特養の多床室の改修には、2つの方向があります。4人部屋を仕切ってプライバシーを守る「間仕切りの改修」と、個室と共同生活室を作る「ユニット化の改修」です。どちらも入居者の方が暮らしたまま進めるのが基本で、工事は、空けられる居室の数に合わせて区切る段階施工で組みます。空けた工区を工事し、仕上がった居室へ次の工区の方に移ってもらう「玉突き」で回すと、多くの方の移動を1回にできます。工事の前には、指定権者(都道府県・市)、建築の設計者、消防署に図面で相談し、職員の体制は工事中と工事のあとの2回組み替えます。
この記事の結論
- 多床室の改修は、間仕切りとユニット化の2つの方向に分かれる
- 工事の前に、指定権者・設計者・消防署に図面で相談する
- 工事の区切りは、空けられる居室の数から決める
- 玉突きで回し、入居者の方の移動を1人1回に近づける
- 職員の体制は、工事中と工事のあとの2回組み替える
多床室を変える改修には、2つの方向があります
特養の多床室を変える改修は、大きく2つの方向に分かれます。1つは、4人部屋のまま、家具や壁で仕切ってプライバシーを守る「間仕切りの改修」です。もう1つは、多床室を個室にして、少人数のまとまりごとに共同生活室を設ける「ユニット化の改修」です。どちらを選ぶかで、工事の大きさも、手続きも、工事のあとの職員の動き方も変わります。
| 項目 | 間仕切りの改修 | ユニット化の改修 |
|---|---|---|
| ねらい | ベッドごとの区画を作り、着替えや眠りを守る | 個室と共同生活室で、暮らし方とケアの形を変える |
| 居室の形 | 4人部屋のまま、区画に分ける | 個室にし、ユニットごとに共同生活室を設ける |
| 定員 | 変えずに進められる | 居室の広さの基準で、減ることがある |
| 工事の範囲 | 居室の中の壁・建具・照明・設備 | 居室・共用部・水回り・設備をフロアで組み替える |
| 工期の目安 | 1室あたり数日〜2週間ほど | 1ユニットあたり数か月。全体で1年を超えることもある |
| 手続き | 平面図が変わるので、指定権者に相談する | ユニット型への変更の手続きを、指定権者と詰める |
| 職員の動き方 | 従来型のまま。区画の中の見守りに気を配る | ユニットごとに職員を固定する形に変わる |
ユニット化するかどうかを、入居者の方・職員・経営の3つの目線で決める材料はユニット化するかどうかは、入居者・職員・経営の3つで決めますにまとめています。この記事では、方向を決めたあとに、工事をどう進めるかを書きます。
なお、令和3年度の介護報酬の改定で、「ユニット型個室的多床室」を新しく作ることが禁止されました。ユニットの中の居室を、壁と天井の間をあけて仕切った形の居室です。ユニット化の改修で作る居室は、天井まで仕切った個室にするのが前提です。いっぽう、従来型のまま4人部屋を家具や壁で仕切る改修は、多床室のままの扱いで進めます。
工事の前に、指定権者・設計者・消防署に図面で相談します
多床室の改修は、部屋の使い方そのものを変える工事です。同じ物に取り替える修繕とは違い、工事の前に確かめる相手が3つあります。介護保険の指定をした都道府県や市(指定権者)、建物の決まりを見る設計者と建築の確認の機関、そして消防署です。
| 相談先 | 確かめること | 持って行くもの |
|---|---|---|
| 指定権者(都道府県・市) | 居室の数・広さ・定員・ユニットの数が変わるときの手続きと、届け出の時期 | 今の平面図と、改修のあとの平面図 |
| 設計者・建築の確認の機関 | 仕切った部分が別の部屋として扱われるか(窓・換気)、防火の壁にかかるか | 竣工図、改修の案、仕切りの高さと材料 |
| 消防署 | スプリンクラーのヘッド、火災の感知器、誘導灯を足すかどうか | 改修の案の図面と、消防用の設備の図面 |
| 補助の窓口(都道府県・市) | 使える補助のメニューがあるか、要望と交付の決定の時期 | 工事の範囲と、概算の見積 |
建築の決まりで気をつけるのは2つです。1つは、仕切った部分が別の部屋として扱われるかどうかです。ふすまや引き戸のように、いつでも開けられるもので仕切った2つの部屋は、1つの部屋とみなされます。窓の大きさ(採光)や換気の決まりでの扱いです(建築基準法第28条第4項)。天井まで届く固い壁で仕切ると、区画ごとに窓や換気の決まりがかかることがあります。
もう1つは、火事のときに火や煙を止める壁です。老人ホームのような建物では、寝る部屋と廊下の間の壁や、いくつかの寝る部屋をまとめて区切る壁が、これに当たることがあります。建築基準法施行令第114条第2項の「防火上主要な間仕切壁」です。スプリンクラーがあるかどうかなどで扱いが変わるので、壁を動かしたり穴を開けたりする前に、設計者に図面で確かめてもらいます。
補助では、都道府県の地域医療介護総合確保基金に、多床室の改修のメニューが置かれている例があります。たとえば沖縄県の事業メニュー一覧(令和8年7月時点)には、2つのメニューが並んでいます。特養の多床室のプライバシー保護のための改修と、既存施設のユニット化改修です。メニューと単価は都道府県と年度で違うので、都道府県の窓口で確かめます。
補助を使う改修では、交付の決定の前に着工しないことが前提になります。交付の決定の前に着工してはいけない理由と、申請から完了までの流れは補助を使う工事は、交付決定の通知が届くまで契約しませんにまとめています。
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間仕切りの改修は、窓・出入り口・設備の3つで形を決めます
4人部屋の間仕切りで最初にぶつかるのは、窓の取り合いです。窓側の2つのベッドには窓がありますが、廊下側の2つのベッドには窓がありません。仕切りを高くするほどプライバシーは守れますが、廊下側の区画は暗く、空気もこもりやすくなります。
| 形 | 工事の大きさ | プライバシー | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 背の高い家具で仕切る | 家具の固定だけ。1室1〜2日ほど | 視線は遮れるが、音は通る | 地震で倒れないよう、床や壁に固定する |
| 上の開いた壁で仕切る | 壁と建具の工事。1室数日〜1週間ほど | 視線を遮り、光と空気は上から通る | 照明・コンセント・呼び出しのボタンを区画ごとに足す |
| 天井まで壁で仕切る | 壁・設備・防火の工事。1室1〜2週間ほど | 個室と同じくらい守れる | 区画ごとの窓・換気・感知器と、居室の数が変わる手続きを確かめる |
廊下側の区画の暗さは、いくつかの工夫で和らげます。仕切りの上の部分を光を通す材料にする、照明を区画ごとに付ける、ベッドの向きを変える、といった工夫です。窓側と廊下側で区画の広さに差をつけ、廊下側を少し広くする方法もあります。
出入り口は、カーテンだけの区画から引き戸の付いた区画に変えると、着替えや排せつの介助のときの視線と音が変わります。ただ、引き戸を付けると、職員から中が見えにくくなります。引き戸の開け方と見守りの方法も、一緒に決めておきます。
区画ごとに呼び出しのボタンを足すときは、今のナースコールに子機を足せるかを確かめます。機種が古くて足せないときは、ナースコールの更新と一緒に考えることになります。ナースコールの更新の費用の目安はナースコールの更新費用は、配線を使えるかで大きく変わりますにあります。
ユニット化の改修は、共同生活室と水回りの位置から描きます
ユニット化の改修は、居室を個室にするだけの工事ではありません。少人数のまとまりごとに、食事やくつろぎの場になる共同生活室を設け、トイレや洗面をユニットの中に分けて置きます。入居者の方と職員の動きがユニットの中で完結するように、共同生活室と水回りの位置から図面を描きます。
ユニットの人数は、令和3年度の改定で「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないもの」に改められています。今の建物の柱や壁の位置、階段や避難の経路をもとに、何人のユニットをいくつ作れるかを、設計者と一緒に当てはめていきます。
| 場所 | 改修の中身 | 工事で気をつけること |
|---|---|---|
| 居室 | 多床室を個室に分ける。広さが足りない分は定員を減らす | 個室ごとの窓・換気・呼び出し・空調を確かめる |
| 共同生活室 | ユニットの中心に、食事とくつろぎの場を作る | 居室から近く、職員から見渡せる位置にする |
| ミニキッチン | 共同生活室に、配膳や湯沸かしの台所を置く | 給排水と電気の容量を、先に確かめる |
| トイレ・洗面 | ユニットの中に分けて置く | 排水の勾配がとれるか、床下と下の階を確かめる |
| 職員の場所 | ユニットごとに、記録や休憩に使える場所を作る | 共同生活室と居室の両方が見える位置にする |
| ユニットの出入り口 | ユニットの境目に、扉や区切りを設ける | 避難の経路と、防火の区画を変えない |
ユニット化で工事が大きくなるのは、水回りの位置を動かすときです。トイレや洗面、ミニキッチンを新しく置く場所には、給水と排水の配管を引くことになります。排水は、勾配がとれるかどうかで置ける場所が決まります。床下や下の階の天井裏を通すことになると、下の階の居室にも工事の範囲が広がります。
ユニット型と従来型で、修繕の頼み方や設備の出方がどう違うかは特養の修繕は、ユニット型か従来型かで頼み方が変わりますにまとめています。改修のあとの修繕の頼み先を考えるときの参考になります。
段階施工は、空けられる居室の数から組み立てます
入居者の方が暮らしたまま改修するには、建物をいくつかの工区に分け、1つずつ工事します。工区の大きさを決めるのは、工事のあいだ空けておける居室の数です。空けられる居室が多いほど、1回の工区を大きくでき、全体の工期は短くなります。
| 区切り方 | 1回に空ける居室 | 1工区の工期の目安 | 向いている改修 |
|---|---|---|---|
| 1室ずつ | 1室(4床) | 数日〜2週間 | 家具や上の開いた壁での間仕切り |
| 数室ずつ | 2〜3室 | 2〜4週間 | 天井までの間仕切りや、居室の設備の更新を合わせる工事 |
| 1ユニット分ずつ | 1ユニット分の居室と共用部 | 2〜4か月 | ユニット化の改修 |
| 1フロアずつ | 1フロアの全部 | 3〜6か月 | 水回りや配管を大きく組み替えるユニット化 |
空ける居室は、3つの方法で作ります。1つ目は、退所などで空いたベッドを、しばらく埋めずにおく方法です。2つ目は、工事の前から新しい入所を調整して、入居者の方の数を減らしておく方法です。3つ目は、静養室や使っていない部屋を、仮の居室として使う方法です。仮の居室を使うときは、広さや設備が居室の基準に合うかを、指定権者に確かめます。
工区の順番は、配管や電気の系統、音の伝わり方、避難の経路で決めます。同じ配管の系統を1回で工事できる順にすると、断水や停電の回数を減らせます。入居者の方がいるフロアの真上や真下で、音の大きい工事が続かないようにも組みます。
段階施工は、工区の数だけ仮設や養生をやり直すので、一度に工事するより費用が増えます。入居者がいる中の工事では、仮設・養生・時間帯の割増が総額の2割〜4割になることがあります。その中身と確かめ方は仮設・養生・割増の割合は、施設が渡す条件で変わりますにまとめています。
工事中の居室は、移る回数が1人1回になるように回します
工事中の居室の回し方は、入居者の方の移動の回数から考えます。部屋が変わると、認知症の方は落ち着かなくなったり、夜に眠れなくなったりすることがあります。空けた工区を先に仕上げ、次の工区の方にそこへ移ってもらう「玉突き」で回すと、多くの方の移動は1回で済みます。
最初の工区を空けるときは、そこに住む方に、空いたベッドや仮の居室へいったん移ってもらうことがあります。この方たちは、あとでどこかの工区が仕上がったときに新しい居室へ移るので、移動が2回になります。2回目の移る先は、なじみの職員がいるフロアの居室を選ぶと、負担が小さく済みます。
| 入居者の方の状態 | 気をつけること |
|---|---|
| 認知症のある方 | 移る日を急に決めない。なじみの家具や写真を一緒に移し、同じ職員が付き添う |
| 看取りの時期の方 | 工区の順番を後ろにして、移動を避ける。ご家族と相談して決める |
| 医療的なケアのある方 | 吸引や酸素の機器の電源と置き場所を、移る先で先に整える |
| 音や人の出入りに敏感な方 | 工事の音が届きにくい居室を、移る先に選ぶ |
| 車椅子で過ごす方 | 移る先のベッドの向きと、車椅子を置く場所を、移る前に決める |
移る日が決まったら、ご家族にも日程と移る先を知らせます。名札や目印を移る先にも付け、なじみの物の置き方を前の居室と同じにすると、新しい居室に慣れやすくなります。認知症のある入居者の方への工事中の配慮は認知症のある方への配慮は、工事の段取りで変化を小さくすることですにあります。
居ながら工事の工程表の組み方と、入居者の方の移動の回し方は居ながら工事の工程表は、工事と暮らしの予定を重ねて作りますにまとめています。
職員の体制は、工事中と工事のあとで2回組み替えます
多床室の改修では、職員の体制を2回組み替えます。1回目は工事中で、入居者の方が仮の居室や別のフロアに分かれるため、見守りの範囲と夜勤の巡回の道すじが変わります。2回目は工事のあとで、仕切った区画や個室では、職員から入居者の方が見えにくくなります。
| 場面 | 決めること | 決め方の例 |
|---|---|---|
| 工事の前 | 業者との連絡の窓口と、立ち入りの決まり | フロアごとに担当の職員を1人決め、業者の出入りの時間を掲示する |
| 工事中の見守り | 仮の居室に移った方の見守り | 巡回の道すじと時刻を書き直し、夜勤の職員に図で渡す |
| 工事中の体調の変化 | 工事の音や粉じんへの対応 | 体調の変化を記録し、工事の時間帯を業者と毎週見直す |
| 工事のあと(間仕切り) | 区画の中の見守り | 巡回の回数、引き戸の開け方、見守りの機器の使い方を決める |
| 工事のあと(ユニット化) | ユニットごとの職員の配置 | ユニットに職員を固定し、夜勤で受け持つユニットを決める |
ユニット化では、工事のあとに職員の動き方そのものが変わります。ユニットごとに職員を固定し、入居者の方の暮らしのリズムに合わせて、食事や入浴の時間をユニットで決める形になります。最初のユニットが仕上がる2〜3か月前には、配置と研修の計画を立てておくと、引っ越しの日に慌てずに済みます。
壁や天井を開ける改修は、見守りの機器やWi-Fiの配線を通す機会にもなります。見守り機器やWi-Fiの工事に使える補助はWi-Fiの工事は機器と一緒に申請し、天井を開ける時期に合わせますにまとめています。
同じ工区で、ほかの工事も一緒に済ませます
居室を空けて工事をする機会は、何年かに一度しかありません。同じ工区で、居室の設備の更新や内装の張り替えを一緒に済ませます。入居者の方に移ってもらう回数も、仮設や養生の費用も、1回分で済みます。
| 工事 | 一緒にする理由 | 確かめること |
|---|---|---|
| 空調の更新 | 区画や個室ごとに温度を合わせやすくする | 室外機の置き場所と、電気の容量 |
| ナースコールの更新 | 区画や個室ごとに呼び出しを付け直す | 今の機種に子機を足せるか、更新の時期か |
| 照明の更新 | 区画ごとの照明と、夜間の足元灯を付ける | 天井を開ける範囲を、ほかの工事とそろえる |
| 床の張り替え | 仕切りの位置に合わせて床を整える | 仕切りを床の上に立てるか、床を先に張るか |
| 手洗いの設置 | 感染症のときに、区画やユニットで手を洗える | 給排水の配管の経路 |
手洗いや換気を見直す、感染症対策の改修の考え方は感染症対策の改修は、動線・換気・個室・手洗いの順に考えますにまとめています。
ただ、何もかも一緒にすると、1つの工区の工期が延び、入居者の方が仮の居室で過ごす日数が増えます。一緒にするかどうかは、その設備の残りの年数と、工区の工期が何日延びるかを並べて決めます。
工事中に起きやすいことと、先に打つ手
多床室の改修は、入居者の方が暮らす真ん中で、長い期間続きます。起きやすいことを先に挙げて手を打っておくと、工期の延びや、入居者の方の体調の崩れを防ぎやすくなります。
| 起きやすいこと | 先に打つ手 |
|---|---|
| 壁を開けたら、図面にない配管や配線が出てきた | 最初の工区で天井と壁の中を調べ、残りの工区の見積と日程に反映する |
| 古い建材に、アスベストが含まれていた | 改修の前に、法令で決められた事前の調査を済ませておく |
| 工事の音で、眠れない入居者の方が出た | 音の大きい作業の時間を決め、体調の記録を業者と共有する |
| 入所の待ちの方が多く、空床を作れない | 工事の期間の入所の調整を、生活相談員と事前に決めておく |
| 工区ごとの工期が延びて、全体がずれた | 工区の間に予備の日を入れ、ご家族に移る日を伝えるのは確定してからにする |
改修の前のアスベストの事前調査で、誰が調べ、費用と日数がどれだけ増えるかは大規模修繕は着工の2年前に動き出し、石綿の調査は設計の段階で済ませますに書いています。工事の騒音と粉じんを、工法・機械・養生で減らす方法は騒音と粉じんは、時間帯だけでなく工法と区画でも減らせますにまとめています。
モデルケース:4人部屋の間仕切りを、6回に分けて進めた従来型の特養
モデルケース:定員60名の従来型特別養護老人ホーム
12室の間仕切りを6か月で。2回移ったのは8名だけ
変わったこと(結果)
4人部屋12室の間仕切りの改修を、2室ずつ6回の工区に分けて、およそ6か月で終えました。居室を移った入居者の方のうち、移動が2回になったのは、最初の工区の8名だけでした。夜勤の巡回の図は、工区が変わるたびに書き直し、6か月で6回作り直しました。
背景と、困っていたこと
この施設は築26年の従来型の特養で、4人部屋はカーテンで仕切っているだけでした。ご家族からは、着替えのときの視線を気にする相談が年に何度も寄せられていました。冬に感染症がはやると、同じ部屋の4人に広がることもありました。ユニット化も検討しましたが、定員が減ることと工期の長さから、まずは間仕切りの改修を選びました。いちばん迷ったのは、入居者の方を何回移すことになるかでした。
決めたこと
施設は、天井まで仕切らず、上の開いた壁と引き戸で区画を作る形にしました。廊下側の区画が暗くならないよう、仕切りの上の部分は光を通す材料にし、区画ごとに照明と呼び出しのボタンを付けました。工事の2か月前から新しい入所を調整して6床を空け、静養室の2床と合わせて、2室ずつ6回に分けて工事しました。工事の前には、指定権者と消防署に図面を持って相談しました。
進めてみて分かったこと
最初の工区で、壁の中に図面にない配線が見つかり、工期が1週間延びました。2回目からはその分を見込んで日程を組み、ご家族に移る日を伝えるのは、工区の完了の目処が立ってからにしました。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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大きく始める前に、1室で試します
多床室の改修は、図面だけでは分からないことが多い工事です。全体の工事を発注する前に、1室だけ先に改修して、入居者の方・職員・ご家族の反応を見る方法があります。1室で試すと、見積と工程の精度も上がります。
- 暮らしを見る着替えや排せつの介助、眠り、食事の前後の移動で、区画が使いやすいかを1〜2か月見ます。
- 見守りを見る夜勤の巡回で、区画の中の様子がどのくらい分かるかを、職員に記録してもらいます。
- 掃除と消毒を見る区画の角や仕切りの下に、掃除しにくい所ができていないかを確かめます。
- ベッドと車椅子を見るベッドの出し入れや、車椅子の回り込みに、仕切りが邪魔にならないかを確かめます。
- 費用と日数を見る1室にかかった費用と日数から、残りの居室の見積と工程を直します。
試しの1室でうまくいかなかったところは、残りの居室の設計で直せます。全室を一度に工事してから気づくと、直すのは大きな手間になります。試す居室は、窓側と廊下側の差がいちばん大きい部屋を選ぶと、課題がはっきり見えます。
検討を始める前に、平常時にしておくこと
平常時にしておくこと
- 竣工図と消防用の設備の図面が、そろっているかを確かめる
- 多床室ごとに、窓・設備・配管の系統を書き出す
- 退所の予定と入所の待ちの数を、月ごとに数えておく
- 静養室など、仮の居室に使える部屋を書き出す
- 翌年度の補助の要望の時期を、都道府県に確かめる
地域医療介護総合確保基金を使った補助の仕組みは基金で大規模修繕の補助を受けるには、まず創設の条件を確かめますにまとめています。
多床室の改修を、どの業者に、どの区切りで頼めばよいか分からないときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。今の平面図と、考えている改修の方向をお送りいただければ、工区の区切り方の案と、同じ条件の見積を最大3社からそろえてお返しします。ユニット化のように間取りから組み直す改修では、設計事務所に設計と工事の監理を頼み、施工の会社を入札で選ぶ方法も向いています。
よくある質問
特養のユニット化の改修は、入居者が暮らしたままでもできますか
できます。建物をユニットやフロアの工区に分け、空けた工区を工事して、仕上がったところへ入居者の方に移ってもらう段階施工で進めます。工区の大きさは、工事のあいだ空けておける居室の数で決まります。
4人部屋の間仕切りの工事は、1室あたり何日かかりますか
家具で仕切るなら1〜2日、上の開いた壁と引き戸なら数日〜1週間、天井までの壁なら1〜2週間ほどが目安です。照明や呼び出しのボタンを区画ごとに足すかどうかでも変わります。
多床室の廊下側のベッドが、暗くならない仕切り方はありますか
あります。仕切りの上の部分を光を通す材料にする、上を開けた壁にする、区画ごとに照明を付ける、といった方法です。窓側と廊下側で区画の広さを変える工夫もあります。
間仕切りの壁を、天井まで付けてもよいですか
付けられます。ただ、区画ごとに窓や換気、火災の感知器やスプリンクラーの決まりがかかることがあり、居室の数が変わる扱いになる場合もあります。工事の前に、設計者と消防署、指定権者に図面で確かめます。
改修のあいだ、新しい入所は止めたほうがよいですか
工区を空ける方法の1つが、工事の前から入所を調整して空床を作ることです。調整する期間とベッドの数は、工区の大きさと工期から逆算し、生活相談員と事前に決めておきます。
工事中に移ってもらう居室は、どうやって作りますか
退所で空いたベッドをしばらく埋めずにおく、入所を調整する、静養室などを仮の居室に使う、の3つを組み合わせます。仮の居室が基準に合うかは、指定権者に確かめます。
認知症の入居者の部屋を移すときは、何に気をつけますか
移る日を急に決めず、なじみの家具や写真を一緒に移し、同じ職員が付き添います。移る回数が1回で済むように、工区の順番を組みます。
ユニット化や間仕切りの改修は、どこに相談すればよいですか
手続きは、介護保険の指定をした都道府県や市(指定権者)に相談します。建物の決まりは設計者と建築の確認の機関、火災の設備は消防署に、図面を持って相談します。補助を使うなら、都道府県の補助の窓口にも早めに相談します。
改修の工事中、夜勤の体制はどう変えればよいですか
入居者の方が仮の居室や別のフロアに分かれるので、巡回の道すじと時刻を書き直し、夜勤の職員に図で渡します。工区が変わるたびに書き直します。
空調やナースコールの更新も、同じ時期にしたほうがよいですか
残りの年数が短いなら、同じ工区で一緒にすると、入居者の方の移動も仮設の費用も1回で済みます。ただ、工区の工期が延びるので、延びる日数と設備の残りの年数を並べて決めます。
多床室の改修に使える補助金はありますか
都道府県の地域医療介護総合確保基金に、多床室の改修のメニューがある例があります。特養の多床室のプライバシー保護のための改修や、既存施設のユニット化改修です。中身と時期は都道府県と年度で違い、交付の決定の前に着工しないことが前提です。
全部の居室を改修する前に、試すことはできますか
できます。1室だけ先に改修し、1〜2か月かけて介助・見守り・掃除・車椅子の動きを確かめると、残りの居室の設計と見積を直せます。試す居室は、窓側と廊下側の差が大きい部屋を選びます。
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