたメニューの一覧で確かめます。

対象になる工事は、外壁・屋上の防水から設備の改造までです

大規模修繕で対象になるのは、建物の一部の改修と、付帯設備の改造です。名古屋市の要綱の別表には、次の工事が挙がっています。外回りの防水だけでなく、浴室や食堂の改修、給排水や空調の設備も入るのが特徴です。

対象になる工事・ならない工事(名古屋市の要綱の例)
工事要綱での扱い気をつけること
外壁・屋上の防水、浴室や食堂の改修対象になる劣化の写真と調査で、必要な理由を示す
給排水・電気・ガスなどの付帯設備の改造対象になる工事を伴う更新かどうかを見積で分ける
冷暖房の設備の新設と改造対象になる室内機・室外機・配管のどこまでかを書く
消防用の設備の整備対象になる(スプリンクラー設備などは除く)スプリンクラーは交付金の別のメニューを確かめる
防災に配慮した内部の改修、バリアフリーの工事対象になる何のための改修かを要望に書く
耐震の補強対象になる(倒れるおそれのある建物)耐震診断の結果を添える
土地の買収・整地、職員宿舎・車庫・倉庫の建設対象にならない職員の宿舎は別のメニューがある
ほかの補助で対象になる費用対象にならない同じ工事に二重には使えない
建物と設備の改修は対象に、備品や日常の修理は対象外になりやすい。対象になりやすい工事・なりにくい費用対象になりやすい対象になりにくい外壁・屋上の防水浴室・食堂の改修給排水・空調の改造耐震の補強家具・備品の購入日常の小さな修理土地・宿舎・車庫ほかの補助の対象迷う費用は、見積の内訳を分けて県に聞く
図2 建物と設備の改修は対象に、備品や日常の修理は対象外になりやすい。

同じ「修繕」でも、壊れた所を元に戻す小さな修理は、大規模修繕の補助にはなじみません。補助が想定しているのは、おおむね10年以上たった建物の一部の改修や、付帯設備の改造です。外壁と屋上、給排水と空調など、いくつかの工事をまとめた計画のほうが、要望に書きやすくなります。

見積は、補助の対象になりそうな工事と、ならない工事を分けた内訳にしてもらいます。仮設や養生、設計と監理の費用をどこまで含められるかは県で違うので、行を分けておくと、あとで県に聞くときに話が早く進みます。大規模修繕の費用の相場と、修繕費を抑える方法は大規模修繕の費用は㎡単価で桁をつかみ、量・単価・時期の3つで抑えますにあります。

「創設を条件に」は、新しい施設づくりと1対1で組む、という意味です

基金の大規模修繕で、いちばん読み違えやすいのが「創設を条件に」です。長崎県の資料には「介護施設等を1施設創設することを条件に、広域型施設1施設の大規模修繕又は耐震化を行う事業」とあります。新しい施設を1つつくる計画と組み合わせて、今ある広域型施設を1つ直す、という形です。

名古屋市の要綱では、組み合わせる創設の施設について、定員の大きさや、その創設に補助を受けているかは問わないとしています。創設の相手は、地域密着型の特養やグループホームなどになることがあります。地域密着型の施設の創設には、市区町村の計画の枠と公募があることもあり、修繕の都合だけで時期は決められません。

1つの創設と、1つの大規模修繕を組み合わせる形。創設と大規模修繕の組み合わせ新しくつくる施設直す広域型施設地域密着型の特養など定員の大きさは問わない(名古屋市の要綱)定員30人以上築おおむね10年以上1つの創設に1施設組み方の細かい決まりは、県の要綱と担当で確かめる
図3 1つの創設と、1つの大規模修繕を組み合わせる形。

組むときに、県に確かめたいことは3つあります。創設する法人が同じでなければならないか。創設と修繕の年度がずれてもよいか。どの種類の施設の創設が条件に当たるか。公募の結果や工事の遅れで創設がずれたときに、修繕の補助がどうなるかも、先に聞いておきます。

創設の予定がない法人が、修繕のために創設を組み立てる必要はありません。創設そのものに人と資金がかかるからです。その場合は、前の節のほかのメニュー、防災・減災の交付金、県や市区町村の補助、自己資金と借入れの組み合わせを比べます。防災・減災の交付金は、非常用の発電機や水害の対策と一体で行う修繕などが対象です。使い方は停電への備えは、何を何時間動かすかから決めますが参考になります。

メニュー・単価・時期・窓口は、都道府県ごとに違います

基金は都道府県ごとに置かれ、要綱も県ごとに作られます。同じ「大規模修繕・耐震化」でも、県によって違うところがあります。隣の県の施設の話や、数年前の自分の施設の経験が、そのまま当てはまるとは限りません。

都道府県で違うところと、確かめ方
違うところ例確かめ方
メニューの有無その年度に大規模修繕のメニューを設けているか調査の案内に添えられたメニューの一覧
単価と上限名古屋市の要綱では、特養は1定員あたり151万円(令和6年度に着工する事業)要綱の別表。年度ごとに見直される
調査の時期と締切広島県の令和7年度分は、令和6年9月24日が締切県や市のページ、届いた案内
窓口県が直接か、政令市・中核市を通すか市区町村の介護保険の担当に聞く
着工の期限その年度中に着工すること(名古屋市)要綱の本文と交付の条件
業者の選び方入札を原則にするなど、契約の決まり県の契約の手続の要領や交付の条件
工事事務費の扱い工事費の2.6%までを限度に対象(長崎県)要綱の対象経費の欄

単価は、定員を掛けて上限の目安を出すのに使います。名古屋市の例の単価なら、定員80名の特養で1億2,080万円です。ただ、実際の補助の額は、対象の経費との比べ方など、県の決まりで決まります。単価は年度ごとに見直されるので、古い年度の単価で見込みを立てないようにします。

業者の選び方の決まりは、補助を使う工事ならではの条件です。相見積で足りるのか、入札が要るのかは補助を使う工事では、相見積か入札かを交付の条件で確かめますにまとめています。

着工から逆算すると、1年半前に動き始めます

基金の大規模修繕は、工事をする年度の前の年に、県が行う調査(活用希望調査など)に名乗り出るところから始まります。そこから協議、内示、交付の決定を経て、ようやく着工です。県の内示が秋になる年もあるので、着工の1年半前には法人の中で準備を始めます。下の表は、法人の中ですることを、着工を0か月として並べたものです。

着工から逆算した、法人の中の準備(例)
着工までの目安法人の中ですること県・市の動き
18〜15か月前劣化の調査と修繕の計画。創設の計画と時期を合わせる翌年度分の調査の案内(夏ごろ)
15〜13か月前概算見積と写真をそろえ、要望(調査票)を出す調査の締切(広島県は9月下旬の年があった)
12〜8か月前理事会で計画と自己負担分の予算を決める国の予算づくり、協議の受付
8〜3か月前協議の書類(図面・写真・見積)を出し、質問に答える協議と審査、内示(秋になる県もある)
3か月前〜着工交付の申請。決定のあとに業者を選び、契約する交付の決定
県の調査に出すまでの準備が、全体の日程を決める。要望から着工までの5つの段1. 計画を立て、創設と時期を合わせる(着工の18か月前)2. 県の調査に要望を出す(15〜13か月前)3. 理事会で予算を決める4. 協議と内示5. 交付の決定のあとに契約・着工
図4 県の調査に出すまでの準備が、全体の日程を決める。

いちばん動かせないのは、2の調査の締切です。締切に間に合わないと、その年度の補助は使えないことが多く、1年先に延びます。令和9年度の補助に向けて今秋から何をそろえるかは令和9年度の修繕の補助は、まず県の調査が済んだかを確かめますにあります。交付の決定のあとの入札から完了の報告までの流れと月数は補助を使う工事は、交付決定の通知が届くまで契約しませんにまとめています。

交付の決定の前には、工事の契約も着工もしません。広島県の令和7年度分の案内にも「交付決定前の工事請負業者との契約、着工等は認められません」とあります。大規模修繕全体の進め方を、調査から記録まで時系列で見るなら大規模修繕は着工の2年前に動き出し、石綿の調査は設計の段階で済ませますが役に立ちます。

要望(調査票)には、6つのことを書きます

県の調査に出す要望は、様式が県ごとに違いますが、聞かれることはよく似ています。施設の基本、工事の中身、金額、必要な理由、創設との関係、日程と資金の6つです。広島県の調査では、調査票に加えて、補助の対象の面積を確かめるシートを求めることもありました。

要望に書くことと、そろえる材料
書くこと中身の例そろえる材料
施設の基本種類・定員・築年・延床面積・構造確認済証、登記、指定の書類
工事の中身外壁と屋上の防水、浴室の改修、給水管の更新劣化の調査の結果、点検の報告書
金額総事業費、補助の対象の経費、希望する補助の額同じ条件の概算見積(対象と対象外を分けたもの)
必要な理由雨漏りの回数、設備の故障の記録、入居者の方への影響日付入りの写真、修理の記録
創設との関係組み合わせる創設の施設と、その時期創設の計画、市区町村の公募の予定
日程と資金着工と完了の予定、自己資金と借入れ修繕の計画、資金の計画
6つがそろうと、県の担当が工事の大きさと急ぎぐあいをつかめる。要望に書く6つのこと1. 施設の基本2. 工事の中身3. 金額4. 必要な理由5. 創設との関係6. 日程と資金
図5 6つがそろうと、県の担当が工事の大きさと急ぎぐあいをつかめる。

必要な理由は、言葉より数字と写真で書きます。「老朽化が進んでいる」ではなく、「最上階の居室で、この2年に雨漏りが5回」「給水管の漏れの修理が年に3回」のように書きます。浴室が使えずに清拭に替えた日数など、入居者の方の暮らしへの影響も、記録があれば添えます。

金額は、調査の段階では概算でかまわないことがあります。ただ、ここで出した額が、県が国に求める額のもとになります。あとで大きく増えると、補助の枠に収まりません。概算でも、今の単価で、同じ条件で取った見積をもとにします。

県の担当には、要望の前に5つのことを聞きます

要綱を読んでも分からないことは、要望を出す前に県(または市)の担当に聞きます。聞くことを先に5つにまとめておくと、1回の電話かメールで済みます。聞いた日付と相手の名前、答えは、記録に残しておきます。

  1. 今年度のメニューと単価大規模修繕・耐震化のメニューがあるか。単価と、補助の額の決め方
  2. 創設の条件の運用同じ法人でなければならないか。年度のずれをどこまで認めるか。創設が遅れたらどうなるか
  3. 対象の経費の範囲設計と監理、仮設と養生、工事事務費をどこまで含めるか
  4. 調査と協議の日程調査の締切、協議の書類の締切、内示の見込みの時期
  5. 契約と着工の決まり入札の要否、着工の期限、交付の決定の前にしてよいこと

聞くときは、施設の種類と定員、築年、考えている工事の中身と概算の金額を、先に伝えます。「うちの施設は使えますか」とだけ聞くより、答えが具体的になります。答えが「要綱のとおりです」で終わったときは、要綱のどの欄を見ればよいかを聞き返します。

担当が替わると、前の年の話が引き継がれていないこともあります。去年聞いた答えも、今年あらためて確かめます。

モデルケース:地域密着型特養の創設と組んで、本体の特養を直した法人

モデルケース:定員100名の特別養護老人ホーム(築32年)

3回に分ける予定の改修を、1回の工事にまとめられた

変わったこと(結果)

法人が計画していた地域密着型の特養(定員29名)の創設と、本体の特養の大規模修繕を、同じ年度の要望にそろえました。屋上の防水、浴室の改修、給水管の更新が基金の対象になり、自己資金だけで5年かけて3回に分ける予定だった工事を、1回にまとめられました。足場や仮設を組む回数は3回から1回に減り、入居者の方の居室の移動も1回で済む見通しになりました。

背景と、困っていたこと

事務長は、基金で大規模修繕に補助が出ると聞いて、県の案内を読みました。けれども「創設を条件に」の意味が分からず、自分の施設は対象外だと思い込んでいました。同じころ、法人の本部では、隣の市の公募に応じて地域密着型の特養をつくる準備が進んでいました。ただ、本部も施設も、2つの計画を結びつけて考えてはいませんでした。

決めたこと

事務長は県の担当に、同じ法人が創設する場合の扱いと、創設と修繕の年度がずれたときの扱いを聞きました。答えを受けて、本部と施設で2つの計画の日程を1枚の表にまとめ、要望を同じ年度に出すと決めました。決め手は、3回に分けた場合と1回にまとめた場合で、仮設と養生の費用に約1,400万円の差が出ると分かったことでした。

進めてみて分かったこと

創設の公募の結果が出るまでの2か月は、修繕の要望の中身を固めきれませんでした。結果を待つ間に、劣化の写真と概算見積を先にそろえていたので、調査の締切には3週間の余裕を残して出せました。

このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。

ほかの補助と組み合わせるときは、同じ工事に二重に使えません

大規模修繕の中には、基金のほかの補助が当たりそうな工事が混ざっていることがあります。補助は、同じ工事に二重には使えません。名古屋市の要綱でも、ほかの補助で対象になる費用は対象外です。そのかわり、工事を分けて、それぞれに合う補助を当てられる場合があります。

工事ごとに当たりそうな補助の例
工事当たりそうな補助確かめること
外壁・屋上の防水、浴室の改修基金の大規模修繕(創設の条件つき)創設の予定と、築年の条件
非常用の発電機、給水の設備防災・減災の交付金定員と、対象の設備の範囲
スプリンクラーの設備交付金のスプリンクラーの整備基金の大規模修繕からは除かれている
多床室の間仕切り、個室化基金のプライバシー保護・個室化の改修居室の数と、工事中の回し方
見守り機器と通信の工事介護ロボット・ICTや介護テクノロジーの支援大規模修繕と同じ時期か
空調や照明の省エネの更新国や県の省エネの補助効果を数字で示せるか

工事を分けると、補助ごとに締切や様式、業者の選び方の決まりが違うことがあります。足場を共用するなど、まとめたほうが安くなる部分もあるので、分け方は見積の段階で業者とも相談します。省エネの補助を使うときの前提は省エネの補助は、効果を数字で示せる施設が使えますにあります。

どの補助も使えない、または採択されなかった年は、急ぐ部分だけを自己資金で直し、残りを翌年の要望に回す方法もあります。採択されなかったときは理由を県に聞き、写真と記録を足して翌年に備えます。

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基金の要望でつまずくのは、条件の読み違いと日程です

基金の大規模修繕で、法人がつまずきやすいところは決まっています。どれも、要綱を読む段階で気づけば、先に手を打てます。

基金の大規模修繕で、つまずきやすいところ
つまずき起きること先回りの方法
創設の条件を読み飛ばした要望を出しても対象にならない要綱の事業の欄を最初に読む
築年の条件を確かめていない対象の年数に届いていない確認済証で建てた年を確かめる
備品や日常の修理を混ぜた協議で内訳の出し直しになる見積で工事と備品を分ける
補助の対象の面積が書類ごとに違う問い合わせが来て審査が止まる登記と図面のどちらの数字かを書き添える
創設の側が遅れた修繕の補助の扱いが分からなくなる遅れたときの扱いを先に県に聞く
年度内の着工に間に合わない補助を受けられないことがある内示の時期から入札の日程を逆算する

とくに見落としやすいのが、着工の期限です。内示が秋に出て、そこから交付の申請と入札をすると、年度内の着工がぎりぎりになります。入札に使う仕様書と図面を内示の前に仕上げておくと、決定のあとに慌てずに済みます。

基金に備えて、平常時にしておくこと

基金の大規模修繕に備えて、ふだんからしておくこと

  • 県の要綱とメニューの一覧を、毎年の夏に読み直す
  • 法人の創設の計画と、施設の修繕の計画を1枚に並べる
  • 確認済証などで、建てた年と延床面積を確かめておく
  • 傷みやすい場所の写真と修理の記録を、毎年残す
  • 見積は、補助の対象と対象外を分けた内訳で取る

補助の制度の全体と締切の見方は補助金にまとめています。

基金の要望や協議に使う概算見積を、同じ条件でそろえたいときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。1回のご依頼で最大3社に見積を頼め、相談と見積は無料で、お断りもできます。補助の要望や申請の手続きそのものは、県や市の担当と法人の中で進めていただくものです。窓口がお手伝いできるのは、見積をそろえるところまでです。

よくある質問

地域医療介護総合確保基金で、介護施設の大規模修繕に補助は出ますか

出ます。ただし対象は主に定員30人以上の広域型施設で、介護施設等を1施設創設することを条件にする県の例があります。今年度のメニューと条件は、県の要綱で確かめます。

基金の大規模修繕の補助は、どの種類の施設が対象ですか

名古屋市の要綱では、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム、軽費老人ホームのうち、定員30人以上の施設が対象です。有料老人ホームやサ高住は入っていません。

「介護施設等の創設を条件に」とは、どういう意味ですか

新しい介護施設を1つつくる計画と組み合わせて、今ある広域型施設を1つ直す、という意味です。同じ法人である必要があるか、年度のずれをどこまで認めるかは、県に確かめます。

創設の予定がない施設は、基金を使えませんか

大規模修繕のメニューは使えないことがあります。ただ、ユニット化やプライバシー保護の改修、看取りの環境の整備など、ほかのメニューに当たる工事なら使える場合があります。防災・減災の交付金や、県・市の補助も比べます。

くわしく:多床室の改修は、空ける居室の数で工事の区切りが決まります

築何年から、基金の大規模修繕の対象になりますか

名古屋市の要綱では、建ててからおおむね10年以上の施設が対象です。数え方は県で違うことがあるので、確認済証などで建てた年を確かめ、県の要綱の数字と照らします。

基金の大規模修繕では、補助の額はどうやって決まりますか

要綱の別表の単価に定員を掛けた額が、上限の目安になります。名古屋市の令和6年度に着工する事業の例では、特養は1定員あたり151万円でした。実際の額は、対象の経費との比べ方など、県の決まりで決まります。

設計や工事監理の費用も、基金の補助に含められますか

工事事務費として含められることがあります。長崎県の資料では、工事事務費は工事費の2.6%に当たる額が限度です。どこまで含めるかは、県の要綱の対象経費の欄で確かめます。

スプリンクラーや非常用発電機の工事は、基金の大規模修繕で補助されますか

名古屋市の要綱では、スプリンクラー設備などは大規模修繕の対象から除かれています。スプリンクラーや非常用の発電機は、防災・減災の交付金のメニューを確かめます。

くわしく:停電への備えは、何を何時間動かすかから決めます

基金の補助を使うには、工事のどのくらい前から動けばよいですか

着工の1年半前が目安です。工事をする年度の前の年の夏〜秋に県の調査へ要望を出すので、その前に工事の範囲と概算の金額を固めておくからです。

くわしく:令和9年度の修繕の補助は、まず県の調査が済んだかを確かめます

基金の要望書(活用希望調査)には、何を書けばよいですか

施設の基本、工事の中身、金額、必要な理由、創設との関係、日程と資金の6つが中心です。必要な理由は、雨漏りの回数や故障の記録、日付入りの写真で示します。

1つの大規模修繕に、基金と交付金を両方使えますか

同じ工事に二重には使えません。外壁は基金、非常用の発電機は交付金というように、工事を分けてそれぞれに当てられる場合があります。分け方は県の担当に確かめます。

基金の大規模修繕と一緒に、見守り機器やICTも入れられますか

入れられる場合があります。大規模修繕の際にあわせて行う介護ロボット・ICTの導入が、基金のメニューとして示されてきました。壁や天井を開ける工事と同じ時期に配線を通せるので、工事が一度で済みます。

くわしく:Wi-Fiの工事は機器と一緒に申請し、天井を開ける時期に合わせます

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補助金の使い方と締切は補助金、頼み先の一覧は設備別の頼み先、ご相談の流れはご相談の流れにまとめています。

監修者

鈴木貴行|介護施設営繕・修繕専門家

  • 30年以上営繕・設備管理の経験
  • 1,000施設超関わった介護・高齢者施設
  • 3,000件超修繕・設備改善の案件

介護施設の営繕・設備管理に30年以上携わり、1,000施設を超える介護・高齢者施設の現場に関わってきました。地域医療介護総合確保基金を使って介護施設の大規模修繕を進めるときの、対象の確かめ方と、要望までの段取りを監修しています。

経験した施設
特別養護老人ホーム有料老人ホームグループホームデイサービスサービス付き高齢者向け住宅
専門分野
給排水空調電気・照明トイレ・浴室床・壁扉・建具ナースコール

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