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基礎知識

営繕は、修繕を含む仕事の全体です。
言葉で予算と補助が変わります

「営繕」と「修繕」は、どちらも建物を直すことのように聞こえます。けれども、稟議や見積、補助の申請の場面では、この2つの言葉の違いが、そのままお金の区分の違いになります。法人本部や経理から「これは修繕ですか、改修ですか」と聞かれて、答えに詰まった方もいると思います。この記事では、営繕という言葉の意味と、修繕・改修・更新・保守との違いを説明します。あわせて、言葉で変わる予算・会計・補助・頼み先を、介護施設の例で見ていきます。

構成:介護施設 修繕の窓口監修:鈴木貴行(介護施設営繕・修繕専門家)更新:読む時間:約22分

この記事が答える質問介護施設の営繕とは何ですか?介護施設の営繕と修繕の違いは?

介護施設の営繕とは、建物と設備を、入居者の方と職員が安全に使える状態に保つ仕事の全体を指す言葉です。中身は、保守・修繕・改修・更新の4つと、その手配や記録です。保守は壊れる前の手入れ、修繕は元に戻すこと、改修は性能を上げることや使い方を変えること、更新は丸ごと替えることです。営繕と修繕の違いは、全体か一部かです。修繕は、営繕の中の「元に戻す」仕事だけを指します。どの言葉にあたるかで、予算の置き場所、修繕費か資本的支出かの会計の扱い、補助の対象、頼み先と契約の形が変わります。

この記事の結論

  1. 営繕は、建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体を指す言葉
  2. 修繕は営繕の一部で、壊れた所や傷んだ所を元に戻す仕事
  3. 改修は性能を上げる・使い方を変える、更新は丸ごと替える、保守は壊れる前の手入れ
  4. 言葉で、予算の置き場所・会計の扱い・補助の対象・頼み先が変わる
  5. 見積と稟議では、行ごとに修繕・改修・更新を書き分けてもらう

営繕は、建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体です

介護施設の営繕とは、建物と設備を、入居者の方と職員が安全に使える状態に保つ仕事の全体を指す言葉です。「営」はつくる・いとなむ、「繕」はつくろう(直す)という意味です。2つを合わせて、建物をつくり、直しながら使い続けることを表します。

国の建物について定めた官公庁施設の建設等に関する法律は、「営繕」を「建築物の建築、修繕又は模様替」と定めています。この法律でいう建築物には、建物についている設備も含まれます。広い意味の営繕は、建てることから、直すこと、造り替えることまでを含む言葉です。

介護施設の現場で「営繕」と言うときは、もう少し狭い意味で使うことが多くあります。新しく建てることは別の計画として扱い、今ある建物と設備を保つ仕事を営繕と呼ぶ使い方です。中身は、保守・修繕・改修・更新の4つと、その手配や記録です。この記事でも、この意味で営繕という言葉を使います。

営繕と、その中に含まれる4つの言葉
言葉意味介護施設の例行う時期
営繕建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体下の4つと、その手配・記録・計画一年中
保守壊れないように、点検・清掃・調整・消耗品の交換をするエレベーターや特殊浴槽の定期の点検、空調のフィルターの清掃決まった周期で、壊れる前に
修繕壊れた所や傷んだ所を、元の状態に戻す水漏れの修理、外れた手すりの付け直し、剥がれた床の張り替え壊れたとき・傷んだとき
改修元より性能を上げる、または使い方を変える大浴場を個浴に分ける、段差をなくす、断熱の窓に替える計画を立てて
更新寿命の来た設備や部材を、丸ごと新しいものに替える給湯器や業務用エアコン、ナースコールの入れ替え直すより替えるほうがよいとき
営繕という全体の中に、保守・修繕・改修・更新の4つが入る。営繕は、4つの言葉を包む全体の呼び名営繕保守・修繕・改修・更新と手配・記録・計画の全体保守壊れる前に手入れする修繕壊れた所を元に戻す改修性能を上げる・用途を変える更新寿命の来た設備を替える
図1 営繕という全体の中に、保守・修繕・改修・更新の4つが入る。

4つの言葉は、目的で分かれます。壊れる前に手を入れるのが保守、壊れたら元に戻すのが修繕、元より良くするのが改修、丸ごと新しくするのが更新です。どれも、営繕という全体の中の一部です。営繕の仕事にどんな領域があり、何が含まれるかの一覧は営繕業務は、7つの領域と4種類の仕事。地図にすると、抜けが見えますにまとめています。

営繕と修繕の違いは、全体か一部かです

営繕と修繕の違いは、指している範囲の広さです。修繕は、壊れた所や傷んだ所を元の状態に戻す仕事だけを指します。営繕は、その修繕に加えて、保守・改修・更新と、業者の手配や記録までを含む全体の呼び名です。修繕は営繕の一部、と覚えておくと迷いません。

2つの言葉は、使われる場面も違います。「営繕担当」「営繕費」のように、人の役割や予算のまとまりに付けるときは、営繕を使います。「浴室の修繕」「外壁の修繕」のように、1件ごとの工事に付けるときは、修繕を使うことが多くあります。

営繕と修繕の違い
くらべる点営繕修繕
指す範囲保守・修繕・改修・更新と、手配・記録・計画の全体壊れた所・傷んだ所を元に戻す工事
目的建物と設備を、使える状態に保ち続ける壊れる前の状態に戻す
よく付く言葉営繕担当、営繕費、営繕業務〇〇の修繕、修繕工事、大規模修繕
お金の出方毎年くり返し出る費用と、計画して出す大きな費用の両方壊れたときに出る費用が中心
担う人営繕担当や事務長が、仕事の全体を回す業者が工事をし、施設が頼んで仕上がりを確かめる
修繕は、営繕という全体の中の「元に戻す」部分にあたる。営繕と修繕の範囲修繕営繕壊れた所を元に戻す1件ごとの工事壊れたときに出る費用保守・修繕・改修・更新手配・記録・計画まで一年中の仕事の全体修繕は、営繕の一部です
図2 修繕は、営繕という全体の中の「元に戻す」部分にあたる。

たとえば、「トイレの水が止まらない」を直すのは修繕です。便器を節水型の新しいものに替えるのは更新、トイレを車いすで使える広さに変えるのは改修です。この3つに、日々の見回りや業者の手配、修理の記録まで含めたものが営繕です。

言葉の違いが問題になるのは、お金と手続きの話になったときです。同じ「トイレの工事」でも、修繕か改修かで、予算の置き場所、会計の扱い、補助の対象が変わります。このあとの節で、1つずつ見ていきます。

相談・見積は無料|お断り可・理由は不要

修繕は「元に戻す」、改修は「上げる・変える」です

修繕と改修の分かれ目は、工事のあとの状態が、元と同じか、元より上がるかです。修繕は、傷んだ所を元の状態か、支障なく使える状態に戻す工事です。改修は、元より性能を上げる工事や、部屋の使い方を変える工事です。改修の中に、修繕が混ざることもよくあります。

工事のあとの状態が元と同じなら修繕、性能が上がるか使い方が変われば改修。修繕か、改修か工事のあと、性能や使い方が元と変わるか変わらない修繕元の状態に戻す変わる改修上げる・使い方を変える
図3 工事のあとの状態が元と同じなら修繕、性能が上がるか使い方が変われば改修。
同じ場所の工事でも、修繕と改修に分かれる例
場所修繕にあたる工事改修にあたる工事
浴室割れたタイルを張り直す。水栓を直す大浴場を個浴に分ける。床を滑りにくい材料に替える
トイレ詰まりを直す。壊れた便座を同じものに替える車いすで入れる広さに変える。手すりを付け足す
居室傷んだ壁紙や床を、同じ材料で張り替える多床室を個室に区切る。相談室に用途を変える
廊下剥がれた床材を張り直す段差をなくす。手すりを両側に付け足す
屋上傷んだ防水層を、同じ工法で張り替える断熱材を加えた防水に替える
窓割れたガラスを、同じものに替える断熱の二重窓にする。転落を防ぐ金具を付ける

建築基準法にも、近い区別があります。「大規模の修繕」は、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部の一種以上について、過半を直す工事です。「大規模の模様替」は、同じく主要構造部の一種以上について、過半を造り替える工事です。

どちらかにあたる工事は、建物の用途や規模によって、確認申請が要ります。介護施設は特殊建築物にあたることが多いので、壁や床、屋根に広く手を入れる工事は、設計者や自治体に早めに確かめます。

表のように、同じ場所でも、工事の中身で修繕と改修に分かれます。傷んだ浴室の床を直すついでに滑りにくい材料に替えれば、元に戻す部分と性能を上げる部分が混ざった工事になります。この混ざり方を見積の段階で分けておくと、あとで予算や会計の話をするときに困りません。

保守と更新は、設備の一生のどこで行うかで分かれます

保守と更新は、設備の一生の、どの時期に行う仕事かで分かれます。保守は、使っている間ずっと、壊れないように手入れする仕事です。更新は、寿命が近づいた設備を、丸ごと新しいものに替える仕事です。その間に、壊れたら直す修繕が入ります。

保守と修繕をくり返し、直すより替えるほうがよくなったら更新する。設備の一生と、言葉の出番1. 設置する(新しく入れる)2. 保守する(点検・清掃・消耗品の交換)3. 修繕する(壊れたら元に戻す)4. 更新する(寿命が来たら丸ごと替える)
図4 保守と修繕をくり返し、直すより替えるほうがよくなったら更新する。

保守は、メーカーや保守の会社と結ぶ保守契約で行うことが多くあります。エレベーター、特殊浴槽、ナースコール、空調、消防用設備などです。点検だけの契約もあれば、消耗品や部品の交換まで含む契約もあります。点検・保守と修繕の頼み先の違いはメンテナンス業者と修繕業者は、別のものですで書いています。

保守・修繕・更新を、設備ごとに分けた例
設備保守修繕更新
業務用エアコンフィルターの清掃、フロンの簡易点検基板やファンモーターの交換室外機と室内機の入れ替え
給湯器燃焼の点検、部品の定期交換点火の不良や水漏れを直す本体の入れ替え
特殊浴槽定期の点検、消耗部品の交換リフトや昇降の故障を直す本体の入れ替え
ナースコール呼び出しの試験、子機の点検子機やボタンの交換親機を含めた入れ替え
エレベーター保守会社の定期の点検部品の交換、扉の調整制御盤や巻上機の入れ替え

更新は、修繕を続けるより、替えたほうがよいと判断したときに行います。判断の材料は、使った年数、部品が手に入るか、修理の回数と費用、止まったときの影響です。設備ごとの年数の見方は設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますにまとめています。

修理で済むのか、替えたほうがよいのかは、施設だけでは決めにくいところです。エアコンが急に冷えなくなったときに、当窓口に相談された事務長の声です。

施設側としては、修理で済むのか、交換したほうがいいのか判断しづらかったのですが、必要な対応について説明してもらえたので、施設長とも相談しながら進めることができました。

ご利用者の声 東京都内・介護施設/事務長

取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。

現場では、言葉が混ざって使われます

実際の現場では、5つの言葉がきれいに分けて使われているとは限りません。「メンテナンス」「リフォーム」「リニューアル」のような言葉も入ってきます。業者や法人本部と話すときは、相手の言葉を5つの言葉に置きかえて聞くと、行き違いが減ります。

よく聞く言葉を、5つの言葉に置きかえる
よく聞く言葉多くの場合の中身置きかえると確かめること
メンテナンス点検、手入れ、壊れたときの修理まで混ざる保守(ときに修繕)契約に修理が含まれるか
リフォーム内装や水回りを新しくする改修か更新(ときに修繕)元に戻すだけか、性能を上げるか
リニューアル設備や内装をまとめて新しくする更新と改修何を丸ごと替えるか
原状回復退居後の居室を元の状態に戻す修繕手すりの付け足しなどが混ざっていないか
小修繕数千円から数万円の小さな修理修繕法人の決裁の金額の線
大規模修繕屋上防水や外壁など、足場をかけて行う周期的な工事修繕と改修建築基準法の「大規模の修繕」と同じとは限らない
模様替え内装の仕上げや間取りを変える改修部屋の用途を変えるかどうか

とくに気をつけたいのが「大規模修繕」です。現場では、十数年ごとに足場をかけて行う屋上や外壁の工事を、大規模修繕と呼ぶことが多くあります。いっぽう、建築基準法の「大規模の修繕」は、主要構造部の過半を直す工事を指す言葉で、範囲が違います。

補助の要綱でも、「大規模修繕」の中身は自治体ごとに決められています。言葉が同じでも、同じ工事を指しているとは限りません。言葉だけで判断せず、要綱に書かれた対象の工事と、自分の工事の中身を並べて確かめます。

ほかの言葉の意味を確かめたいときは、用語集も使えます。法人の中で使う言葉は、この表のように「よく聞く言葉」と「5つの言葉」の対応を決めておくと、担当者が替わっても通じます。

言葉によって、予算の置き場所が変わります

言葉で1つ目に変わるのは、予算の置き場所です。保守と修繕は、毎年くり返し出る費用として、ふだんの運営の予算に入れます。改修と更新は、金額が大きく、価値を高めることが多いので、施設整備や設備の購入の予算として別に組むことが多くあります。

社会福祉法人の会計基準では、修繕費は事務費の中の科目です。勘定科目の説明では、建物や器具・備品の修繕や模様替の費用とされ、改良して耐用年数を延ばすような資本的支出は含みません。建物の取得のような支出は、施設整備等による支出の区分に置かれます。

株式会社や医療法人は、それぞれの会計の決まりで科目を立てます。ただ、ふだんの費用と、資産になる支出を分ける考え方は同じです。科目の名前は、法人の経理規程で確かめます。

言葉ごとの、予算の置き場所の例
言葉予算の置き場所の例金額の出方予算を組むときの材料
保守ふだんの運営の予算(保守や委託の費用)毎年ほぼ同じ保守契約の一覧と金額
修繕ふだんの運営の予算(修繕費)年によって上下する前の年までの修理の件数と金額
改修施設整備の予算計画した年にまとまって出る見積と、補助を使うかどうか
更新設備の購入や施設整備の予算寿命の年にまとまって出る機器の年数と、更新の計画

言葉を分けずに「営繕費」として1つの予算にまとめると、年度の途中で困ることがあります。たとえば給湯器の更新に数百万円を使うと、その年の小さな修理に回すお金が足りなくなります。ふだんの修繕と、計画して行う改修・更新を分けて組んでおけば、急な故障にも計画の工事にも、お金を回しやすくなります。

大きな改修や更新は、何年も前から時期が見えています。毎年少しずつ積み立てて備える法人もあります。修繕の予算の組み方は修繕の予算は、前の年の秋から3つの区分で組みますで書いています。

言葉で、修繕費か資本的支出かの見当がつきます

言葉で2つ目に変わるのは、会計の扱いです。工事の費用は、その年の費用にする修繕費と、資産として計上して何年かに分けて費用にする資本的支出に分かれます。分け方は、言葉ではなく工事の中身で決まります。ただ、言葉の区別とかなり重なっています。

法人税基本通達は、壊れた所を元の状態に戻すための費用を修繕費としています(7-8-2)。価値を高めたり耐久性を増したりする部分は、資本的支出です(7-8-1)。修繕は修繕費、改修は資本的支出に近い、と考えると見当がつきます。設備を丸ごと替える更新は、新しい資産の取得として扱われることがあります。

言葉と、会計の扱いの傾向
言葉会計の扱いの傾向分かれ目になること
保守その年の費用部品の交換が、特に性能の高いものへの交換でないか
修繕修繕費になりやすい元に戻すだけか。20万円未満か、おおむね3年以内の周期か
改修資本的支出になりやすい性能を上げる部分と、元に戻す部分の金額
更新新しい資産の取得や資本的支出として扱われることがある設備の単位と、取り替える範囲

金額と周期にも目安があります。1つの計画の工事が20万円未満のものや、おおむね3年以内の周期で行うものは、修繕費にできます(7-8-3)。どちらか明らかでない金額が60万円未満か、前期末の取得価額のおおむね10%以下のときも、修繕費にできます(7-8-4)。

判定するのは、法人の経理と、顧問の会計の専門家です。頼む側にできるのは、判定の材料をそろえることです。見積の分け方と判定の進め方は修繕費か資本的支出かは、見積の分け方で判断しやすくなりますにまとめています。資産になったあとの耐用年数と減価償却は、建物附属設備の耐用年数は、設備の区分で決まりますで書いています。

言葉によって、補助の対象になるかが変わります

言葉で3つ目に変わるのは、補助の対象です。国や自治体の補助は、大規模修繕や改修のように、施設の機能を保ったり高めたりする工事を対象にするものが中心です。毎年の小さな修理や、保守の費用は、補助の対象になりにくいと考えておきます。

たとえば、地域医療介護総合確保基金を使った自治体の補助には、介護施設の大規模修繕を対象にするものがあります。名古屋市の要綱では、おおむね10年たって使用に耐えなくなった部分の改修を対象にしています。浴室や食堂の改修、外壁や屋上の防水、給排水・電気などの設備や冷暖房設備の改造です。避難経路の整備やバリアフリー化なども挙げています。対象の工事と条件は、自治体ごとに違います。

言葉と、補助の対象になりやすさ
言葉補助の対象になりやすさ理由と、確かめること
保守なりにくい毎年の運営の費用にあたるため
修繕(小さな修理)なりにくい金額が小さく、ふだんの費用にあたるため
修繕(大規模修繕)なることがある要綱の「大規模修繕」の中身と、年数などの条件を確かめる
改修なりやすいバリアフリー化・防災・省エネ・ユニット化など、目的が要綱に合うか
更新目的によってなる非常用の発電設備や空調など、防災や省エネの目的に合うか

補助を使う工事では、見積の言葉が、そのまま申請の書類に使われます。件名が「浴室修繕工事」で中身が個浴への改修なら、要綱の区分とずれることがあります。補助の対象になる部分とならない部分を、見積の行で分けておくと、申請のときに書き直さずに済みます。

交付の決定より前に契約や着工をすると、補助の対象にならないことにも気をつけます。基金を使った大規模修繕の補助の仕組みは基金で大規模修繕の補助を受けるには、まず創設の条件を確かめますにまとめています。

言葉によって、頼み先と契約の形が変わります

言葉で4つ目に変わるのは、頼み先と契約の形です。保守は、設備ごとのメーカーや保守の会社と、年単位の保守契約を結ぶのがふつうです。修繕は、その都度、設備業者や工務店に工事を頼みます。改修は、規模によって設計者に図面を頼み、工事の会社を選びます。更新は、メーカーや設備業者に、機器と工事をあわせて頼みます。

言葉ごとの、頼み先と契約の形
言葉主な頼み先契約の形気をつけること
保守メーカー、保守の会社年単位の保守契約(委託)点検だけか、部品の交換まで含むか
修繕設備業者、工務店、メーカー1件ごとの工事の請負小さな修理を受けてくれるか
改修設計者、工事の会社設計の委託と、工事の請負確認申請や補助の手続きが要るか
更新メーカー、設備業者機器の購入と、工事の請負撤去と処分、止まる期間の代わり

工事の金額にも気をつけます。1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事は、その業種の建設業の許可を持つ会社に頼みます。改修や更新はこの金額を超えやすいので、見積を頼む前に許可の有無を確かめます。

営繕の仕事は、外に任せてかまいません。保守・修繕・改修・更新のどれを、どこまで任せるかを決めれば、施設の手間を減らせます。外注してよいかの判断と、デメリットへの手の打ち方は営繕は外注してかまいません。デメリットは契約の前に手を打てますで書いています。外に出せる仕事と、施設に残る仕事の分け方は営繕を丸ごと外注しても、施設に残る仕事がありますにあります。

見積では、行ごとに言葉を分けてもらいます

言葉の違いを予算・会計・補助につなぐ入口は、見積です。見積の件名と行に、修繕・改修・更新のどれにあたるかを書き分けてもらうと、そのまま稟議と予算に使えます。一式のまま受け取ると、あとで施設の側が分け直すことになります。

行ごとに4つの見出しのどれかを付けてもらうと、予算と会計に分けやすい。見積の行に付けてもらう4つの見出し修繕(元に戻す部分)改修(上げる・変える部分)更新(丸ごと替える部分)共通の費用(仮設・養生・諸経費)
図5 行ごとに4つの見出しのどれかを付けてもらうと、予算と会計に分けやすい。
  1. 件名は、中身に合わせる「浴室修繕工事」と1つの言葉でくくらず、「浴室の修繕と個浴への改修」のように、中身の言葉を並べてもらいます。
  2. 行ごとに、見出しを付けてもらう各行の頭に、修繕・改修・更新のどれかを書いてもらいます。迷う行は「要相談」でかまいません。
  3. 共通の費用は、別の行にする仮設・養生・諸経費のように工事全体にかかる費用は、どれかに混ぜず、別の行にしてもらいます。
  4. 理由を一言添える「予算の区分と会計の判定に使うため」と伝えると、業者も分け方の見当がつきます。

業者が付けた見出しが、そのまま会計の判定の結果になるわけではありません。修繕と書かれた行でも、性能を上げる中身なら、経理の判定は資本的支出になることがあります。業者に付けてもらうのは、判定の材料としての見出しです。

法人の中で、言葉の意味をそろえておくことも欠かせません。施設ごとに「修繕」の意味が違うと、本部は予算を並べて比べられません。5つの言葉の意味を1枚の表にして、見積の依頼、稟議、予算の書類で同じ言葉を使います。稟議書の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。

相談・見積は無料|同じ条件で最大3社

このお問い合わせ1本で、
最大3社の見積がそろいます。

モデルケース:浴室の「修繕」の見積に、改修が混ざっていた特養

モデルケース:定員70名の特別養護老人ホーム(社会福祉法人)

稟議の差し戻しが、1年で7件から1件に

変わったこと(結果)

見積と稟議に使う言葉を5つに決めてから1年で、法人本部からの稟議の差し戻しが、前の年度の7件から1件に減りました。見積を受け取ってから稟議が通るまでの日数も、平均3週間ほどから1週間ほどになりました。浴室の工事は、修繕の部分を今年度の修繕費で行うと決まりました。個浴への改修の部分は、市の補助の要綱に合うかを確かめてから、翌年度に回します。

背景と、困っていたこと

このホームでは、浴室の床と水栓の傷みが目立ち、事務長が「浴室修繕工事」として見積を取りました。届いた見積には、床を滑りにくい材料に替える工事と、大浴場の一部を個浴に分ける工事が、一式で入っていました。本部の経理からは、どこまでが修繕で、どこからが資産になるのかを聞かれ、稟議が2回差し戻されました。同じ年度には、給湯器の入れ替えを「給湯器修繕」と書いた稟議も、同じ理由で戻っていました。

決めたこと

事務長が迷ったのは、言葉をそろえると、長年の呼び方に慣れた職員や業者に手間をかけることでした。決め手は、本部の経理の担当が「行が4つの見出しで分かれていれば、予算の区分はこちらで決められる」と話したことです。ホームは、営繕・保守・修繕・改修・更新の意味を1枚の表にして、業者への見積の依頼文に添えることにしました。浴室の見積は、修繕・改修・共通の費用の3つに行を分け直してもらいました。

進めてみて分かったこと

行を分けてみると、浴室の工事のうち、元に戻す修繕の部分は全体の4割ほどでした。修繕の部分だけを先に行ったので、入浴を清拭に替える日も短く済みました。業者からは、次からは最初から分けて出すと言われ、見積の取り直しもなくなりました。

このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。

言葉をそろえるために、平常時にしておくこと

平常時にしておくこと

  • 営繕・保守・修繕・改修・更新の意味を、法人で1枚の表にする
  • 今年度と来年度の工事の候補を、4つの言葉で分けて書き出す
  • 見積の依頼文に、行ごとに見出しを付けてほしいと書いておく
  • 保守契約の一覧を作り、修理が含まれるかを書き込む
  • 改修と大規模修繕は、補助の要綱に合うかを早めに確かめる

営繕担当の仕事を、毎日・毎週・毎月・毎年の周期で並べた表は営繕の仕事は4つの周期で回り、修繕は安全から順に直しますにあります。

工事の中身を修繕・改修・更新に分けた見積をそろえたいときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。24時間受け付けています(お電話の受付はありません)。1回のご依頼で最大3社から、同じ条件で見積を取り寄せられます。相談と見積は無料で、お断りもできます。会計の判定と補助の可否は、法人の経理の担当と、所管の自治体にお確かめください。

よくある質問

営繕という言葉は、どういう意味ですか

営繕とは、建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体を指す言葉です。国の建物について定めた法律では「建築物の建築、修繕又は模様替」と定められています。介護施設では、今ある建物と設備の保守・修繕・改修・更新と、その手配や記録をまとめて営繕と呼ぶことが多くあります。

営繕と修繕は、どちらが広い意味の言葉ですか

営繕のほうが広い意味の言葉です。修繕は、壊れた所や傷んだ所を元の状態に戻す工事だけを指し、営繕はそれに保守・改修・更新と、手配や記録までを含みます。修繕は営繕の一部です。

修繕と改修の違いは何ですか

修繕は元の状態に戻す工事、改修は元より性能を上げたり使い方を変えたりする工事です。割れたタイルを張り直すのは修繕、大浴場を個浴に分けるのは改修です。1つの工事に両方が混ざることもあるので、見積で分けてもらいます。

設備の更新は、修繕とどう違いますか

修繕は壊れた部分を直して使い続けること、更新は設備を丸ごと新しいものに替えることです。使った年数、部品が手に入るか、修理の回数と費用、止まったときの影響を並べて、直すか替えるかを決めます。

くわしく:設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めます

保守と修繕は、何が違いますか

保守は壊れる前の手入れ、修繕は壊れたあとに元に戻すことです。保守は点検・清掃・調整・消耗品の交換で、メーカーや保守の会社と結ぶ保守契約で行うことが多くあります。保守契約に修理が含まれるかは、契約ごとに違います。

くわしく:メンテナンス業者と修繕業者は、別のものです

予算で「営繕費」とまとめた費用は、会計ではどう分かれますか

「営繕費」とまとめた費用は、会計では、その年の費用になる修繕費と、資産として計上する資本的支出などに分かれます。社会福祉法人の会計基準では、修繕費は事務費の中の科目で、改良して耐用年数を延ばすような資本的支出は含まないとされています。予算の段階から、ふだんの修繕と、計画して行う改修・更新を分けて組むと、会計にもつなげやすくなります。

くわしく:修繕の予算は、前の年の秋から3つの区分で組みます

改修工事の費用は、修繕費にできますか

改修工事の費用は、性能を上げる部分が資本的支出になりやすく、中身や金額によっては修繕費にできます。1つの計画の工事が20万円未満のものや、おおむね3年以内の周期で行うものは、法人税基本通達の目安で修繕費にできます。判定は法人の経理と会計の専門家が行います。

くわしく:修繕費か資本的支出かは、見積の分け方で判断しやすくなります

修繕の費用に、補助金は使えますか

毎年の小さな修理や保守の費用には、補助は使いにくいのがふつうです。大規模修繕や、バリアフリー化・防災・省エネなどの改修は、自治体の補助の対象になることがあります。対象の工事と条件は要綱ごとに違い、交付の決定より前に契約や着工をすると対象にならないことにも気をつけます。

くわしく:基金で大規模修繕の補助を受けるには、まず創設の条件を確かめます

「大規模修繕」とは、どんな工事のことですか

大規模修繕は、現場では、十数年ごとに足場をかけて行う屋上防水や外壁の工事を指すことが多い言葉です。建築基準法の「大規模の修繕」は、主要構造部の一種以上について過半を直す工事を指し、範囲が違います。補助の要綱での意味は、自治体ごとに確かめます。

退居後の居室の原状回復は、修繕と改修のどちらですか

退居後の原状回復は、元の状態に戻す工事なので、修繕にあたります。ただ、あわせて手すりを付け足したり、床を滑りにくい材料に替えたりすると、その部分は改修になります。費用の負担や会計の扱いが変わるので、見積で分けてもらいます。

くわしく:退去の原状回復は、修繕と改修を分けると負担が決まります

営繕は、施設の職員がしなければならない仕事ですか

営繕は、施設の職員だけがしなければならない仕事ではなく、外に任せられます。保守・修繕・改修・更新の手配や記録まで、どこまでを任せるかを決めれば外注できます。ただし、何を直し、いくらかけるかを最後に決めるのは施設です。

くわしく:営繕は外注してかまいません。デメリットは契約の前に手を打てます

業者の見積の「修繕工事」という件名は、そのままでよいですか

中身に改修や更新が入っているなら、件名と行を中身に合わせて分けてもらうほうが安心です。件名が「修繕」のままだと、稟議・予算・補助の申請で区分がずれることがあります。行ごとに修繕・改修・更新のどれかを書いてもらい、仮設や諸経費は別の行にしてもらいます。

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営繕と修繕の言葉の意味は用語集、頼み先の一覧は設備別の頼み先、ご相談の流れはご相談の流れにまとめています。

監修者

鈴木貴行|介護施設営繕・修繕専門家

  • 30年以上営繕・設備管理の経験
  • 1,000施設超関わった介護・高齢者施設
  • 3,000件超修繕・設備改善の案件

介護施設の営繕・設備管理に30年以上携わり、1,000施設を超える介護・高齢者施設の現場に関わってきました。介護施設の営繕・保守・修繕・改修・更新の言葉の違いと、それによって変わる予算・会計・補助の考え方を監修しています。

経験した施設
特別養護老人ホーム有料老人ホームグループホームデイサービスサービス付き高齢者向け住宅
専門分野
給排水空調電気・照明トイレ・浴室床・壁扉・建具ナースコール

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