介護施設の営繕業務には、7つの領域の仕事が含まれます。建物の外まわり、建物の内まわり、給排水と給湯、電気と通信、空調と換気、法定の点検、防災と安全です。どの領域にも、点検、小さな修理、業者の手配、記録の4種類の仕事があり、表にすると28のマスで全体が見えます。必要な営繕業務とは、28のマスのそれぞれに、職員・営繕担当・業者の誰が担うかが決まっている状態です。営繕担当がいない小さな施設でも、法定の点検の手配と報告書の保管、不具合を報告する流れ、分野ごとの頼み先の一覧は欠かせません。
この記事の結論
- 営繕業務は、7つの領域と、点検・小さな修理・手配・記録の4種類の仕事でできている
- 7つの領域と4種類の仕事を1枚の表にすると、28のマスで全体が見える
- 気づくのは職員、手配は営繕担当か事務長、資格の要る作業と法定の点検は業者が担う
- 法定の点検は、日程・立ち会い・指摘の直し・報告書の保管が施設の仕事
- 小規模な施設は、7つの領域ごとに1つずつの最小限の業務から始める
営繕業務は、7つの領域と4種類の仕事でできています
介護施設の営繕業務は、7つの領域に分かれます。建物の外まわり、建物の内まわり、給排水と給湯、電気と通信、空調と換気、法定の点検、防災と安全です。どの領域にも、点検、小さな修理、業者の手配、記録の4種類の仕事があります。営繕業務とは、この7つの領域で4種類の仕事を回し続けることです。
| 領域 | 含まれる主な場所・設備 |
|---|---|
| 建物の外まわり | 屋根・屋上の防水、外壁、雨どい、門扉・フェンス、通路と駐車場 |
| 建物の内まわり | 床・壁・天井、ドアや引き戸などの建具、手すり、居室の内装 |
| 給排水と給湯 | 受水槽とポンプ、配管、トイレ、浴室と特殊浴槽、給湯器、厨房の排水 |
| 電気と通信 | 受変電設備、分電盤、照明とコンセント、ナースコール、電話・Wi-Fi・見守り機器 |
| 空調と換気 | 業務用エアコン、換気扇、厨房の排気、加湿の設備 |
| 法定の点検 | 消防用設備、建物と建築設備、昇降機、受水槽、電気、フロンなどの、法律で決まった点検 |
| 防災と安全 | 避難経路と非常口、防火戸、非常用の照明と発電機、出入口の見守り、転落や転倒の防止 |
7つの領域に分けるのは、領域ごとに、見る人と頼む先が変わるからです。外壁のひびは防水や外壁の業者、ナースコールの不具合はメーカーや代理店、と頼み先が分かれます。領域で分けておくと、不具合が出たときに、どこに頼めばよいかの見当がすぐにつきます。
営繕という言葉そのものの意味や、修繕・改修・更新といった言葉の違いは営繕は、修繕を含む仕事の全体です。言葉で予算と補助が変わりますで書いています。この記事では、営繕業務に何が含まれるかの範囲を扱います。
7つの領域と4種類の仕事を、1枚の地図にします
営繕業務の全体は、7つの領域を縦に、4種類の仕事を横に並べた表で見ると分かりやすくなります。7×4で28のマスができ、それぞれのマスに、具体的な仕事が入ります。この表が、営繕業務の地図です。介護施設で必要な営繕業務とは、この28のマスが、どれも誰かに受け持たれている状態です。
| 領域 | 点検 | 小さな修理 | 手配 | 記録 |
|---|---|---|---|---|
| 建物の外まわり | 屋上の排水口、外壁のひびや浮き、雨どい | 排水口の落ち葉取り、門扉のねじ締め | 防水・外壁・外構の業者 | 雨漏りの場所と日付、ひびの写真 |
| 建物の内まわり | 床の段差、建具の閉まり、手すりのぐらつき | 建具の調整、手すりのねじ締め | 内装・建具の業者、原状回復の工事 | 居室ごとの修理の履歴 |
| 給排水と給湯 | 水漏れ、詰まり、湯温、特殊浴槽の動き | パッキンやシャワーホースの交換、詰まりの手当て | 設備業者、給湯器と特殊浴槽のメーカー | 詰まりの場所と回数、機器の型番 |
| 電気と通信 | 照明の切れ、分電盤、ナースコールの呼び出し | ランプの交換、ワイヤレスの子機の電池交換 | 電気工事業者、電気の保安の委託先、ナースコールの代理店 | 回路の表、子機の場所の一覧 |
| 空調と換気 | 冷え・暖まり、異音、フィルター、換気扇 | フィルターと換気扇の清掃 | 冷媒を扱う登録のある空調の業者、ダクトの清掃 | 機器ごとの簡易点検と修理の記録 |
| 法定の点検 | 点検の日程と立ち会い | 指摘のうち軽いものの手配 | 点検の会社、指摘を直す工事の見積 | 報告書の控えと、指摘を直した日 |
| 防災と安全 | 避難経路、防火戸の前、非常口の鍵、発電機 | 防火戸の前の片付け、出入口のセンサーの電池交換 | 防災設備の業者、発電機の点検 | 訓練の記録と、発電機の運転の記録 |
表のマスに書いたのは、どの施設にもある仕事の例です。自分の施設の地図では、マスの中に、具体的な設備の名前と、担う人の役を書き込みます。設備が多い施設では、マスに入る仕事が増えます。いっぽう、マスの数は、施設の大きさにかかわらず28のままです。
地図にすると、営繕業務が「壊れたら直す」だけではないことが見えてきます。28のマスのうち、施設が手を動かす小さな修理は7マスで、残りの21マスは、点検と手配と記録です。営繕業務の多くは、壊れる前に気づくことと、頼むことと、残すことでできています。
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建物の外まわりと内まわりで、必要な業務
建物の外まわりは、屋根・屋上、外壁、雨どい、外構です。外まわりの不具合は、大雨が降るまで、あるいは何かが落ちるまで、気づかれにくい領域です。屋上の排水口が落ち葉でふさがると、大雨のときに屋上に水がたまり、雨漏りにつながります。外壁のタイルの浮きは、落ちれば下を通る人にけがをさせます。
建物の内まわりは、床・壁・天井、建具、手すり、居室の内装です。入居者の方と職員が毎日手で触れる所が多く、小さな修理が出やすい領域です。ドアの閉まりが悪いと指を挟む事故につながり、手すりのぐらつきや床の段差は転倒につながります。
| 場所 | 見るところ | 施設でできる手当て | 業者に頼むこと |
|---|---|---|---|
| 屋上・屋根 | 排水口の落ち葉、防水の膨れや破れ | 安全に上がれる所だけ、排水口まわりの落ち葉を取る | 防水の補修、雨漏りの調査 |
| 外壁 | ひび、タイルの浮き、目地の切れ | 写真を撮り、場所と日付を記録する | 浮きの調査、補修、落下の防止 |
| 雨どい・外構 | 雨どいの詰まり、門扉の開閉、通路の段差 | 門扉のねじ締め、段差に目印をつける | 雨どいの交換、舗装の補修 |
| 床・壁・天井 | 床の浮きや段差、壁の穴、天井のしみ | 段差に目印をつけ、通り道を変える | 床材の張り替え、天井裏の水漏れの調査 |
| 建具 | ドアの閉まる速さ、引き戸の重さ、鍵のかかり | ドアクローザーの速さの調整 | 戸車・クローザー・錠の交換 |
| 手すり | ぐらつき、ねじの緩み、端の引っかかり | ねじの締め直し | 下地からの付け直し、新しい設置 |
| 居室の内装 | 退居後の壁・床・建具の傷み | 傷みの写真と一覧を作る | 原状回復の工事 |
天井のしみは、内まわりの不具合に見えて、上の階の配管や屋上の防水が原因のことがあります。しみを見つけたら、日付を書いた写真を撮り、雨の日に広がるかどうかを見ておくと、業者が原因を探しやすくなります。
手すりのぐらつきやドアの閉まりのように、金額の小さい修理は、どこに頼めばよいか迷いやすいものです。小さな修理を当窓口に初めて相談された、事務長の声です。
「こんな小さな修繕でも相談していいのかな」と最初は思いましたが、実際に相談してみると、内容を伝えるだけで話が進むので非常に助かりました。
ご利用者の声 埼玉県内・介護老人保健施設/事務長
取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。
介護施設で多い「ちょっとした修理」の種類と頼める先は「ちょっとした修理」は、職人の種類ごとに束ねて頼みますにまとめています。
給排水と給湯で、必要な業務
給排水と給湯は、水を送る給水、使った水を流す排水、お湯をつくる給湯、浴室の設備の4つでできています。介護施設では、入浴と排泄と食事に水を使い、使う時間も朝と入浴の時間に集まります。止まると暮らしがすぐに止まる領域なので、どこを閉めれば水が止まるかを、職員が知っておくことも業務に入ります。
| 設備 | 見るところ | 施設でできる手当て | 業者に頼むこと |
|---|---|---|---|
| 受水槽・ポンプ | ポンプの音、水槽まわりの水漏れ、警報の表示 | 警報の内容を記録して連絡する | 清掃と検査、ポンプの修理 |
| トイレ・排水 | 流れの悪さ、においの変化、床の水 | ラバーカップで詰まりを解く、止水栓を閉める | 排水管の高圧洗浄、便器や配管の交換 |
| 厨房の排水 | グリーストラップの油、排水のにおい | グリーストラップのかごの清掃 | たまった油の汲み取り、配管の洗浄 |
| 給湯器・貯湯槽 | 湯の温度、エラーの表示、燃え方の音 | エラーの番号を控え、説明書の範囲でリセットする | 部品の交換、本体の更新 |
| 浴室・特殊浴槽 | シャワーの水漏れ、浴槽の上げ下げの動き、異音 | シャワーヘッドやホースの交換 | 特殊浴槽の修理(メーカー・代理店) |
| 配管・水栓 | 水栓のしずく、壁や床のしみ、赤い水 | 簡単な水栓のパッキンの交換 | 配管の補修や更新、漏水の調査 |
受水槽のある施設では、受水槽の清掃と検査も、この領域の業務です。容量によって、水道法や自治体の条例で決まりが変わります。決まりの中身は受水槽は有効容量10㎥を超えると、清掃と検査が1年以内ごとの義務ですにまとめています。
給湯器と特殊浴槽は、型番と製造年、保守の契約先を、機械の近くと事務所の両方に貼っておきます。止まったときに、銘板を見に行かなくても、電話で型番を伝えられます。給湯器がガス会社の持ち物(リース)の場合は、頼み先がガス会社になるので、その旨も書いておきます。
- 止水栓の場所トイレごと、階ごと、建物全体の止水栓の場所を図に書き、職員の目に入る所に貼ります。
- 給湯器のリセットエラーのときに試してよい操作と、試してはいけない操作を、説明書から1枚に書き出します。
- 排水の詰まりやすい所詰まった場所と日付を記録すると、配管の洗浄の時期の目安になります。
電気と通信、空調と換気で、必要な業務
電気と通信は、受変電設備と分電盤、照明とコンセント、非常用の照明、ナースコール、電話・Wi-Fi・見守り機器です。空調と換気は、業務用エアコン、換気扇、厨房の排気です。どちらも、施設でできる手当ては少なく、業者に頼む割合が大きい領域です。
高圧で受電している施設、つまりキュービクルなどの受変電設備がある施設は、電気事業法の自家用電気工作物にあたります。保安規程を定め、電気主任技術者を選ぶか、外部の保安の委託先に点検を任せます。電気の工事の多くは電気工事士の資格が要り、施設でできるのは、ランプの交換のような資格の要らない作業までです。
業務用エアコンや厨房の冷凍冷蔵庫は、フロン排出抑制法で、管理する施設に簡易点検が求められています。簡易点検は、資格がなくても職員ができます。一定の大きさ以上の機器は、資格のある人による定期点検も要ります。
| 設備 | 見るところ | 施設でできる手当て | 業者に頼むこと |
|---|---|---|---|
| 受変電設備・分電盤 | 異音、におい、ブレーカーが落ちた回路 | 落ちた回路と時刻を記録する | 保安の委託先の点検、電気工事 |
| 照明・コンセント | 切れた照明、焦げ跡、ぐらつくコンセント | ランプの交換(器具はそのまま) | 器具やコンセントの交換(電気工事士) |
| 非常用の照明・発電機 | 点灯の試験、発電機の運転の記録 | 試験の立ち会いと記録 | 電池や部品の交換、発電機の点検 |
| ナースコール | 呼び出しと応答、表示の不具合 | ワイヤレスの子機の電池交換、表示の確かめ | 親機や配線の修理(メーカー・代理店) |
| 通信・見守り機器 | Wi-Fiのつながり、見守り機器の通知 | 機器の再起動 | 配線や機器の修理、更新 |
| 業務用エアコン | 冷えない・暖まらない、水漏れ、異音 | フィルターの清掃、フロンの簡易点検 | 修理、冷媒の補充、更新 |
| 換気扇・厨房の排気 | 止まり、吸い込みの弱さ、油汚れ | 外せる部分の清掃 | モーターの交換、ダクトの清掃 |
ナースコールと見守り機器は、止まっても建物の見た目には何も出ません。呼び出しの試験をしない限り、不具合に気づけないことがあります。子機の場所と番号の一覧を作り、試験のたびに、鳴らなかった子機に印を付けます。
電気・空調・ナースコールは、分野ごとに頼む先が違います。分野ごとに強い業者と、確かめる資格や登録は設備修理に強い業者は、分野ごとに別の会社ですで書いています。
法定の点検と、防災と安全で、必要な業務
法定の点検は、法律で点検や検査、報告が決められている業務です。点検そのものは、資格を持つ会社や検査の機関が行うことがほとんどです。施設の仕事は、日程の調整、当日の立ち会い、指摘された不良を直す手配、報告書の保管の4つです。
| 点検 | もとになる法律 | 点検する人 | 施設の仕事 |
|---|---|---|---|
| 消防用設備等の点検 | 消防法 | 消防設備士などの資格者(建物の規模による) | 日程の調整と立ち会い、消防署への報告の控えの保管 |
| 建物と建築設備の定期調査・検査 | 建築基準法第12条 | 建築士や検査員などの資格者 | 対象になるかを確かめ、指摘を直した記録を残す |
| 昇降機の定期検査 | 建築基準法第12条 | 昇降機の検査の資格者 | 検査の時間に使えなくなることを職員に伝える |
| 受水槽の清掃と検査 | 水道法・自治体の条例 | 清掃の業者、登録された検査の機関 | 断水する時間を、職員と厨房に伝える |
| 自家用電気工作物の保安 | 電気事業法 | 電気主任技術者か、保安の委託先 | 停電を伴う点検の日程を決める |
| フロンの点検 | フロン排出抑制法 | 簡易点検は施設、定期点検は資格者 | 機器ごとに点検の記録を保管する |
| 浄化槽の保守点検・清掃・検査 | 浄化槽法 | 保守点検と清掃の業者、指定の検査機関 | 記録を保管する(浄化槽のある施設) |
どの点検が対象になるかは、建物の用途と規模、設備によって変わります。建物と建築設備の定期調査・検査の4つの種類は12条点検は4つに分かれ、防火設備の検査は別に受けますで書いています。点検ごとの周期と報告の期限は、チェックリストの一覧で確かめます。
防災と安全は、火事や地震、停電のときに、入居者の方を守るための業務です。設備の点検は法定の点検と重なりますが、ふだんの暮らしの中でしか守れないことが多くあります。
- 避難経路と非常口廊下や階段、非常口の前に物を置かず、非常口の鍵が中から開くかを見ます。
- 防火戸と防火シャッター閉まる所に、車いすや台車、物品を置かないようにします。
- 非常用の照明と発電機試験に立ち会い、発電機の燃料の量と運転の記録を残します。
- 出入口と窓外へ出る扉のセンサーや、窓の開く幅を止める金具が働くかを見ます。
- 転倒と転落の防止床の段差、濡れやすい床、手すりの切れ目を、見回りで探します。
4種類の仕事を、職員・営繕担当・業者で分けます
営繕業務を担うのは、職員、営繕担当、業者の3者です。営繕担当がいない施設では、事務長や施設長がその役を担います。分け方の基本は、気づくのは職員、手配して記録するのは営繕担当、資格の要る作業と法定の点検は業者です。
| 仕事 | 職員(介護・看護・事務) | 営繕担当・事務長 | 業者 |
|---|---|---|---|
| 点検 | 暮らしの中で、音・水・におい・動きの変化に気づく | 見回りで確かめる。法定の点検に立ち会う | 法定の点検と、保守の点検をする |
| 小さな修理 | ランプの交換や、詰まりの最初の手当て | 建具の調整、ねじ締め、パッキンの交換 | 資格の要る作業、部品の交換 |
| 手配 | 不具合を、決めた担当に報告する | 業者を選び、見積と日程を決める | 部品と職人をそろえる |
| 記録 | 場所・いつから・状態・写真で報告する | 修理の一覧と機器台帳を直す | 点検と工事の報告書を出す |
表の「職員」の列は、人数がいちばん多い人たちの仕事です。営繕担当が1人で見回っても、28のマスのうち「気づく」ところは、職員全員の目がないと埋まりません。職員の仕事は、直すことではなく、気づいて伝えることです。伝える先を1つに決めておきます。
建物を借りて運営している施設では、4つ目の担い手として、建物の持ち主(貸主)がいます。外壁や屋上、建物の設備の一部は、貸主が直す約束になっていることがあります。賃貸借の契約書で修繕の負担の区分を確かめ、地図のマスに「貸主」と書き込みます。
職種ごと・時間帯ごとに、設備の管理の役割を分けた表の作り方は設備の管理は6つの役割に分け、職種と時間帯で受け持ちますにまとめています。外に出せる仕事と、施設に残る仕事の分け方は営繕を丸ごと外注しても、施設に残る仕事がありますにあります。
小規模な施設は、最小限の7つの業務から始めます
グループホーム、小規模多機能、デイサービスのような小規模な施設では、営繕担当がいないことがふつうです。管理者や事務の職員が、介護や事務と兼ねて営繕業務を担います。28のマスをすべて施設で埋めるのは難しいので、7つの領域ごとに1つずつ、最小限の業務から始めます。
| 領域 | 最小限の業務 | 担う人の例 |
|---|---|---|
| 建物の外まわり | 雨漏りやひびに気づいたら、写真と日付を残す | 管理者 |
| 建物の内まわり | 手すりと建具のぐらつきを、気づいた職員が報告する | 職員全員 |
| 給排水と給湯 | 止水栓と給湯器のリセットの場所を、全員が知っておく | 管理者・職員 |
| 電気と通信 | 分電盤の回路の表を貼り、ナースコールの不具合を報告する | 管理者 |
| 空調と換気 | フィルターの清掃と、業務用エアコンの簡易点検の記録 | 職員の当番 |
| 法定の点検 | 点検の会社と日程の一覧を作り、報告書を1か所に保管する | 管理者・事務 |
| 防災と安全 | 避難経路と防火戸の前に、物を置かない | 職員全員 |
小規模な施設では、給湯器や特殊浴槽、エアコンが1台しかないことが多く、止まると代わりがありません。最小限の業務に、分野ごとの頼み先の一覧を加えておくと、止まったときに電話をかける先で迷いません。小規模な施設ならではの設備の事情と頼み先の見つけ方は木造2階の屋根や階段を作り直すなら、2025年4月から確認申請が要りますで書いています。
最小限の7つは、どれも特別な道具や資格の要らないものです。ただし、誰の仕事かを決めておかないと、全員が「誰かがしている」と思って抜けます。表の右の列に、役の名前を書いておきます。
自分の施設の地図は、5つの手順で作ります
営繕業務の地図は、建物の図面と、今いる職員と、今の業者の一覧があれば作れます。はじめから完ぺきな表にする必要はありません。分かる範囲で埋め、空いたマスを見つけることが、地図を作るいちばんの目的です。
- 設備を書き出す竣工図の機器表や、機械の銘板を見て、7つの領域ごとに設備を並べます。機器台帳があれば、それを使います。
- 4種類の仕事を書く設備ごとに、点検・小さな修理・手配・記録で何をするかを1行ずつ書きます。
- 担う人を書き込む職員・営繕担当・業者のどれが担うかを、人の名前ではなく役の名前で書きます。
- 空いたマスを探す誰も書かれていないマスと、業者の名前が古いままのマスに印を付けます。
- 頼み先を決めて貼り出す空いたマスに担う人を決め、業者の連絡先とあわせて1枚にし、事務所に貼ります。
担う人を役の名前で書くのは、人が替わっても地図を使い続けるためです。「田中さん」ではなく「夜勤リーダー」「事務長」と書いておけば、異動や退職のたびに書き直さずに済みます。
設備の書き出しは、機器台帳を作る作業と同じです。台帳の作り方と項目は機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作りますにまとめています。
モデルケース:建物を借りて運営する、介護付有料老人ホーム
モデルケース:定員40名の介護付有料老人ホーム(建物は賃借・開設5年目)
どちらが直すかの問い合わせが、月5件ほどから1件ほどに
変わったこと(結果)
地図に「貸主」の列を加えてから半年で、どちらが直すかを確かめる問い合わせが、月に5件ほどから1件ほどに減りました。不具合に気づいてから業者に頼むまでの日数も、平均4日ほどから1日ほどになりました。地図を作る途中で、誰も受け持っていないマスが6つ見つかり、その月のうちにすべてに担う人を決めました。
背景と、困っていたこと
このホームは、建物を貸主から借りて運営しています。賃貸借の契約書には、修繕の負担の区分が大まかにしか書かれていませんでした。雨どいの外れや給湯器の故障のたびに、施設長が貸主の管理会社に問い合わせ、返事を待つ間、修理が止まりました。給湯器が止まったときは、どちらが費用を持つかが決まらず、3日間、入浴を清拭に替えました。
決めたこと
施設長が迷ったのは、区分を書面にしようと言い出すと、貸主との関係がぎくしゃくしないかという点でした。決め手は、給湯器の件のあと、貸主の管理会社の担当からも「先に決めておきたい」と言われたことです。ホームは、7つの領域と4種類の仕事の地図に「貸主」の列を加え、マスごとに施設・業者・貸主のどれかを書いた案を作りました。この案をもとに貸主と話し、外壁・屋上・受水槽は貸主、建具・照明・エアコンのフィルターは施設、と区分を書面にしました。
進めてみて分かったこと
見つかった6つの空いたマスのうち4つは、業者に頼めば済むものではなく、施設の中で誰が見るかを決めれば埋まるものでした。屋上の排水口の掃除、非常用の照明の試験の記録、エアコンの簡易点検の記録、退居後の居室の傷みの記録です。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
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地図にすると、抜けやすい業務が見えてきます
地図を作ると、多くの施設で、同じような所にマスの空きが見つかります。抜けやすいのは、壊れるまで目に入らない所と、誰かがしていると思われている所です。自分の施設の地図と並べて、印が付いていないかを確かめます。
| 領域 | 抜けやすい業務 | 抜けると起きること |
|---|---|---|
| 建物の外まわり | 屋上の排水口の落ち葉の掃除 | 大雨のときに屋上に水がたまり、雨漏りになる |
| 建物の内まわり | 退居後の居室の傷みの記録 | 原状回復の範囲と費用で、行き違いが起きる |
| 給排水と給湯 | 詰まりやすい排水管の洗浄の手配 | 夜間や休日に、詰まりと逆流が起きる |
| 電気と通信 | 非常用の照明の試験の記録 | 停電のときに点かないことに、気づけない |
| 空調と換気 | 業務用エアコンの簡易点検の記録 | 法令で求められる記録が残らない |
| 法定の点検 | 指摘された不良を直す手配 | 次の点検で、同じ指摘が続く |
| 防災と安全 | 防火戸の前の物の片付け | 火事のときに防火戸が閉まらない |
表の業務は、どれも1回の手間は小さいものです。抜けるのは、手間が大きいからではなく、担う人が決まっていないからです。地図のマスに役の名前が入れば、ほとんどの抜けは埋まります。
マスが埋まったら、それぞれの業務を、どの周期で、どの順番に回すかを決めます。営繕担当の仕事を毎日・毎週・毎月・毎年の周期で並べた表と、修繕の優先順位は営繕の仕事は4つの周期で回り、修繕は安全から順に直しますにまとめています。
地図を古くしないために、平常時にしておくこと
平常時にしておくこと
- 7つの領域ごとに、設備と頼み先を1枚に書き出す
- 4種類の仕事のマスに、担う人を役の名前で書き込む
- 法定の点検の報告書を、1か所にまとめて保管する
- 止水栓・分電盤・給湯器のリセットの場所を、職員に伝える
- 修理や点検のたびに、地図と機器台帳を1行ずつ直す
職員が気づいた不具合を、施設の中で1か所に集める窓口の作り方は修繕の窓口は、外と中の両方を一本にして効果が出ますにあります。
地図の中で、施設では埋められないマスがあるときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。24時間受け付けています(お電話の受付はありません)。どの領域の、どんな仕事に困っているかを伺い、分野ごとの業者の見積を1回のご依頼で最大3社までそろえます。相談と見積は無料で、お断りもできます。法定の点検そのものは、今の点検の会社や保守の契約先にそのまま頼むほうが、日程も記録もつながります。
よくある質問
介護施設の営繕業務には、どんな仕事が含まれますか
介護施設の営繕業務は、7つの領域の、4種類の仕事でできています。7つの領域は、建物の外まわり・内まわり、給排水と給湯、電気と通信、空調と換気、法定の点検、防災と安全です。4種類の仕事は、点検・小さな修理・業者の手配・記録で、表にすると28のマスで全体が見えます。
介護施設で、最低限欠かせない営繕業務は何ですか
最低限欠かせないのは、法定の点検の手配と報告書の保管、不具合に気づいて報告する流れ、分野ごとの頼み先の一覧の3つです。これに、止水栓や分電盤の場所を職員が知っていることと、避難経路や防火戸の前を空けておくことを加えます。
法定の点検は、営繕業務のどこに入りますか
法定の点検は、営繕業務の7つの領域の1つで、点検そのものは資格を持つ会社や検査の機関が行います。施設の仕事は、日程の調整、立ち会い、指摘された不良を直す手配、報告書の保管の4つです。どの点検が対象かは、建物の用途と規模、設備で変わります。
くわしく:チェックリスト
営繕業務は、誰が担当するものですか
営繕業務は、職員・営繕担当・業者の3者で分けて担います。不具合に気づくのは職員、業者を選んで手配し記録するのは営繕担当、資格の要る作業と法定の点検は業者が基本です。営繕担当がいない施設では、事務長や施設長がその役を担います。
営繕担当がいない小さな施設では、誰が営繕業務をしますか
小さな施設では、管理者や事務の職員が、介護や事務と兼ねて営繕業務を担うのがふつうです。7つの領域ごとに1つずつの最小限の業務に絞り、分野ごとの頼み先の一覧を作っておきます。誰の仕事かを役の名前で決めておくと、抜けが起きにくくなります。
職員が気づいた設備の不具合は、誰にどう伝えればよいですか
職員が気づいた不具合は、施設の中で決めた1人の担当に、場所・いつから・どんな状態か・写真の4つで伝えます。伝える先が決まっていないと、同じ修理が二重に頼まれたり、誰にも伝わらなかったりします。夜勤の時間帯の伝え方も、あわせて決めておきます。
営繕業務の一覧は、どう作ればよいですか
営繕業務の一覧は、7つの領域ごとに設備を書き出し、点検・小さな修理・手配・記録の4種類の仕事を表のマスに書き込んで作ります。担う人を役の名前で書き、空いたマスに担当を決めれば一覧になります。機器台帳があると、設備の書き出しが早く済みます。
ナースコールや見守り機器の不具合も、営繕業務に入りますか
ナースコールや見守り機器も、電気と通信の領域の営繕業務に入ります。呼び出しの試験や不具合の報告は施設、親機や配線の修理はメーカーや代理店が担います。止まっても見た目に出ないので、試験で気づく仕組みを作っておきます。
厨房の設備の不具合は、営繕業務ですか
厨房の給排水・ガス・換気・電気は、営繕業務に入ります。給食を外に委託している施設では、調理の機器の修理を誰が受け持つかが、委託の契約で決まっていることがあります。契約を読み、どこまでが委託先かを地図に書き込みます。
外構や駐車場の補修も、営繕業務に入りますか
門扉・フェンス・通路・駐車場・雨どいの補修は、建物の外まわりの領域の営繕業務に入ります。入居者の方や送迎の車が通る所は、段差やくぼみが転倒につながります。気づいたら写真と日付で記録し、目印をつけてから業者に頼みます。
建物を借りている施設でも、営繕業務は施設がするのですか
建物を借りている施設では、営繕業務の一部を貸主が受け持つことがあります。外壁や屋上、建物の設備の一部は貸主が直す約束になっていることがあるので、賃貸借の契約書で修繕の負担の区分を確かめます。区分を営繕業務の地図に書き込んでおくと、故障のたびの問い合わせが減ります。
営繕業務と、清掃や警備などの施設管理の委託は、どう分けますか
営繕業務は建物と設備を使える状態に保つ仕事で、清掃や警備は、ふつう営繕とは別の委託として扱います。ただ、施設管理の委託の中に、設備の点検や小さな修理が含まれていることがあります。委託の契約書で、どこまでが委託先の仕事かを確かめ、営繕業務の地図に書き込みます。
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