介護施設の建物附属設備の耐用年数(法定耐用年数)は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の区分で決まります。冷暖房の設備は冷凍機の出力22kW以下が13年、それ以外が15年です。給排水・衛生・ガスの設備と電気の設備は15年、エレベーターは17年です。消火・排煙・災害報知の設備は8年、自動ドアは12年です。建物附属設備は建物とは別の年数で、工事の代金をこの年数に分けて費用にします。1つの工事に区分が混ざるので、見積を区分ごとに分けてもらいます。社会福祉法人では、法人の規程の金額を超える設備の入れ替えは、理事会で決めます。
この記事の結論
- 建物附属設備の法定耐用年数は、省令の設備の区分で決まる
- 冷暖房13年・15年、給排水・電気15年、昇降機17年、消火8年など
- 法定の年数は会計の年数で、入れ替えの時期とは別
- 見積を区分ごとに分けると、償却と決裁の判断が早くなる
- 社会福祉法人は、規程の金額を超える工事を理事会で決める
建物附属設備の耐用年数は、設備の区分ごとに決まっています
建物附属設備の耐用年数(法定耐用年数)は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第一で、設備の区分ごとに決まっています。介護施設に多い設備で見ると、冷暖房の設備は13年か15年です。給排水・衛生・ガスの設備と電気の設備は15年、エレベーターは17年、消火・排煙・災害報知の設備は8年です。
| 区分 | 細目 | 年数 | 介護施設での例 | 100万円あたり1年の償却の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 冷房・暖房・通風・ボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下) | 13年 | 出力の小さい業務用の空調 | 約7.7万円 |
| 冷房・暖房・通風・ボイラー設備 | その他のもの | 15年 | 出力の大きい空調、換気の設備、ボイラー | 約6.7万円 |
| 給排水・衛生設備、ガス設備 | — | 15年 | 給湯の設備、ポンプ、受水槽、配管、トイレや洗面の器具 | 約6.7万円 |
| 電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備 | 6年 | 停電に備える蓄電池の電源設備 | 約16.7万円 |
| 電気設備(照明設備を含む) | その他のもの | 15年 | 受変電設備、分電盤、配線、照明 | 約6.7万円 |
| 昇降機設備 | エレベーター | 17年 | 入居者の方が使うエレベーター | 約5.9万円 |
| 消火・排煙・災害報知設備、格納式避難設備 | — | 8年 | 自動火災報知設備、スプリンクラー、排煙の設備 | 約12.5万円 |
| エヤーカーテン・ドアー自動開閉設備 | — | 12年 | 玄関や通用口の自動ドア | 約8.4万円 |
| 可動間仕切り | 簡易なもの/その他のもの | 3年/15年 | 食堂や会議室の動かせる間仕切り | 約33.4万円/約6.7万円 |
| 前掲のもの以外 | 主として金属製のもの/その他のもの | 18年/10年 | ほかの区分に当たらない附属設備 | 約5.6万円/約10万円 |
表の右の列は、定額法で償却したときの、取得の額100万円あたりの1年の額の目安です。600万円の工事なら、15年の区分で1年あたり約40万円になります。社会福祉法人の会計でも、耐用年数は原則としてこの省令の年数を使います。
冷暖房の13年と15年を分ける22kWは、冷凍機の出力のことです。カタログに大きく書かれた冷房の能力(kW)とは別の数字です。取り違えないよう、新しい機器の仕様書を経理の担当に渡して、どちらの区分になるかを確かめます。
区分の判断に迷う設備もあります。ナースコールや特殊浴槽、見守りの機器は、取り付け方や使い方で、建物附属設備か器具及び備品かの判断が分かれることがあります。迷うものは、経理の担当と、顧問の税理士・会計の専門家に確かめます。
建物附属設備は、建物とは別の年数で償却します
建物附属設備は、建物に取り付けて、建物の働きを支える設備です。建物そのもの(柱・壁・床・屋根など)は、構造と用途で年数が決まります。建物附属設備は、設備の区分で年数が決まります。動かせる家具や機器は、器具及び備品として、品目ごとの年数になります。
| 区分 | 入るもの | 年数の決まり方 | 介護施設での例 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 柱・壁・床・屋根など、建物そのもの | 構造(鉄筋コンクリート造・木造など)と用途 | 居室の棟、渡り廊下 |
| 建物附属設備 | 建物に取り付け、建物の働きを支える設備 | 設備の区分(空調・給排水・電気など) | 空調、給湯の設備、エレベーター、火災報知設備 |
| 器具及び備品 | 動かせる家具や機器 | 品目ごと | 介護用のベッド、車いす、事務用の机 |
建物と分けて扱うのは、設備のほうが傷みが早く、入れ替えの周期も短いからです。施設を建てたときの工事費も、帳簿では建物と建物附属設備に分けて載せるのが基本です。固定資産の台帳を見ると、どの設備が、いつ、いくらで、何年の区分で載っているかが分かります。
修繕を担う側がこの台帳を見ておくと、更新の工事を考えるときに、今の設備が帳簿にいくら残っているかが分かります。入れ替えると、その残りの扱いが決算に関わるからです。台帳は経理の担当が持っていることが多いので、設備の一覧と照らし合わせておきます。
建物附属設備の区分は、建物を建てたときの区分のままとは限りません。あとから入れ替えた空調や、増やした自動ドアは、入れ替えたときの工事の区分で、別の行として台帳に載ります。同じ「空調」でも、行ごとに残りの年数が違うことがあります。
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減価償却は、払った代金を耐用年数に分けて費用にすることです
減価償却は、設備に払った代金を、耐用年数の間に少しずつ費用にしていく会計のやり方です。600万円で入れた設備を、入れた年の費用に全額のせると、その年だけ大きな赤字に見えます。使う年数に分けて費用にすれば、毎年の収支を比べやすくなります。
社会福祉法人の会計では、耐用年数が1年以上で、使ううちに価値が減る固定資産を、毎期償却します。方法は定額法か定率法で、拠点区分ごと、資産の種類ごとに選べます(社会福祉法人会計基準の運用上の取扱い16)。税法では、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備の償却方法は、定額法です。
| 時点 | その年度の償却の額 | 年度末に帳簿に残る額 |
|---|---|---|
| 1年目(4月に入れた場合) | 約40万円 | 約560万円 |
| 5年目 | 約40万円 | 約400万円 |
| 10年目 | 約40万円 | 約200万円 |
| 15年目 | 約37万円 | 1円(備忘価額) |
年度の途中で入れた設備は、月割りで計算します。たとえば4月始まりの年度で10月に入れた設備は、その年度は10月から3月までの6か月分を償却します。工事が終わる月が、そのまま初年度の償却の額に響きます。
ここで取り違えやすいのが、お金の動きです。償却で費用を分けても、工事の代金は工事の年に払います。社会福祉法人の資金収支の予算では、固定資産になる工事も、取得した年度に「固定資産取得支出」として全額を入れます。償却の年数で、予算を分けられるわけではありません。
最後の年に1円だけ残すのは、その設備がまだ帳簿にあることを示すためです。設備を撤去したときに、この1円も帳簿から外します。
償却の途中で入れ替えると、帳簿の残りを一度に費用にします
法定の耐用年数は会計のための年数で、その年に入れ替えなければならない、という意味ではありません。償却が終わった設備も、安全に動いていれば使い続けられます。反対に、償却の途中でも、壊れて直せなければ入れ替えます。入れ替えの時期を、使った年数・部品の見通し・修理の記録から決める考え方は設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますにまとめています。
償却の途中で入れ替えると、古い設備の帳簿に残っている額を、その年度に処分の損として費用にします。たとえば、15年の区分の空調を10年目の終わりに入れ替えると、取得の額のおよそ3分の1が、その年度の費用に一度に出ます。
| 場面 | 帳簿で起きること | 施設が準備すること |
|---|---|---|
| 償却の途中の設備を撤去する | 帳簿の残りの額を、処分の損として費用にする | 撤去の日と、撤去した機器の一覧を経理に渡す |
| 一部の機器だけを入れ替える | 入れ替えた部分と残る部分を分けて扱う | 見積で、機器ごとの金額を分けてもらう |
| 補助で入れた設備を入れ替える | 補助に関わる積立金の取り崩しや、財産の処分の手続きが関わる | 補助を受けた県や市に、入れ替えの前に聞く |
| 償却が終わった設備を入れ替える | 帳簿には1円が残るだけで、損はほとんど出ない | 撤去したことを経理に伝え、台帳から外す |
一部の機器だけを入れ替えるときは、残る機器と入れ替える機器の線引きが要ります。室外機だけ、室内機だけを替える場合や、同じ系統の台をまとめて替える場合です。同じ系統・同じ年式の空調をまとめて替えると工事費が下がる理由と、何台からまとめるかの目安はR22のエアコンは、冷媒に関わる故障なら更新を考えますにあります。
補助で入れた設備は、とくに注意が要ります。社会福祉法人では、補助で取得した資産について国庫補助金等特別積立金を積み、償却に合わせて取り崩しています。補助の決まりで、決められた期間の前に処分するときは、県や市の承認が要ることもあります。入れ替えの計画が決まったら、早めに経理の担当と補助の窓口に伝えます。
工事の見積は、設備の区分ごとに分けてもらいます
1つの工事の中に、いくつもの区分が混ざることはよくあります。浴室の改修なら、給湯と配管は給排水・衛生の設備、換気扇と暖房は冷暖房・通風の設備、照明とコンセントは電気の設備です。床や壁は建物の修繕、特殊浴槽の本体は器具及び備品として扱うこともあります。見積が「浴室改修工事 一式」だけだと、経理はどの年数で償却するかを決められません。
| 見積の行 | 中身 | 区分の見込み | 年数の見込み |
|---|---|---|---|
| 給湯・給排水 | 給湯器の交換、給湯管と排水管の引き直し | 給排水・衛生設備 | 15年 |
| 換気・暖房 | 浴室の換気扇、脱衣室の暖房機 | 冷房・暖房・通風設備 | 13年か15年 |
| 電気 | 照明、コンセント、専用の回路 | 電気設備 | 15年 |
| 内装 | 床の張り替え、壁の補修、手すり | 建物、または修繕費 | 中身で判断 |
| 特殊浴槽の本体 | 機械浴の本体と付属の機器 | 器具及び備品か、設備か | 経理と税理士に確かめる |
| 仮設・撤去・諸経費 | 養生、撤去と処分、現場の管理 | 各区分に割り振る | 割り振り方を経理と決める |
見積を区分ごとに分けてもらうには、見積を頼むときに、次の3つを伝えておきます。あとから分け直しを頼むと、業者の手間が増え、日数もかかります。
- 区分ごとの小計給排水・衛生、空調・換気、電気、消火・防災、昇降機、内装の区分ごとに、小計を出してほしいと伝えます。
- 機器ごとの行入れ替える機器は、型番・台数・金額を1台ずつ行に分けてもらいます。
- 撤去する機器の一覧撤去して処分する機器の場所・型番・台数を、別の行に書いてもらいます。
「一式」と書かれた見積の内訳を分けてもらう頼み方と、1社の見積が妥当かを確かめる方法は「一式」を分けてもらえば、1社の見積でも判断できますにあります。区分ごとに分かれた見積は、償却の判断だけでなく、次に同じ設備を入れ替えるときの単価の記録にもなります。
修繕費か資本的支出かで、償却するかどうかが決まります
工事の代金のうち、元の状態に戻す部分は、修繕費としてその年度の費用にします。性能を上げたり、使える年数を延ばしたりする部分は、資本的支出として資産に加え、償却します。どちらに当たるかで、耐用年数の表を使うかどうかが決まります。
法人税基本通達には、修繕費にできる目安があります。1つの計画の工事が20万円未満のものや、おおむね3年以内の周期で行うものです(7-8-3)。どちらか明らかでない金額は、60万円未満か、前期末の取得価額のおおむね10%以下なら修繕費にできます(7-8-4)。判定するのは、法人の経理と会計の専門家です。
資本的支出になった部分は、もとの設備と同じ区分の年数で償却するのが基本です。たとえば、給水管の一部を、より長く持つ材料に替えた部分が資本的支出になれば、給排水・衛生設備の年数で償却します。見積の段階で何を分けてもらうと判定しやすいかは修繕費か資本的支出かは、見積の分け方で判断しやすくなりますにまとめています。
修繕を担う側にできるのは、判定の材料をそろえることです。元に戻す部分と性能を上げる部分を見積の行で分け、工事の前と後の写真を残します。決めるのは経理と専門家でも、材料がなければ判定できません。
社会福祉法人では、理事会が決める場面が決まっています
社会福祉法人では、理事に任せられず、理事会で決めなければならない事項が、社会福祉法で決まっています。修繕に関わるのは、「重要な財産の処分及び譲受け」と「多額の借財」の2つです(社会福祉法第45条の13第4項)。大きな設備の入れ替えが重要な財産の譲受けに当たれば、理事会で決めます。
どの金額からが「重要な財産」や「多額の借財」に当たるかは、法律では決まっていません。法人が、事業の中身や規模に応じて、理事会で金額などを具体的に決めておくことになっています。まず、自分の法人の理事会の規程や経理規程を開いて、金額の線を確かめます。
| 場面 | 理事会で決めること | もとになる決まり |
|---|---|---|
| 翌年度の予算 | 事業計画と収支予算の承認 | 定款(年度が始まる前の日まで) |
| 予算を超える工事 | 補正予算の承認 | 定款、経理規程 |
| 大きな設備の入れ替え | 重要な財産の譲受けとして決議 | 社会福祉法 第45条の13第4項、法人の規程 |
| 工事のための借入れ | 多額の借財として決議 | 社会福祉法 第45条の13第4項、法人の規程 |
| 積立金の積み立て | 目的と額の議決 | 社会福祉法人会計基準 |
| 建物を担保にする・取り壊す | 基本財産の処分や担保の承認 | 定款(評議員会や所轄庁の承認が要ることがある) |
理事会は、年に数回しか開かれない法人もあります。理事長などは、3か月に1回以上(定款で定めれば、毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上)、職務の執行の状況を理事会に報告します。大きな更新を決めたいときは、次の開催日を先に確かめ、資料の締切から逆算して見積をそろえます。
翌年度に予定している更新は、3月の理事会で、予算と一緒に決めておく方法もあります。工事の範囲と上限の額を決め、その中で業者を選んで契約することを理事長に任せておけば、年度の途中で臨時に諮る回数が減ります。予算の組み方は修繕の予算は、前の年の秋から3つの区分で組みますにまとめています。
契約の方法にも、社会福祉法人の決まりがあります
社会福祉法人が工事を頼むときは、契約の方法にも決まりがあります。工事の請負で、2社の見積合わせで足りる上限は、令和8年3月までは250万円以下でした。令和8年4月からは400万円以下です。それを超えると、3社以上から見積を取ります(厚生労働省「社会福祉法人における入札契約等の取扱いについて」の一部改正)。
補助を使う工事では、補助の要綱で、入札や見積の社数に別の条件が付くこともあります。補助を使う工事の業者の選び方は補助を使う工事では、相見積か入札かを交付の条件で確かめますにまとめています。
施工会社の候補に、理事と関わりのある会社が入ることもあります。その工事の決議に特別の利害関係がある理事は、議決に加われません。候補の会社が決まった段階で、理事との関わりがないかを確かめておくと、理事会の当日に議決が止まることを防げます。
施設から理事会までの決裁の流れを、1枚の表にしておきます
理事会に上げる場面が分かったら、施設から本部、理事長、理事会までの決裁の流れを1枚の表にして、施設に配っておきます。工事の金額と、予算にあるかどうかで、誰が決めるかを分けます。金額の線は法人ごとに違うので、下の表は形の例として見てください。
| 工事の金額と中身 | 施設 | 本部・経理 | 理事長 | 理事会 |
|---|---|---|---|---|
| 予算の中の修繕で、施設長の線の中 | 施設長が決裁 | 月ごとに報告を受ける | — | — |
| 予算の中の修繕・更新で、施設長の線を超える | 起案する | 区分と予算を確かめる | 決裁 | — |
| 予算にない工事 | 起案する | 予備費か補正かを判断 | 予備費なら決裁 | 補正予算を承認 |
| 規程の金額を超える設備の入れ替え | 起案する | 資料と区分の見込みを作る | 理事会に提案 | 決議 |
| 借入れを伴う工事 | 起案する | 返済の計画を作る | 理事会に提案 | 多額の借財として決議 |
表の「区分と予算を確かめる」が、この記事で見てきた耐用年数とつながる所です。本部の経理が、見積の行ごとに、修繕費か固定資産か、どの区分の年数かの見込みを付けてから決裁に回すと、契約のあとで区分に迷うことが減ります。
施設の側では、起案の書類に、なぜ今か、いくらが妥当か、ほかの方法はないか、しない場合にどうなるか、の4つを書きます。稟議の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。
理事会の資料には、区分と年数の1行を添えます
大きな更新を理事会に上げるときは、傷みや見積の資料に加えて、会計の見込みを1行で添えます。理事の中には、工事の中身より、毎年の収支にどう響くかを気にする人もいます。区分と年数、1年あたりの償却の額が分かると、その質問に先回りできます。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 工事の名前 | 2階・3階の居室の空調の更新(室内機16台・室外機4台) |
| 区分と年数の見込み | 冷房・暖房設備(冷凍機の出力22kW以下)13年 |
| 取得の額の見込み | 約1,200万円 |
| 1年あたりの償却の見込み | 約92万円(13年の定額法の目安) |
| 撤去する設備の帳簿の残り | 約30万円(その年度の処分の損になる見込み) |
| 財源 | 積立金の取り崩し800万円と、その年度の収支400万円 |
会計の見込みは、経理の担当か顧問の会計の専門家に確かめてから書きます。理事会の資料全体の組み立て、たとえば傷みの写真や30年の総額の比べ方は理事会が見るのは見積ではなく、傷み・30年の総額・資金・先送りの4つですにまとめています。
1年あたりの償却の額は、工事の翌年度から毎年、事業活動の費用に出てきます。今ある設備の償却が終わる年と重なれば、費用の総額はあまり変わりません。残りの年数が長い設備を入れ替える年は、処分の損と新しい償却が重なるので、その年度の収支の見込みも一緒に示します。
モデルケース:施設長の決裁で空調を入れ替え、監事に指摘された法人
モデルケース:ケアハウス(定員50名)とグループホーム2ユニットを運営する社会福祉法人
更新の工事が、理事会を待って止まらなくなった
変わったこと(結果)
決裁の流れの表と見積の頼み方を決めた翌年度、空調と給湯の更新3件を、3月の理事会で予算と一緒に決められました。前の年度は、更新の工事が出るたびに次の理事会を待ち、3件のうち2件が1〜2か月止まっていました。監事の監査で、決裁の手続きを指摘されることもなくなりました。
背景と、困っていたこと
この法人では、ケアハウスの空調の更新(約680万円)を、予算の中だからと施設長の決裁で発注していました。けれども、法人の規程では、500万円以上の固定資産の取得は理事会の決議事項でした。監事の監査でこの点を指摘され、施設長は、どの工事を理事会に上げればよいのか分からなくなりました。見積は「空調更新工事 一式」で、経理は区分を決めるために業者に聞き直していました。
決めたこと
法人の本部は、規程の金額の線を、工事の金額と予算の有無で分けた1枚の決裁の表にして、2つの施設に配りました。見積を頼むときは、区分ごとの小計と、機器ごとの行、撤去する機器の一覧を出してもらうことにしました。翌年度に予定する更新は、範囲と上限の額を決め、3月の理事会で予算と一緒に決議する形にしました。
進めてみて分かったこと
迷ったのは、理事会の議題が増え、審議が長くなるのではないかということでした。工事ごとに、区分と年数、1年あたりの償却の額、財源を1行にまとめた一覧を出したところ、3件の審議は20分ほどで終わりました。区分ごとに分かれた見積で、経理が業者に聞き直す手間も減りました。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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施設から本部へは、区分が分かる材料をそろえて渡します
決裁を早く進めるには、施設から本部や経理へ渡す材料をそろえておくことです。経理が区分と年数を決めるのに要るのは、新しい設備の中身と、入れ替える前の設備の情報です。次の5つがそろっていれば、聞き直しはほとんど起きません。
- 区分ごとに分かれた見積区分ごとの小計と、機器ごとの行がある見積。
- 新しい機器の仕様書型番、能力、冷凍機の出力など、区分を決める数字が載ったもの。
- 撤去する機器の一覧と写真場所、型番、製造年。銘板の写真があると確かです。
- 補助を使うかどうか使うなら制度の名前と、交付の決定の見込みの時期。
- 工事の日程完了の月が初年度の償却の額に響くので、見込みの月を伝えます。
撤去する機器の型番や製造年は、機器台帳があればすぐに書けます。台帳の作り方は機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作りますにあります。台帳の行と固定資産の台帳の行を同じ番号でつないでおくと、撤去のたびに経理が帳簿から外す行を探す手間も省けます。
償却と決裁に備えて、平常時にしておくこと
平常時にしておくこと
- 固定資産の台帳と、設備の一覧を照らし合わせておく
- 見積の依頼文に、区分ごとの小計と機器ごとの行を入れる
- 法人の規程の金額の線を、決裁の表にして施設に配る
- 理事会の開催日を、年間の予定に書いておく
- 補助で入れた設備に、印を付けておく
区分ごとに分かれた見積を、同じ形で複数の業者から取りたいときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。工事の場所と中身をお送りいただければ、区分ごとの小計を付けてほしいことも添えて、同じ条件で最大3社に見積を頼めます。相談と見積は無料で、お断りもできます。償却の年数や会計の区分の判定は窓口では行いませんので、経理の担当と、顧問の税理士・会計の専門家にご相談ください。
よくある質問
介護施設の業務用エアコンは、法定耐用年数で何年ですか
建物附属設備の冷暖房設備として、冷凍機の出力が22kW以下なら13年、それを超えるものは15年です。22kWは冷凍機の出力で、カタログの冷房の能力とは別の数字です。仕様書を添えて、経理の担当や税理士に確かめます。
給湯の設備や受水槽の法定耐用年数は、何年ですか
給排水・衛生設備、ガス設備の区分で15年です。給湯器と配管、ポンプ、受水槽などが入ります。法定の年数は会計の年数なので、入れ替えの時期は、使った年数や修理の記録から別に考えます。
自動ドアや火災報知設備の法定耐用年数は、何年ですか
自動ドアは「エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備」の区分で12年です。自動火災報知設備やスプリンクラーは、消火・排煙・災害報知設備の区分で8年です。
建物附属設備と建物は、何が違いますか
建物は柱・壁・床・屋根など建物そのもので、構造と用途で年数が決まります。建物附属設備は、空調や給排水、電気、エレベーターなど、建物に取り付けて働きを支える設備で、設備の区分ごとに年数が決まります。
特殊浴槽は、建物附属設備として償却しますか
取り付け方や使い方で、建物附属設備か器具及び備品かの判断が分かれることがあります。見積で本体と工事を分けてもらい、仕様書を添えて、経理の担当と税理士に確かめます。
償却の途中で設備を入れ替えると、何が起きますか
古い設備の帳簿に残っている額を、その年度に処分の損として費用にします。15年の区分の設備を10年目の終わりに入れ替えると、取得の額のおよそ3分の1が一度に出ます。撤去の日と機器の一覧を経理に渡します。
年度の途中で入れた設備の償却は、どう計算しますか
月割りで計算します。4月始まりの年度で10月に入れた設備なら、その年度は6か月分を償却します。工事が終わる月が初年度の額に響くので、完了の見込みの月を経理に伝えておきます。
社会福祉法人で、修繕の工事を理事会に諮るのはどんなときですか
法人の規程で決めた金額を超える設備の入れ替え(重要な財産の譲受け)、工事のための借入れ(多額の借財)、予算を超える工事の補正予算などです。金額の線は法人ごとに決まっているので、規程を確かめます。
「重要な財産」や「多額の借財」の金額は、どこで決まっていますか
社会福祉法には金額の決まりがなく、法人が事業の中身や規模に応じて、理事会で具体的に決めておくことになっています。理事会の規程や経理規程、定款細則などを確かめます。
見積を設備の区分ごとに分けてもらうには、どう頼めばよいですか
見積を頼むときに、給排水・衛生、空調・換気、電気、消火・防災、昇降機、内装の区分ごとに小計を出し、機器は1台ずつ行を分けてほしいと伝えます。撤去する機器の一覧も、別の行にしてもらいます。
補助金で入れた設備を入れ替えるときは、何に気をつけますか
社会福祉法人では、補助に関わる積立金の取り崩しが会計に関わります。決められた期間の前に処分するときは、補助を受けた県や市の承認が要ることもあるので、入れ替えの計画が決まったら早めに聞きます。
社会福祉法人の会計と税法で、償却の方法は違いますか
社会福祉法人の会計では、有形固定資産を定額法か定率法で償却し、拠点区分ごと・資産の種類ごとに選べます。税法では、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備は定額法です。法人の方針は、会計の専門家に確かめます。
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