介護施設の長期修繕計画は、30年・5年・単年の3つの長さで持つと、作りやすく使いやすくなります。30年の計画は、大きな工事が重なる年(山)と、それに備える積立の額を見るためのものです。5年の計画は、どの年度に何をいくらでするかを決め、予算と補助の準備につなぎます。単年の計画は、今年の工事を動かすためのものです。作る手順は、①建物の部位と設備の台帳を作る、②修繕と更新の周期を当てる、③数量に単価をかけて費用を出す、④年ごとの表に並べて山を見る、の4段です。30年の計画は外れるものなので、5年ごとに見直し、修繕の履歴で支えます。
この記事の結論
- 長期修繕計画は、30年・5年・単年の3つの長さで持つ
- 30年は山と積立を見る、5年は年度を決める、単年は実行する計画
- 作る順は、台帳→周期→単価→年ごとの表の4段
- 30年は5年ごと、5年は毎年、単年は毎月見直す
- 修繕の履歴(いつ・どこを・いくらで)が、見直しの根拠になる
長期修繕計画は、30年・5年・単年の3つの長さで持ちます
介護施設の長期修繕計画は、1枚の30年の表だけでは回りません。30年の表は、遠い先の大きな工事を見るのには向いていますが、今年の予算を組むには粗すぎます。反対に、今年の予算だけを見ていると、10年後に大きな工事が重なることに気づけません。そこで、長さの違う3つの計画を持ち、役割を分けます。
| 計画 | 決めること | 費用の精度 | 見直し |
|---|---|---|---|
| 30年の計画 | 大きな工事が重なる年(山)と、積立の額 | 粗い(幅で持つ) | 5年ごと。大きな変化があればその時 |
| 5年の計画 | どの年度に、何を、いくらでするか | 中くらい(概算見積) | 毎年。1年進めて1年足す |
| 単年の計画 | 今年の工事の月、稟議、発注、立ち会い | 細かい(見積) | 毎月、進み具合を確かめる |
3つの計画は、別々に作るものではありません。30年の表の最初の5年分をくわしくしたものが5年の計画、その最初の1年分をさらにくわしくしたものが単年の計画です。同じ台帳と同じ単価から作るので、数字がつながります。
マンションについて国が示している長期修繕計画のガイドラインでは、計画期間を30年以上で、大規模修繕工事が2回含まれる期間以上としています。5年程度ごとに調査・診断をして見直すことも示されています。介護施設に同じ決まりはありませんが、建物の山を見る長さとして参考になります。
30年の計画を、専門の業者に頼んで作る方法もあります。数量・単価・劣化の程度の精度が上がる分、費用がかかります。頼むときに変わることは長期修繕計画を専門業者に頼むと、3つの数字の精度が変わりますにまとめています。この記事では、施設が自分で作り、自分で回すことを前提に説明します。
作る手順は、台帳・周期・単価・年ごとの表の4段です
長期修繕計画は、次の4段で作ります。1段目で何があるかを書き出し、2段目でいつ直すか、3段目でいくらかかるかを当て、4段目で年ごとに並べます。どの段も、最初から完ぺきにする必要はありません。分かる範囲で埋め、分からないところは「仮」と書いて先に進みます。
4段のうち、いちばん時間がかかるのは1段目の台帳です。図面と現地で、屋上から機械室まで一つずつ確かめるからです。台帳さえできれば、2段目から4段目は表計算のソフトで進められます。
作る人は、事務長か営繕の担当が中心になります。設備の点検をしている保守の会社や、ふだん頼んでいる工事の業者に、周期と単価を聞きながら進めます。1人で全部を抱えると止まりやすいので、台帳は営繕の担当、単価は事務長、というように分けておきます。
最初の版は、主な部位と設備だけでもかまいません。屋上・外壁・内装・空調・給排水・電気・昇降機・防災・介護の専用機器の9つほどの区分から始め、細かいものは見直しのたびに足していきます。
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1段目:建物の部位と設備を、台帳に書き出します
台帳は、計画の土台です。ここに載っていないものは、計画にも予算にも入りません。建物の部位(屋上・外壁・内装など)と、設備(空調・給湯・電気など)を、場所と数量と年式と一緒に書き出します。
| 区分 | 主なもの | 数量の単位 |
|---|---|---|
| 屋上・屋根 | 防水、笠木、排水口(ドレン) | ㎡、m、か所 |
| 外壁 | 塗装、タイル、シーリング(目地)、鉄部 | ㎡、m |
| 内装・建具 | 床、壁、天井、扉、手すり | ㎡、か所 |
| 空調・換気 | 室外機、室内機、換気扇 | 台 |
| 給排水・給湯 | 給湯器、ポンプ、受水槽、配管 | 台、基、m |
| 電気 | 受変電設備、発電機、照明 | 基、台、か所 |
| 昇降機・防災 | エレベーター、火災報知設備、スプリンクラー | 基、台 |
| 介護の専用機器 | 特殊浴槽、ナースコール | 台、式 |
設備は、1台ずつ型番と製造年が分かると、2段目の周期が当てやすくなります。竣工図から拾い出し、現地で1台ずつ確かめ、保守の会社と連絡先を埋める機器台帳の作り方は機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作りますにあります。長期修繕計画には、機器台帳のうち、場所・数量・年式・能力の列を使います。
建物の部位は、図面から面積や長さを拾います。図面がないときは、屋上や外壁の面積を、建物の外まわりの長さと高さから概算してもかまいません。数量のずれは、見積を取るときに業者が測り直すので、計画の段階では大きく外れていなければ足ります。
同じ区分でも、年式が違うものは行を分けます。たとえば空調は、開設のときに入れた台と、あとから入れ替えた台で、次の更新の年が違います。1行にまとめると、更新の年のずれが見えなくなります。
2段目:部位ごとに、修繕の周期と更新の周期を当てます
周期には2つあります。部分的に直す「修繕」の周期と、丸ごと取り替える「更新」の周期です。たとえば空調なら、部品の交換や洗浄が修繕、機器の入れ替えが更新です。台帳の1行ごとに、この2つの周期を当てます。
| 部位・設備 | 周期の置き方 | 周期を決める材料 |
|---|---|---|
| 屋上防水・外壁 | 工法ごとに幅で置く(10〜20年など) | 前回の工事の工法と保証、劣化の調査 |
| 空調・給湯 | 更新の年を幅で置き、台ごとに仮の年を決める | 年式、部品の保有期間、修理の回数 |
| 給排水の配管 | 20〜30年ごろに調査の年を置く | 管の材料、水の色、漏れの回数 |
| 昇降機・受変電 | 部品の交換と、本体の更新を分けて置く | 保守の会社の点検の報告、部品の供給の案内 |
| 特殊浴槽・ナースコール | 更新の年を、部品の保有期間から逆算する | メーカーの案内、故障の回数 |
周期は、1つの数字ではなく幅で持ちます。同じ屋上防水でも、工法や日当たり、前回の工事の出来で、長持ちする年数が変わるからです。国のマンションのガイドラインも、修繕の周期を一定の幅で示す形に見直されています。表の上では、幅の中から仮の1年を選び、点検の結果で前後させます。
会計の決まりである法定の耐用年数は、更新の周期とは別のものです。冷暖房の設備は13年か15年、給排水の設備は15年、昇降機は17年といった年数は、減価償却のための年数です。その年に壊れるという意味ではありません。法定の耐用年数・部品の保有期間・実際の更新の目安の3つを並べた一覧は設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますにあります。
周期を当てるときにいちばん頼りになるのは、自分の施設の記録です。前回の屋上防水が何年前で、どの工法だったか。空調はこの5年で何回止まったか。記録があれば、一般の目安よりも、自分の施設に合った年を置けます。記録がないうちは一般の目安で置き、履歴がたまるごとに直していきます。
3段目:数量に単価をかけ、仮設と割増を足します
費用は、台帳の数量に単価をかけて出します。単価の出どころは、確かな順に、自分の施設の過去の請求書と見積、ふだん頼んでいる業者の概算、一般の目安の3つです。同じ工事を最近した記録があれば、それをいちばんに使います。
| 材料・足すもの | 中身 | 使い方 |
|---|---|---|
| 過去の請求書・見積 | 同じ工事の、施設での実際の金額 | いちばん確か。古いものは今の単価に直す |
| 業者の概算 | 台帳の数量を伝えて出してもらう金額 | 大きな工事は2〜3社から |
| 一般の目安 | 公表されている費用の幅 | 記録も概算もないときの仮の数字 |
| 仮設・養生・時間帯の割増 | 入居者の方がいる中の工事でかかる分 | 総額の2割〜4割になることがある |
| 設計・監理の費用 | 大きな改修で、設計と工事の確かめを頼む分 | 外壁や屋上など大きな工事で足す |
| 物価の変化 | 材料と人の手間の値上がり | 今の単価で作り、見直しのたびに直す |
当窓口の目安では、業務用の給湯器の交換は1台80万〜400万円、エアコンの交換は1台20万〜60万円です。特殊浴槽の入替は350万〜1,100万円、屋上防水の改修は500万〜3,000万円、外壁の塗装・補修は800万〜3,000万円です。どれも、建物の規模や地域、時期、傷みの程度で大きく変わります。こうした幅のある目安は、記録も概算もないときの仮の数字として使い、見積を取ったら置き換えます。
入居者の方が暮らしている中の工事では、仮設・養生・時間帯の割増が総額の2割〜4割になることがあります。この分を入れ忘れると、計画の費用が実際より小さく出て、山の高さを見誤ります。中身と確かめ方は仮設・養生・割増の割合は、施設が渡す条件で変わりますにあります。
物価の上がり方を何%と決めて足していく作り方もありますが、根拠のある率を置くのはむずかしいものです。今の単価で作り、5年の計画は毎年、30年の計画は5年ごとに単価を直すほうが、説明もしやすくなります。
4段目:30年分を年ごとの表に並べ、山を見ます
最後に、台帳の1行ごとに、周期で当てた年に費用を置いていきます。横に30年分の列、縦に部位と設備の行を並べ、いちばん下に年ごとの合計を出します。合計の行を見ると、大きな工事が重なる年、つまり山が見えてきます。
| 部位・設備 | 11〜15年目 | 16〜20年目 | 21〜25年目 | 26〜30年目 | 31〜40年目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 屋上防水 | ○補修 | ●改修 | — | ○補修 | ●改修 |
| 外壁・シーリング | ●シーリング | — | ○補修 | ●外壁の改修 | ○補修 |
| 空調 | ●更新 | — | — | ●更新 | — |
| 給湯・特殊浴槽 | ●更新 | — | — | ●更新 | — |
| 給排水の配管 | — | — | ○調査 | ●更新 | — |
| エレベーター | — | — | ○部品の交換 | ●更新 | — |
この例では、26〜30年目に、外壁の改修、空調と給湯の2回目の更新、配管とエレベーターの更新が重なっています。これが山です。山の年に一度に払うのはむずかしいので、山が来る前から積み立てるか、工事の年をずらして山を低くします。周期は施設ごとに違うので、表の年は例として見てください。
ずらしてよい工事と、ずらせない工事があります。雨漏りにつながる屋上防水や、止まると入居者の方の暮らしに響く給湯は、先に延ばしにくい工事です。反対に、配管は調査で状態を確かめてから時期を決められますし、空調は台数を数年に分けて更新できます。足場を組む外壁と屋上は、同じ年にまとめると足場の費用が1回で済みます。
山の年と高さが分かれば、年あたりいくら積み立てればよいかの見当がつきます。30年の総額を30で割った額が、ならしたときの1年あたりの目安です。積立の会計の扱いは法人の形で違うので、顧問の会計事務所に確かめます。
30年の計画は外れます。それでも作る理由があります
30年の計画は、まず当たりません。作った人のせいではなく、30年の間に、計画の前提が何度も変わるからです。外れる理由を先に知っておくと、外れたときに計画を捨てずに、直して使い続けられます。
| 外れる理由 | 例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 単価が変わる | 材料や人の手間の値上がり | 見直しのたびに今の単価に直す |
| 傷み方が違う | 日当たり、海からの風、使う時間の長さ | 点検の結果で周期を前後させる |
| 使い方が変わる | 定員やサービスの変更、居室の改修 | 変わった時に台帳から直す |
| 法令や制度が変わる | 点検の決まり、補助の制度、冷媒の扱い | 変わった項目だけ足す |
| 急な故障が起きる | 更新の前に止まり、前倒しになる | 単年の予算に枠を置き、履歴に残す |
| 機器が変わる | 省エネの機器、部品の供給の終わり | 更新の時に次の周期を置き直す |
それでも30年の計画を作るのは、5年や単年の計画では見えないものがあるからです。いちばん大きいのは、山の年です。外壁と空調と配管が同じ時期に来ることは、5年の表には映りません。気づいたときには山が5年の中に入っていて、積み立てが間に合わない、ということになります。
建て替えか、大きな改修を続けるかを考えるときも、30年の表が材料になります。残りの年数に見合わない大きな工事を避けたり、建て替えの時期の前に重い更新を入れないようにしたりできます。建て替えの時期の考え方は建て替えの時期は、築年数より耐震・設備の基準・配管で決まりますにあります。
理事会や本部に、先の大きな出費を説明するときも、30年の表があると話が早く進みます。表の全部を見せるより、山の年と高さ、積立の額、しない場合に起きることを1枚にまとめるほうが伝わります。説明の資料の組み立ては理事会が見るのは見積ではなく、傷み・30年の総額・資金・先送りの4つですが参考になります。
5年の計画で、どの年度に何をするかを決めます
5年の計画は、30年の表の最初の5年分を、工事ごとの行に分けてくわしくしたものです。ここでは、どの年度に、何を、いくらでするかを決めます。費用は、大きな工事なら業者の概算、小さな工事なら過去の記録の単価を使い、30年の表より一段細かくします。
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 工事の名前と場所 | 例:2階東側の空調の更新(室外機3台) |
| 年度と費用 | 5つの年度の列に、概算の費用を置く |
| 急ぐ度合い | A:止まると暮らしに響く、B:数年は待てる、C:様子を見る |
| 補助を使うか | 使う制度の見当と、調査に名乗り出る年 |
| 入居者の方への影響 | 工事の音・期間・居室の移動の有無 |
| 会計の区分の見込み | 修繕費か、資産として計上する工事か |
5年の計画は、毎年見直します。1年進んだら、終わった年を外して、5年目の年を新しく足します。そのたびに、点検の報告や新しく取った見積で、費用と年度を直します。翌年度の予算は、この表の1年目の列から作ります。予算をいつから組み始めるかは修繕の予算は、前の年の秋から3つの区分で組みますにまとめています。
補助を使いたい工事は、5年の計画の中で早めに印をつけておきます。補助の多くは工事の前の年に県の調査があるので、工事の年の1年前には、見積と写真をそろえておく必要があります。令和9年度の補助に向けた準備の例は令和9年度の修繕の補助は、まず県の調査が済んだかを確かめますにあります。
急ぐ度合いをA・B・Cに分けておくと、予算が足りないときに、何を先に延ばすかの話が早く進みます。Aは止まると入居者の方の暮らしや安全に響くもの、Bは数年は待てるもの、Cは点検で様子を見るものです。会計の区分の見込みは、顧問の会計事務所と相談して書きます。
単年の計画で、今年の工事を動かします
単年の計画は、今年度の工事を、月ごとの段取りに落としたものです。いつ見積を取り、いつ稟議を通し、いつ発注して、いつ工事をするかを決めます。費用は、見積の金額を使います。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 見積を取る時期 | 工事の3か月前までに、2〜3社から |
| 稟議と決裁の時期 | 見積がそろった翌月の会議で |
| 工事の月 | 空調は暑さ寒さの前、外壁は雨の少ない時期 |
| 入居者の方とご家族への案内 | 工事の2週間前までに知らせる |
| 立ち会いと検査 | 誰が立ち会い、何を確かめて受け取るか |
| 突発の修理の枠 | 前の3年の突発の修理の実績から置く |
工事の月は、入居者の方の暮らしから決めます。空調の更新は、冷房も暖房も使わない春や秋に。外壁や屋上は、雨の少ない時期に。浴室の工事は、入浴の予定を組み替えられる時期に。施設の行事や、職員の休みが重なる月も避けます。
単年の計画には、突発の修理の枠も入れておきます。止まった空調の修理や、詰まった排水の手当ては、計画には書けません。前の3年の突発の修理の実績を合計して、1年あたりの額を枠として置くと、年度の途中で予算が足りなくなることが減ります。稟議の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにあります。
単年の計画は、毎月の会議などで進み具合を確かめます。見積が遅れている、業者の日程が取れない、といったずれは、早く気づけば工事の月の入れ替えで吸収できます。
3つの計画は、見直しの頻度でつなぎます
3つの計画は、見直しの頻度が違います。単年は毎月、5年は毎年、30年は5年ごとに見直します。見直しの材料は、どの計画でも同じで、点検の報告、新しい見積、そして修繕の履歴です。
5年ごとの見直しでは、台帳に新しく入った設備を足し、周期を点検の結果と履歴で直し、単価を今のものに入れ替えます。30年の終わりの年も、5年先に延ばします。こうして、いつ見ても、その先の30年が見える状態を保ちます。
5年を待たずに見直すのは、前提が大きく変わったときです。たとえば、大きな設備が予定より早く止まり、前倒しで更新したとき。定員や使い方が変わったとき。法令の改正で、点検や工事が増えたとき。こうしたときは、その時点で30年の表も直します。
見直しの担当と時期は、年間の予定に書いておきます。たとえば、5年の計画は毎年秋の予算づくりの前、30年の計画は5年ごとの決まった年の夏、と決めておきます。そうすれば、担当が替わっても続きます。
修繕の履歴が、計画を支えます
計画を見直すたびに頼りになるのが、修繕の履歴です。いつ、どこを、何で、いくらかけて直したか。この記録が、次の周期と単価の根拠になります。履歴がないと、見直しのたびに一般の目安に戻ってしまい、計画が自分の施設に近づきません。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日付と場所 | 2026年7月、3階浴室 |
| 部位と、修繕か更新か | 特殊浴槽、修繕(ポンプの交換) |
| 原因と内容 | 異音。ポンプの軸のすり減りで交換 |
| 費用と業者 | 18万円、保守の会社 |
| 保証の期限 | 部品の保証1年(2027年7月まで) |
| 写真と書類の置き場 | 前・後の写真、報告書、請求書のファイル名 |
履歴は、1件を1行にして、表計算のソフトに積み上げていくのが続けやすい形です。台帳の行と同じ番号を振っておくと、ある設備のこれまでの修理を一度に並べられます。修理の回数が増えてきた設備は、更新の年を前に寄せる材料になります。
写真は、工事の前・最中・後の3枚を残します。とくに、壁の中や天井の裏、床下など、工事が終わると見えなくなる場所の写真は、次の工事のときに役に立ちます。報告書・見積・契約書・請求書・保証書・完成図は、履歴の行から探せるように、ファイル名を決めて保管します。工事の保証を部位ごとに管理するやり方は工事の保証は、3つに分けて部位ごとに控えますにあります。
会計の書類には法令や法人の規程で保存の期間がありますが、修繕の履歴は、建物を使い続ける間は残します。30年前の屋上防水の工法が分かるかどうかで、次の工事の見積の精度が変わるからです。履歴の費用を年ごとに集計すると、修繕費が増えた理由も読み取れます。読み方は介護施設の修繕費は、相場より5年分の実績で読みますにまとめています。
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モデルケース:書棚にしまわれていた30年の計画を、作り直した有料老人ホーム
モデルケース:定員60名の介護付有料老人ホーム(築16年)
年度の途中の追加の予算の申請が、年3回から1回に
変わったこと(結果)
30年の計画を直し、5年と単年の計画に落としたことで、年度の途中で本社に追加の予算を申請する回数が、年3回から1回に減りました。翌年度の修繕の予算づくりも、事務長が2週間ほどかけていたのが、5年の計画の1年目の列を見積で直すだけになり、3日ほどで済むようになりました。
背景と、困っていたこと
このホームには、開設の5年目に外部の会社が作った30年の計画書がありましたが、その後は一度も見直されず、書棚にしまわれていました。計画では築12年に外壁の改修となっていましたが、築16年の今も外壁の傷みは少ないままでした。反対に、計画では先だった空調が、2年続けて夏に止まっていました。事務長は、外れた計画は使えないと考え、毎年の予算を、その年に出た不具合から積み上げていました。
決めたこと
事務長は、計画を捨てずに直すことにしました。外部に頼み直すかどうかで迷いましたが、まず自分たちで直し、5年後の見直しのときに専門の業者に頼むかを決めることにしました。過去5年の請求書から修繕の履歴を作り、点検の報告書と合わせて、周期と単価を置き直しました。外壁は劣化の調査の結果で改修を4年後ろにずらし、空調は年式の古い順に3年に分けて更新する形にしました。突発の修理の枠は、過去3年の実績から置きました。
進めてみて分かったこと
外れていたのは主に周期と単価で、部位と設備の一覧は、ほとんどそのまま使えました。単価は、一般の目安より、自分のホームの請求書のほうが、本社への説明の根拠として通りやすいことも分かりました。
このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。
計画を回し続けるために、平常時にしておくこと
計画のために、ふだんからしておくこと
- 台帳に、新しく入れた設備と撤去した設備を書き足す
- 修理や工事のたびに、履歴に1行を足す
- 点検の報告書の指摘を、5年の計画の表に書き写す
- 毎年秋に、5年の計画を1年進める
- 5年ごとに、30年の計画の周期と単価を直す
長期修繕計画に関わる記事は長期修繕計画にまとめています。
計画に入れる工事の費用を、今の単価で確かめたいときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。工事の場所と台帳の行をお送りいただければ、最大3社に同じ条件で見積を頼めます。相談と見積は無料で、お断りもできます。30年の計画そのものを作る仕事は、専門の業者に頼むほうが向いている場合もあります。
よくある質問
介護施設の長期修繕計画は、何年分を作ればよいですか
30年分を基本に、5年と単年の計画を組み合わせて持ちます。マンションについて国が示すガイドラインも、計画期間を30年以上で、大規模修繕工事が2回含まれる期間以上としています。30年は山を見るため、5年と単年は予算と実行のために使います。
長期修繕計画は、施設の職員だけで作れますか
作れます。台帳と過去の請求書があれば、最初の版は職員で作れます。数量や劣化の程度の精度を上げたいときは、専門の業者に頼む方法もあります。
30年先の修繕費は、計画しても当たらないのではありませんか
当たりません。30年の計画は、金額を当てるためではなく、大きな工事が重なる年と、積み立てる額を見るために作ります。5年ごとに単価と周期を直して、少しずつ近づけます。
長期修繕計画に、物価の上昇はどう入れますか
今の単価で作り、見直しのたびに単価を直すのが扱いやすい方法です。上がり方の率を置いて足す方法もありますが、根拠のある率を決めるのはむずかしく、説明もしにくくなります。
長期修繕計画に置く修繕の周期は、何を根拠にしますか
メーカーの資料、点検の報告書、自分の施設の修繕の履歴を見て、幅で決めます。法定の耐用年数は会計のための年数で、更新の周期とは別のものです。
5年の修繕計画と単年の修繕計画は、何が違いますか
5年の計画は、どの年度に何をいくらでするかを決める表で、毎年1年ずつ進めます。単年の計画は、今年の工事を、見積・稟議・発注・工事の月ごとの段取りに落としたものです。
長期修繕計画の見直しは、どのくらいの頻度でしますか
30年の計画は5年ごと、5年の計画は毎年、単年の計画は毎月見直すのが目安です。大きな故障や定員の変更など、前提が変わったときは5年を待たずに直します。
修繕の費用が集中する年は、どう扱えばよいですか
急がない工事を前後にずらすか、台数を数年に分けて山を低くします。足場を組む外壁と屋上は同じ年にまとめると、足場の費用が1回で済みます。ならしきれない分は、前もって積み立てて備えます。
突然の故障の修理は、長期修繕計画にどう入れますか
個別の故障は書けないので、前の3年の突発の修理の実績から、1年あたりの枠を単年の計画に置きます。止まった設備は履歴に残し、更新の年を前に寄せるかを次の見直しで考えます。
修繕の履歴は、どこまで細かく残せばよいですか
1件を1行にして、日付・場所・内容・費用・業者・保証の期限と、写真や報告書の置き場を書けば足ります。台帳の行と同じ番号を振ると、設備ごとの修理の回数が一度に分かります。
長期修繕計画を理事会に説明するときは、何を見せればよいですか
30年の表の全部より、山の年と高さ、積み立てる額、しない場合に起きることを1枚にまとめて見せます。5年の計画の1年目が、翌年度の予算の案になっていることも示します。
建て替えを考えている施設でも、長期修繕計画は要りますか
要ります。建て替えまでの年数で計画の範囲を決めると、残りの年数に見合わない大きな工事を避けられます。建て替えまでの間に止められない設備の更新も、計画に入れておきます。
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