介護施設の「メンテナンス」には、法律や契約で決まった時期に状態を確かめる点検、壊れないように定期的に手入れや部品交換をする保守、壊れたものを直す修繕の3つが混ざっています。点検と保守は、エレベーター・空調・消防設備・受変電設備・特殊浴槽など設備ごとに専門の会社と契約するのが基本で、契約には点検のみ、消耗品込み、部品交換込みといった形の違いがあります。壊れたあとの修繕は、別の頼み先や別の費用になることが多いため、契約の中身を一覧にして確かめておきます。
この記事の結論
- 「メンテナンス」は、点検・保守・修繕の3つに分けて考える
- 点検と保守は、設備ごとに専門の会社と契約するのが基本
- 保守契約は、点検のみ・消耗品込み・部品交換込みで中身が違う
- 壊れたあとの修繕は、契約の外になることが多い
- 設備ごとの契約先・形・更新日を1枚の一覧にする
「メンテナンス」には、3つの仕事が混ざっています
介護施設で「メンテナンス」と言うとき、実際には3つの違う仕事が混ざっています。この3つを分けないまま業者を探すと、点検の会社に修理を頼んでしまったり、修理の会社に法定の点検を頼んでしまったりして、話がかみ合いません。
| 仕事 | 中身 | 主な頼み先 |
|---|---|---|
| 点検 | 法律や契約で決まった時期に、状態を確かめて記録する | 設備ごとの点検の会社、保守の会社 |
| 保守 | 壊れないように、定期的に手入れや部品の交換をする | メーカー系や独立系の保守の会社 |
| 修繕 | 壊れたもの、傷んだものを直す | 設備会社、工務店、メーカーの修理窓口 |
業者の側から見ても、この3つは別の仕事です。点検の会社は資格を持つ人が決まった手順で状態を確かめ、保守の会社は自社の部品と技術者で手入れをし、修繕の会社は壊れた箇所に合わせて工事をします。1つの会社がすべてを受け持つこともありますが、多くの場合は分かれています。
点検と保守は、壊れる前の仕事です。修繕は、壊れたあとの仕事です。介護施設では、点検と保守を設備ごとの専門の会社と契約しておき、修繕は必要になったときに別に頼む形が多く見られます。
点検と保守は、設備ごとに頼み先が違います
介護施設の設備には、それぞれ点検や保守を受け持つ専門の会社があります。設備によっては、法律で点検の時期や資格が決められています。主な設備と頼み先を一覧にしておきます。
| 設備 | 主な頼み先 | 法律の決まり |
|---|---|---|
| エレベーター | メーカー系の保守会社、独立系の保守会社 | 建築基準法の定期検査(年1回の報告など) |
| 消防設備 | 消防設備の点検の会社(消防設備士など) | 消防法の点検(機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと) |
| 受変電設備(キュービクル) | 電気保安の法人、電気管理技術者 | 電気事業法の保安管理(主任技術者の選任か外部委託) |
| 空調 | メーカー系のサービス、空調の工事業者 | 業務用はフロンの簡易点検・定期点検 |
| 特殊浴槽 | メーカー、販売店、保守の会社 | 法律の決まりはなく、保守契約による |
| 受水槽 | ビル管理の会社、貯水槽の専門の会社 | 容量によって清掃・検査の決まりがある |
| 自動ドア・ナースコール | メーカー系の保守会社、代理店 | 法律の決まりはなく、保守契約による |
同じ設備でも、施設の規模や建てた時期によって、法律の決まりが当てはまらないことがあります。たとえば受水槽は容量によって決まりが変わり、受変電設備は高圧で電気を受けている施設だけが対象になります。自分の施設に何が当てはまるかは、設備の一覧と契約書を見比べると分かります。
法律で点検が決まっている設備は、点検を受けていないと、運営の指導や消防の立入検査で指摘されることがあります。建物の定期報告(12条点検)の全体は12条点検は4つに分かれ、防火設備の検査は別に受けますに、消防設備の点検は消防設備の点検は年2回、消防署への報告は年1回ですに、受変電設備の連絡先は電気設備の修理を頼む先は、受電の形と作業の中身で決まりますにまとめています。
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保守契約は、部品交換込みか、点検のみかで中身が違います
保守契約には、大きく分けていくつかの形があります。エレベーターの保守でよく使われる言葉でいうと、部品の交換や修理まで含む「フルメンテナンス契約」と、点検と油・グリスなどの消耗品だけを含む「POG契約」があります。ほかの設備でも、考え方は同じです。
| 契約の形 | 含まれるもの | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 点検のみ | 決まった時期の点検と報告 | 故障が少なく、修理は都度でよい設備 |
| 点検と消耗品(POG型) | 点検と、油・グリス・小さな消耗品 | 費用を抑えたいが、点検は欠かせない設備 |
| 部品交換込み(フルメンテナンス型) | 点検と、部品の交換・修理(一部を除く) | 止まると困り、修理費の山を平らにしたい設備 |
部品交換込みの契約でも、すべての部品や修理が含まれるとは限りません。かごの内装や、大きな部品の交換、事故やいたずらによる修理などは、対象外になっていることがあります。契約書の「対象外」の項目を、必ず確かめておきます。
保守の費用は、年数とあわせて見ます
部品交換込みの契約と、点検と消耗品だけの契約のどちらが得かは、設備の年数によって変わります。月々の費用だけを比べると、点検と消耗品だけの契約が安く見えますが、部品の交換が増えてくると、その分の費用が別にかかります。
| 設備の年数 | 考え方 |
|---|---|
| 新しい(メーカーの保証期間の内) | 保証で直る部分が多いので、点検中心の契約でもよいことが多い |
| 中くらい(部品の交換が出はじめる) | 交換をすすめられる部品と費用を見て、どちらの形にするかを比べる |
| 古い(部品の交換が多い・部品が手に入りにくい) | 部品交換込みの契約が受けてもらえるか、更新の時期かを確かめる |
比べるときは、月々の費用に、過去数年の契約外の修理の費用を足した年間の合計で見ます。古い設備では、保守の会社が部品交換込みの契約を受けないこともあり、そのときは更新の計画を立てる目安になります。
壊れる前に手を打つ「予防保全」は、どこまでするか
壊れてから直す考え方を事後保全、壊れる前に手入れや交換をする考え方を予防保全といいます。すべてを予防保全にすると費用がかさみ、すべてを事後保全にすると、止まったときに入居者の方の生活が止まります。介護施設では、設備ごとに使い分けるのが現実的です。
| 考え方 | 設備の例 |
|---|---|
| 予防保全が向いている | エレベーター、給湯、特殊浴槽、空調(居室)、ナースコール、受変電設備 |
| 事後保全でよいことが多い | 居室の照明器具、建具の小さな部品、水栓のパッキン、網戸 |
予防保全にする設備は、点検の報告書に出てくる「交換をすすめる部品」を見て、計画的に交換します。事後保全でよい設備は、壊れたものをためて、まとめて直してもらう形が向いています。小さな修理のまとめ方は小さい工事が断られるのは、1人工という単位のせいですにまとめています。
メンテナンス会社を選ぶときに、確かめること
保守契約は、何年も続くことが多い契約です。月々の費用だけで選ぶと、いざというときに来てくれない、部品がそろわない、ということが起きます。契約の前に、次のことを確かめます。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 緊急時の出動 | 止まったとき、何時間くらいで来てもらえるか。夜間・休日はどうか |
| 部品の手配 | 自社で部品をそろえられるか。メーカーの部品を取り寄せられるか |
| 報告書 | 点検のたびに、写真や数値の入った報告書をもらえるか |
| 契約の範囲 | 対象の機器と、対象外の項目の一覧をもらえるか |
| 契約の期間と解約 | 自動更新か。解約の申し出は何か月前までか |
とくに介護施設では、止まったときに入居者の方の生活がすぐに困る設備が多いので、緊急時の出動の時間と、夜間・休日の連絡先は必ず書面でもらっておきます。電話番号が担当者の携帯だけ、という契約は、担当者が休みのときに困ります。
エレベーターなどでは、メーカー系の保守会社と、メーカー以外の独立系の保守会社があります。メーカー系は部品の手配や機種への詳しさが強み、独立系は費用を抑えやすいことが多い、と言われます。どちらにする場合も、上の表の項目を同じ条件で比べることが大事です。
設備ごとの契約を、1枚の一覧にまとめます
保守や点検の契約は、設備ごとに別々の会社と結ぶため、施設の中に契約書が何枚もたまっていきます。担当者が替わると、どの設備がどこと契約しているのかが分からなくなることもあります。1枚の一覧にまとめておくと、更新の時期や、壊れたときの連絡先がすぐに分かります。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 設備と台数 | エレベーター1基、業務用エアコン12台など |
| 契約先と連絡先 | 会社名、担当者、緊急時の電話 |
| 契約の形 | 点検のみ・消耗品込み・部品交換込み |
| 点検の頻度 | 月1回、年2回など |
| 契約期間と更新日 | 自動更新の有無と、解約の申し出の期限 |
| 費用 | 月額・年額と、対象外の項目 |
一覧を作ると、契約のない設備や、同じ設備に2つの会社が入っている重なりが見つかることがあります。施設の管理の会社の契約に、どこまでが含まれているかはビルメンテナンスの委託費と、修理の費用は分けて見ますで確かめてください。
点検の報告書を、修繕の計画につなげます
点検や保守の報告書は、受け取って保管するだけではもったいないものです。報告書には、部品の傷み具合や、交換をすすめる時期が書かれていることがあります。これを修繕の計画や予算に生かすと、急な故障を減らせます。
- 報告書を読む点検のたびに、「要交換」「経過観察」などの指摘を確かめます。
- 一覧に書き写す指摘された部品と時期を、設備の一覧や機器の台帳に書き写します。
- 予算に入れる次の年度に交換が必要なものを、修繕の予算に入れます。
- 交換したら記録する交換した部品と日付を記録し、次の点検で確かめます。
特殊浴槽の保守契約で、点検の回数を決める考え方は特殊浴槽の点検の回数は、使う回数と台数と年数で決めますにまとめています。報告書の指摘を毎年追いかけていくと、どの設備がいつごろ更新の時期になるかが、少しずつ見えてきます。
モデルケース:メンテナンス会社を探したら、契約が重なっていた施設
モデルケース:定員70名の介護老人保健施設
新しいメンテナンス会社を探す前に、今の契約を並べてみた
変わったこと(結果)
今の契約を一覧に並べたところ、空調の点検が、施設の管理の会社の契約と、空調の会社の契約の両方に入っていることが分かりました。重なっていた契約を整理し、その分の費用で、契約のなかった自動ドアの保守を結ぶことができました。
背景と、困っていたこと
事務長は、設備の故障が続いたことから、「まとめてメンテナンスを頼める会社を探したい」と考えていました。ところが、どの設備がどこと、どんな契約をしているのかを誰も把握しておらず、契約書は何か所かに分かれて保管されていました。
決めたこと
施設は、設備ごとの契約先・形・頻度・更新日を1枚の一覧にまとめ、事務室に置くことにしました。更新の3か月前には、契約を続けるか見直すかを決めるようにしています。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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保守契約にするか、都度頼むか
すべての設備に保守契約が要るわけではありません。法律で点検が決まっている設備は契約を結ぶのが基本ですが、それ以外の設備は、止まったときの影響と、故障の多さで決めます。
| 設備の状態 | 目安 |
|---|---|
| 法律で点検が決まっている | 点検の契約を結ぶ(エレベーター、消防設備、受変電設備など) |
| 止まると生活が止まり、故障もある | 保守契約を結ぶ(給湯、特殊浴槽、ナースコールなど) |
| 止まっても代わりがあり、故障が少ない | 都度頼む・まとめて頼む |
迷ったときは、その設備が1年間に何回止まったか、止まったときに何日困ったかを振り返ってみます。
定期的に小さな修理をまとめて頼む巡回の契約は、保守契約とは別のものです。定期の契約の決め方は定期の営繕契約は、頻度・範囲・費用の順に決めますにまとめています。
平常時にしておくこと
平常時にしておくこと
- 点検や保守が要る設備を、一覧に書き出す
- 設備ごとの契約先・契約の形・更新日を一覧にする
- 契約書の「対象外」の項目を確かめておく
- 点検の報告書の指摘を、修繕の予算に入れる
- 止まったときの連絡先を、詰所と事務室に貼る
建物と設備の法定の点検の全体は12条点検は4つに分かれ、防火設備の検査は別に受けますにまとめています。
どの設備にどんな契約が要るのか分からない、メンテナンス会社を比べたい、というときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。今の契約書や設備の一覧をお送りいただければ、抜けや重なりを確かめたうえで、合う頼み先の候補をお返しします。
よくある質問
介護施設のメンテナンス業者は、どこに頼めばよいですか
頼みたいのが点検・保守・修繕のどれかで変わります。点検と保守は、エレベーター・消防設備・受変電設備・空調・特殊浴槽など設備ごとの専門の会社に頼むのが基本で、壊れたものの修繕は設備会社や工務店に頼みます。
メンテナンスと修繕は、何が違いますか
メンテナンスは、壊れる前に状態を確かめる点検や、手入れ・部品交換をする保守を指すことが多く、修繕は壊れたものや傷んだものを直すことです。頼む会社も、費用のかかり方も違います。
保守契約には、どんな形がありますか
点検のみの契約、点検と油・グリスなどの消耗品を含む契約(エレベーターではPOG契約)、部品の交換や修理まで含む契約(フルメンテナンス契約)があります。含まれるものと対象外を契約書で確かめます。
フルメンテナンス契約なら、修理はすべて無料ですか
すべてが含まれるとは限りません。内装、大きな部品の交換、事故やいたずらによる修理などは対象外になっていることがあります。契約書の対象外の項目を確かめます。
法律で点検が決まっている設備はどれですか
主なものに、エレベーター(建築基準法の定期検査)、消防設備(消防法の点検と報告)、受変電設備(電気事業法の保安管理)、一定の容量以上の受水槽(水道法の管理と検査)、業務用エアコン(フロンの点検)があります。
メーカー系と独立系の保守会社は、どちらがよいですか
メーカー系は部品の手配や機種への詳しさ、独立系は費用を抑えやすいことが強みと言われます。緊急時の出動、部品の手配、報告書、契約の範囲、解約の条件を同じ条件で比べて選びます。
すべての設備に保守契約が必要ですか
必要ではありません。法律で点検が決まっている設備と、止まると生活が止まる設備は契約を結び、止まっても代わりがあり故障の少ない設備は、都度頼むかまとめて頼む形でもかまいません。
予防保全とは何ですか
壊れる前に手入れや部品の交換をして、故障を防ぐ考え方です。壊れてから直すのが事後保全です。介護施設では、止まると生活が止まる設備を予防保全にし、それ以外を事後保全にするなど、使い分けるのが現実的です。
点検の報告書は、どう使えばよいですか
「要交換」「経過観察」などの指摘を設備の一覧や台帳に書き写し、次の年度に交換が必要なものを修繕の予算に入れます。交換したら記録して、次の点検で確かめます。
契約が重なっていないか、どう確かめますか
設備ごとの契約先・形・頻度・更新日を1枚の一覧にまとめると、同じ設備に2つの会社が入っていないか、契約のない設備がないかが分かります。施設の管理の会社の契約の範囲も確かめます。
保守契約の解約は、いつでもできますか
自動更新の契約が多く、解約の申し出は更新の何か月前まで、と決められていることがあります。更新日と申し出の期限を一覧に書いておき、見直すかどうかを早めに決めます。
小さな修理も、保守の会社に頼めますか
保守の会社は、契約した設備の点検と保守が中心で、建物の小さな修理は受け持たないことが多いものです。小さな修理は、ためてまとめて、修繕の業者に頼む形が向いています。
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