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業者の探し方・選び方

リフォームの失敗で多いのは、
使う人を入れない仕様の決め方です

新しくした浴室の手すりが、介助の邪魔になる。段差をなくした床に、水がたまる。介護施設のリフォームでは、工事はきれいに終わったのに、使い始めてから困ることがあります。その原因は、施工の腕より、工事の前の決め方にあることが少なくありません。この記事では、リフォームの失敗を6つの型に分け、とくに多い仕様の決め方の失敗を、使う職員と入居者の方の確かめで防ぐ方法をまとめました。

構成:介護施設 修繕の窓口監修:鈴木貴行(介護施設営繕・修繕専門家)更新:読む時間:約21分

この記事が答える質問介護施設のリフォームで、よくある失敗は?失敗しないためには、仕様をどう決めればいい?

介護施設のリフォームの失敗は、6つの型に分けられます。仕様、見積と業者選び、工程と準備、決め方、基準と手続き、引き渡しと記録の失敗です。とくに多いのは仕様の失敗で、手すりの位置、扉の形、床の材料、トイレの向きなどを、使う職員と入居者の方に確かめずに決めてしまうことです。施設が決めた仕様どおりに作られたものは、あとから業者の責任で直してもらうのが難しくなります。防ぐには、使う場面を書き出し、介助する職員と使う入居者の方に、実物や原寸の印で試してもらってから仕様を決めます。

この記事の結論

  1. リフォームの失敗は、仕様・見積と業者選び・工程と準備・決め方・基準と手続き・引き渡しと記録の6つの型に分かれる
  2. とくに多いのは、使う職員と入居者の方に確かめずに仕様を決める失敗
  3. 施設が決めた仕様どおりに作られたものは、業者の責任で直してもらうのが難しい
  4. 使う場面を書き出し、実物と原寸で試し、寸法と向きを数字で書いてから決める
  5. 使い始めてから気づいた不具合は、仕様と違う作りかを見分けて、すぐ書面で知らせる

リフォームの失敗は、6つの型に分かれます

介護施設のリフォームの失敗は、起きる時期と原因で、6つの型に分けられます。仕様、見積と業者選び、工程と準備、決め方、基準と手続き、引き渡しと記録の6つです。型が分かると、どの時期に誰が何を確かめれば防げるかが見えてきます。

介護施設のリフォームの失敗の6つの型
型よくある例防ぐ時期防ぐ要点
仕様手すりが介助の邪魔になる。滑りにくい床で車いすが重い見積の前使う職員と入居者の方に試してもらってから決める
見積と業者選び一式の見積で範囲が違う。撤去や養生が抜けている見積を頼むとき同じ仕様書と施設の条件を各社に渡す
工程と準備入浴の日と工事が重なる。部材の納期で工期が延びる契約の前工程を暮らしの予定と重ね、止まる設備の代わりを決める
決め方誰が仕様を変えたか分からない。承認の前に発注した着工の前と工事中決める人と、変更の書面の残し方を決める
基準と手続き設備の基準に合わない。補助の交付の決定の前に着工した計画のとき基準・建築の手続き・消防・補助を先に確かめる
引き渡しと記録使い方が伝わらない。保証書と図面が残っていない引き渡しのとき使う人と仕上がりを確かめ、書類を受け取る
6つのうち、とくに多いのが仕様の失敗。リフォームの失敗の6つの型仕様見積と業者選び工程と準備決め方基準と手続き引き渡しと記録
図1 6つのうち、とくに多いのが仕様の失敗。

6つのうち、見積と業者選び、工程と準備は、施設と業者の間の条件のずれから起きます。決め方、基準と手続き、引き渡しと記録は、施設の中の段取りから起きます。仕様の失敗は、その両方にまたがり、工事が終わってから毎日の使いにくさとして表れます。

どの型も、工事の腕の良し悪しとは別のところで起きます。腕のよい業者に頼んでも、仕様や条件の決め方が抜けていれば、失敗は防げません。業者選びと同じくらい、施設の側の決め方が結果を左右します。

6つのうち、とくに多いのは仕様の失敗です

6つの型のうち、とくに多いのが仕様の失敗です。手すりの位置、扉の形、床の材料、トイレの向き、洗面台の高さなどを、使う職員と入居者の方に確かめずに決めてしまう失敗です。工事はきれいに終わっても、使い始めてから毎日の不便として表れます。

決める人と使う人が違うことが、仕様の失敗の元になる。仕様を決める人と、使う人決める人使う人事務長・施設長業者・設計者カタログと見積で見る介助する職員入居者の方毎日の動きの中で使う使う人が決める場にいないと、ずれに気づけない
図2 決める人と使う人が違うことが、仕様の失敗の元になる。

仕様の失敗が多いのは、決める人と使う人が違うからです。仕様を決めるのは、事務長や施設長と業者で、カタログや見積を見ながら決めます。使うのは、介助する職員と入居者の方で、毎日の動きの中で使います。決める場に使う人がいないと、介助の立ち位置や、体の状態による違いが抜け落ちます。

仕様の失敗が出やすい所と、抜けていた確かめ
場所起きたこと抜けていた確かめ
浴室とトイレの介助の場所介助する職員が立つ場所がなく、体をひねって介助する介助する職員の立ち位置と、2人で介助する場面
洗面台車いすで膝が入らず、横向きでしか使えない車いすの方が、正面から使えるか
照明日中はよいが、夜は足元が暗い。まぶしくて目を覚ます夜勤の職員から見た、夜の明るさ
収納と棚高すぎて職員しか届かない。物の置き場が足りない入居者の方が自分で使う物と、その高さ
汚物の処理と掃除床と壁の継ぎ目に汚れがたまり、掃除に時間がかかる清掃の担当と、感染症への備えの目線
設備の操作給湯のパネルや換気のスイッチが分かりにくい使う職員が、迷わずに操作できるか

仕様の失敗は、あとから直すのが難しい失敗でもあります。民法では、注文した側の指図によって生じた不具合について、業者の責任を問えません。業者がその指図が不適当だと知りながら告げなかった場合は別です(民法第636条)。施設が決めた仕様どおりに作られていれば、それは契約どおりの工事で、直すには施設の負担でもう一度工事をすることになります。

入居者の方がいる中の工事に慣れた業者は、使いにくくなりそうな仕様に気づくと、着工の前に知らせてくれます。とはいえ、施設の介助の仕方や、入居者の方一人ひとりの体の状態までは、業者には分かりません。そこを確かめられるのは、施設の側だけです。

相談・見積は無料|お断り可・理由は不要

使う人を、仕様を決める場に入れます

仕様の失敗を防ぐには、使う人を、仕様を決める場に入れます。最後に決めるのは施設長や事務長のままでかまいません。決める前に、使う人に確かめる段を1つ入れるだけで、抜け落ちる確かめが大きく減ります。

仕様を決める場に入れる人と、確かめること
入れる人確かめること確かめ方
介助する職員(日中)介助の立ち位置、2人で介助する場面、車いすやリフトの動き原寸の印の上で、ふだんの介助を再現する
夜勤の職員夜の明るさと音、ナースコールの位置、夜のトイレへの動き夜の時間に、仮の照明で明るさを見る
看護職員感染症への備え、医療機器の置き場所とコンセント図面に、機器と電源の位置を書き込む
機能訓練の職員手すりの高さと位置、歩行器や杖で動けるか仮の手すりを当てて、高さを決める
清掃の担当掃除のしやすさ、汚れのたまりやすい継ぎ目床材と壁材の見本を、実際に拭いてみる
入居者の方自分で使う物の高さ、扉の重さ、座ったときの姿勢体の状態の違う数人に、実物で試してもらう

入居者の方に確かめるときは、体の状態の違う数人に試してもらいます。車いすの方、歩行器の方、片まひのある方では、使いやすい位置や向きが違います。今の入居者の方だけでなく、これから入る方の体の状態も見込んで、1つの仕様で足りるか、場所ごとに分けるかを決めます。

食堂や居間のように、配膳や移動の動線が仕様を左右する場所もあります。介護施設の食堂の改修のレイアウトは食堂の改修は、配膳・車椅子・見守りの3つの動線から描きますにまとめています。

仕様は、実物と原寸で試してから決めます

使う人に確かめるときは、カタログや図面を見せるだけでなく、実物と原寸で試してもらいます。図面の上では十分に見える広さも、車いすと職員2人が入ると足りないことがあります。試すのは、仕様を決める前、見積を頼む前です。

試す段を、見積を頼む前に入れる。仕様を決めるまでの流れ1. 使う場面を書き出す2. 候補を2〜3つに絞る3. 実物と原寸で試す(使う職員と入居者の方)4. 寸法と向きを図面と仕様書に書く5. 使う人の確かめを経て決める
図3 試す段を、見積を頼む前に入れる。
使う場面の書き出し方の例
場面誰がどう動くか仕様に効くこと
トイレの介助車いすの方と職員1人車いすから便座へ移り、職員は横で支える便器の向き、手すりの側、介助の場所の広さ
夜のトイレ歩行器の方と夜勤の職員暗い中、居室から歩いてトイレへ向かう足元の明るさ、扉の開き方、床の段差
入浴の介助座ったまま入る方と職員2人脱衣所から浴室へ移り、2人で支える浴室の広さ、手すりの位置、床の滑りにくさ
居室の出入り車いすを自分で動かす方扉を開け、車いすのまま出入りする扉の形と重さ、取っ手の位置
毎日の掃除清掃の担当床と壁を拭き、汚れを落とす床と壁の継ぎ目、材料の拭きやすさ

試し方は、場所と予算で選びます。ショールームで実物を試す、床にテープで原寸の印を描く、手すりを仮に当てて高さを決める、などの方法があります。床材は、見本を濡らして、滑りやすさと車いすの動かしやすさを確かめます。どれも、工事のやり直しに比べれば小さな手間で済みます。

試した結果は、寸法と位置を図面と仕様書に書き込みます。「使いやすい高さ」のような言葉ではなく、「床から〇cm」「便器の左側」と数字と向きで書きます。そうすれば、業者によって受け取り方が変わりません。

見積と業者選びの失敗は、条件のずれから起きます

見積と業者選びの失敗の多くは、各社が別々の条件で見積もっていることから起きます。仕様書がないまま現地を見て見積もると、各社が思い描く工事の範囲が少しずつ違います。安く見えた見積に、撤去や処分、養生が抜けていた、ということも起きます。

見積と業者選びの失敗と、防ぎ方
失敗起きる理由防ぎ方
一式の見積で、範囲が違った何が含まれるかが書かれていない一式の行の内訳と、数量を出してもらう
安い見積に、撤去・処分・養生が抜けていた各社が見積もる範囲を、別々に決めた同じ仕様書と範囲を、各社に渡す
各社が違う製品で見積もった仕様が「同等品」など、ぼかしてある型番か、求める性能を書いて渡す
工事中に追加の費用が重なった見えない部分の傷みの扱いを決めていない追加になりうる所と、そのときの決め方を先に聞く
入居者がいる中の段取りが組めなかった介護施設の工事に慣れていなかった居ながら工事の段取りを、見積の前に聞く

見積は、同じ条件で頼んではじめて比べられます。見積を比較表にする前の、条件のそろえ方は見積の比較表は、条件書で6つをそろえてから作りますにまとめています。修繕業者を選ぶときの注意点は着工後のトラブルは、契約の前の3つの場面に表れますで書いています。

安さだけで選ぶと、仕様の確かめに付き合ってくれる業者を逃すことがあります。見積の金額と一緒に、使う人の確かめや原寸での試しに、どれだけ手を貸してくれるかも比べます。

工程と準備の失敗は、暮らしの予定と重ねないことから起きます

工程と準備の失敗は、工事の予定を、施設の暮らしの予定と重ねずに組むことから起きます。入浴の日に浴室の近くで音の出る作業が入る、行事の日に搬入が重なる、居室を移る先が決まっていない、といったことです。部材の納期や、止まる設備の代わりの準備も抜けやすいところです。

工程と準備の失敗と、防ぎ方
失敗防ぎ方
入浴や食事の時間と、音の出る作業が重なった週の入浴の予定と食事の時間を、工程表に書き入れて渡す
行事や面会の多い日に、搬入が重なった行事の日と、面会が多い曜日を先に伝える
居室を移る先が、着工の直前まで決まらなかった移る方と移る先を、着工の1か月前までに決める
部材の納期が遅れて、工期が延びた納期のかかる部材を発注する日を、工程表に入れる
止まる設備の代わりが、用意されていなかった止まる設備の一覧と、その間の代わりを決める
完了の日に、使い方の説明の時間がなかった引き渡しの日に、職員への説明の時間をとる

部材の納期は、製品によっては数週間から数か月かかることがあります。浴槽や便器、建具などは、仕様を決めるのが遅れると、そのまま着工が遅れます。仕様を早く決めることは、工程の失敗を防ぐことにもつながります。

入居者の方が暮らしたまま進める工事の工程表の組み方と、予定と実際の差が出やすい所は居ながら工事の工程表は、工事と暮らしの予定を重ねて作りますにまとめています。

決め方の失敗は、誰が何を決めたかが曖昧なときに起きます

決め方の失敗は、施設の中で、誰が何を決めたかが曖昧なときに起きます。現場で職員が業者に口頭で仕様の変更を頼み、あとで追加の費用になる。承認の前に担当者が発注してしまう。担当者が替わり、なぜその仕様にしたのかが分からなくなる。どれも、決める人と残す書面を先に決めておけば防げます。

決める人と、残す書面
決めること決める人残す書面
工事をするかどうか施設長、法人の本部や理事会稟議書や議事録
仕様施設長や事務長(使う人の確かめを経て)図面と仕様書、使う人の確かめの記録
業者施設長や事務長見積の比較表と、選んだ理由
工事中の変更施設の担当者(金額の上限を決めておく)変更の内容と、費用・工期の差を書いた書面
引き渡し施設の担当者と、使う職員完了の確かめの記録と、手直しの一覧

工事中の変更は、とくにもめごとになりやすいところです。職員が現場で「ここも直して」と頼むと、業者は善意で応じ、あとで追加の費用として請求されることがあります。変更は施設の担当者を通すこと、一定の金額を超える変更は施設長の承認を取ることを、着工の前に職員と業者の両方に伝えておきます。修繕の稟議書の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。

直すか、替えるかの判断も、決め方の失敗が起きやすいところです。まだ直せるものを替えてしまうことも、替えどきを過ぎたものを直し続けることもあります。判断の材料を業者から受け取り、施設長と相談して決める流れを作っておきます。

施設側としては、修理で済むのか、交換したほうがいいのか判断しづらかったのですが、必要な対応について説明してもらえたので、施設長とも相談しながら進めることができました。

ご利用者の声 東京都内・介護施設/事務長

取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。

基準と手続きの失敗は、計画のときの確かめで防げます

基準と手続きの失敗は、工事の前に確かめることを知らずに進めてしまうことから起きます。どれも、工事が終わってから気づくと、やり直しや補助の取り消しにつながります。計画のときに、次の4つを確かめます。

4つとも、見積を頼む前の計画のときに確かめる。工事の前に確かめる4つの手続き設備の基準居室の面積や廊下の幅を変えるか建築の手続き大規模な修繕・模様替にあたるか消防感知器や避難の経路が変わるか補助金交付の決定の前に契約しないか
図4 4つとも、見積を頼む前の計画のときに確かめる。
  1. 設備の基準居室の数や面積、廊下の幅、トイレや浴室の数を変える改修は、指定を受けた都道府県や市に先に相談します。介護施設のバリアフリー改修の基準はバリアフリー改修は、介護保険・バリアフリー法・建築基準法で決まりますにまとめています。
  2. 建築の手続き建物の主要な部分(壁・柱・床・はり・屋根・階段)の半分を超える修繕や模様替は、確認申請が要ることがあります。2025年4月の建築基準法の改正で、木造2階建ての施設の大規模な修繕にも要るようになりました。小規模の施設での扱いは木造2階の屋根や階段を作り直すなら、2025年4月から確認申請が要りますで書いています。
  3. 消防間仕切りを変える、天井を張り替えるなどの改修では、感知器やスプリンクラーの位置、避難の経路が変わることがあります。消防設備の業者と、所轄の消防署への届出が要るかを確かめます。
  4. 補助金補助を使う工事は、交付の決定の前に契約や着工をすると、対象から外れます。補助金を使う工事の申請から完了までの流れは補助を使う工事は、交付決定の通知が届くまで契約しませんにまとめています。

4つのうち、どれが自分の工事にかかるかは、工事の中身で変わります。見積を頼む業者や設計者に、「この工事で要る手続きは何か」を最初に聞いておくと、抜けを防げます。

バリアフリー改修で起きやすいこと

バリアフリー改修は、仕様の失敗が起きやすい改修です。基準に合わせることに目が向き、使う方の体の状態や介助の仕方が後回しになりやすいからです。基準は守るべき最低の線で、使いやすさまでは決めていません。基準に合っていても使いにくい、ということが起きます。

バリアフリー改修で起きやすいことと、防ぎ方
改修起きやすいこと防ぎ方
段差の解消浴室やトイレの段差をなくしたら、水が廊下や居室の側へ流れた排水の溝や床の傾きを、段差の解消と一緒に決める
スロープ基準の傾きでも長く、自分で車いすを動かす方には上りきれなかった使う方に実際に上ってもらい、途中で休める平らな所を入れる
手すり高さが使う方に合わない。曲がり角や扉の前で途切れる仮の手すりで高さを決め、続けて握れるかを確かめる
扉引き戸にしたら重く、閉まるときの音が大きい。指をはさみそう軽く動く金物と、ゆっくり閉まる仕組みを選ぶ
床材滑りにくい床にしたら、車いすが重くなり、掃除もしにくい見本を濡らして、歩く・押す・拭くの3つで試す
トイレの手すりの側まひのある方が、手すりを握れない側に付いていたトイレごとに手すりの左右を振り分け、案内を決める

段差の解消と排水は、とくに一緒に考えたい組み合わせです。浴室の出入口の段差は、水を浴室の中にとどめる役もしています。段差をなくすなら、出入口の手前に排水の溝を設ける、浴室の床に傾きをつけるなどで、水の行き先を先に決めます。

浴室の改修では、浴槽や浴室の形式をどうするかが、仕様の中心になります。介護施設の浴室のリフォームの種類は浴室の形式は、入居者の方の体の状態の内訳で選びますにまとめています。

認知症のある方が多い施設では、床の色や柄が、段差や穴に見えることもあります。工事のあとに残る見え方の変化は、仕様を決めるときに、使う職員と一緒に確かめます。工事の間の、認知症のある入居者の方への配慮は認知症のある方への配慮は、工事の段取りで変化を小さくすることですにまとめています。

モデルケース:共用トイレを改修した地域密着型特別養護老人ホーム

モデルケース:定員29名の地域密着型特別養護老人ホーム

引き渡しのあとの「使いにくい」が、14件から2件に減った

変わったこと(結果)

3つのユニットの共用トイレ4か所を改修しました。引き渡しから3か月の間に、職員から出た「使いにくい」という声は2件でした。3年前に浴室を改修したときは、同じ3か月で14件あり、手すり7か所を付け直しました。今回、手すりの付け直しは1か所もありませんでした。

背景と、困っていたこと

この施設は鉄骨造の2階建てで、築19年です。3年前の浴室の改修は、事務長と業者の2人で、カタログを見ながら仕様を決めました。引き渡しのあと、手すりが介助する職員の立つ場所とぶつかり、付け直しに30万円ほどかかりました。トイレの改修では、同じことを繰り返したくないと事務長は考えていました。

決めたこと

仕様を決める前に、使う人に確かめてもらうことにしました。日中と夜勤の介護リーダー、看護職員、機能訓練の職員、清掃の担当、入居者の方3人です。床にテープで原寸の印を描き、車いすと職員2人の介助を再現しました。手すりは仮に当てて高さを決めました。4か所のうち2か所は右側、2か所は左側に付けて、まひのない側の手で握れるトイレを選べるようにしました。夜勤の職員の声で、足元の灯りも加えました。打合せは3回増え、着工は1か月遅れました。事務長は迷いましたが、前回の付け直しの費用と手間が決め手になりました。

進めてみて分かったこと

手すりを左右に振り分けたことで、どの方をどのトイレに案内するかを決める必要が出ました。トイレの入口に手すりの側を示す小さな表示を付け、職員の間で共有しました。仕様を決めた理由を記録に残したので、次の居室の改修でも、同じ確かめ方を使える見込みです。

このモデルケースは、介護施設でよく起きる流れをもとに組み立てた例です。実在の施設のお話ではありません。

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失敗に気づいたときは、仕様どおりかどうかで動き方が変わります

工事のあとに使いにくさや不具合に気づいたら、まず、それが契約の仕様と違う作りなのか、仕様どおりの作りなのかを見分けます。仕様と違えば、業者に直してもらう話になります。仕様どおりなら、施設の決め方の問題で、直すには施設の負担がかかります。

仕様と違うかどうかで、誰の負担で直すかが変わる。使い始めてから気づいた不具合はその不具合は、契約の仕様と違う作りか仕様と違う業者に書面で知らせる期間の定めを確かめる仕様どおり施設の負担で直す決め方を記録に残す
図5 仕様と違うかどうかで、誰の負担で直すかが変わる。
失敗に気づいた時期ごとの動き方
気づいた時期すること知っておくこと
工事の途中気づいた所の作業を止めてもらい、写真を撮り、書面で伝える口頭だけの変更は、あとで費用の話がもつれやすい
引き渡しのとき使う職員と一緒に確かめ、手直しの一覧を作って直す日を決める手直しが残っていることを、引き渡しの書類に書いておく
使い始めて、仕様と違う作りに気づいた写真と日付を残し、書面で業者に知らせる契約書の期間を確かめる。定めがなければ、民法では知った時から1年以内に知らせる
使い始めて、仕様どおりだが使いにくい手直しの工事を検討し、記録に残す施設の指図による不具合は、業者の責任を問いにくい
保証の期間の中で、不具合が出た保証書の範囲かを確かめ、保証で直してもらう保証の期間は、部位ごとに違う

使い始めてから気づいた不具合のうち、仕様と違う作りのものは、契約不適合として業者に直してもらえることがあります。民法では、不適合を知った時から1年以内に業者に知らせないと、直すことなどを求められなくなります(民法第637条)。契約書で別の期間を決めていれば、それに従います。気づいたら、日付の入った写真を残し、すぐに書面で知らせます。

保証の年数は、防水・設備・内装など部位ごとに違います。どの保証がいつ切れるかを一覧にしておくと、保証の範囲で直せる不具合を見逃しません。工事の保証の年数を部位ごとに並べた一覧は工事の保証は、3つに分けて部位ごとに控えますにあります。

失敗は、次の工事の材料にもなります。場所、仕様、使う人の声、直した内容と費用を1枚の記録に残し、次に似た工事をするとき、仕様を決める場で読み返します。担当者が替わっても、同じ失敗を繰り返さずに済みます。

リフォームを決める前に、確かめておくこと

工事の前に確かめる7つの項目

  • 使う場面を、介助の場面と入居者の方の体の状態ごとに書き出したか
  • 介助する職員と入居者の方に、実物か原寸で試してもらったか
  • 寸法・位置・向きを、数字で図面と仕様書に書いたか
  • 同じ仕様書と施設の条件を、各社に渡したか
  • 工程を、入浴・食事・行事の予定と重ねたか
  • 工事中の変更を、誰が決めて何に残すかを決めたか
  • 設備の基準・建築の手続き・消防・補助を確かめたか

仕様を決める段階から相談したいときや、同じ仕様書で見積を比べたいときは、窓口にフォームかLINEでご相談ください。24時間受け付けています(お電話の受付はありません)。工事の場所と、使う方の様子、仕様の候補をお送りいただければ、1回のご依頼で最大3社の見積をそろえられます。相談と見積は無料で、お断りもできます。建物全体の設計や、基準に合うかの最終の判断は、設計事務所や行政の役目で、窓口では代われません。

よくある質問

介護施設のリフォームで、よくある失敗は何ですか

仕様・見積と業者選び・工程と準備・決め方・基準と手続き・引き渡しと記録の6つの型に分かれます。とくに多いのは、使う職員と入居者の方に確かめずに仕様を決めてしまう失敗です。

リフォームの仕様は、施設の中の誰が決めればよいですか

最後に決めるのは施設長や事務長ですが、決める前に、介助する職員、看護や機能訓練の職員、清掃の担当、使う入居者の方に確かめます。業者には、使う場面を伝えて候補を出してもらいます。

使いにくい仕様で工事されたら、業者に直してもらえますか

施設が決めた仕様どおりに作られていれば、業者の責任で直してもらうのは難しくなります。民法では、注文した側の指図による不具合は、業者がそれを不適当と知りながら告げなかった場合を除き、責任を問えません。仕様と違う作りなら、業者に書面で知らせます。

工事のあとに不具合に気づいたら、いつまでに業者に伝えればよいですか

まず契約書の定めを確かめます。定めがなければ、民法では、不適合を知った時から1年以内に業者に知らせます。気づいた日に写真と日付を残し、書面で伝えます。

くわしく:工事の保証は、3つに分けて部位ごとに控えます

仕様を決める前に、実物を試す方法はありますか

あります。ショールームで介助の職員と車いすで動きを試す、床にテープで原寸の印を描く、手すりを仮に当てて高さを決める、などの方法です。床材は、見本を濡らして滑りを確かめます。

リフォームの見積を比べるとき、どこを見れば失敗を防げますか

同じ仕様書と施設の条件を各社に渡し、条件をそろえてから比べます。「一式」の行は内訳と数量を出してもらい、撤去・処分・養生が入っているかを確かめます。

くわしく:見積の比較表は、条件書で6つをそろえてから作ります

工事の途中で、仕様を変えたくなったらどうすればよいですか

現場で口頭で頼まず、施設の担当者を通して、変える内容と費用・工期の差を書面で確かめてから進めます。一定の金額を超える変更は施設長の承認を取り、誰が決めたかを記録に残します。

バリアフリー改修で、基準に合わせても使いにくくなることはありますか

あります。基準は最低の線で、使う方の体の状態や介助の仕方までは決めていません。手すりの高さ、扉の重さ、床の滑りやすさは、使う人に試してもらって決めます。

くわしく:バリアフリー改修は、介護保険・バリアフリー法・建築基準法で決まります

浴室やトイレの段差をなくすときに、気をつけることはありますか

あります。段差をなくすと、水が廊下や居室の側へ流れやすくなります。排水の溝や床の傾きを、段差の解消と一緒に決めます。

補助金を使うリフォームで、よくある失敗は何ですか

交付の決定の前に契約や着工をして、補助の対象から外れることです。補助の手続きの順番と月数を工程表に入れてから、業者と日程を決めます。

くわしく:補助を使う工事は、交付決定の通知が届くまで契約しません

浴室を改修するとき、どの形式を選べばよいですか

入居者の方の体の状態と、介助の仕方で選びます。今の入居者の方だけでなく、これから入る方の状態も見込み、介助する職員に実物で試してもらってから決めます。

くわしく:浴室の形式は、入居者の方の体の状態の内訳で選びます

リフォームの失敗を、次の工事に生かすにはどうすればよいですか

場所、仕様、使う人の声、直した内容と費用を1枚の記録に残します。次に似た工事をするとき、仕様を決める場でその記録を読み返します。

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頼み先の選び方の全体は業者の探し方、頼み先の一覧は設備別の頼み先、ご相談の流れはご相談の流れにまとめています。

監修者

鈴木貴行|介護施設営繕・修繕専門家

  • 30年以上営繕・設備管理の経験
  • 1,000施設超関わった介護・高齢者施設
  • 3,000件超修繕・設備改善の案件

介護施設の営繕・設備管理に30年以上携わり、1,000施設を超える介護・高齢者施設の現場に関わってきました。介護施設のリフォームで起きる失敗の型と、使う職員と入居者の方を入れた仕様の決め方を監修しています。

経験した施設
特別養護老人ホーム有料老人ホームグループホームデイサービスサービス付き高齢者向け住宅
専門分野
給排水空調電気・照明トイレ・浴室床・壁扉・建具ナースコール
  • 民法 第636条(請負人の担保責任の制限)・第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
  • 国土交通省「瑕疵担保責任について」(資料3)
  • 建築基準法 第2条第14号・第15号(大規模の修繕・大規模の模様替)、第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)

制度や基準、費用の目安は変わることがあります。手続きや工事の前に、最新の資料と、現地を確かめた見積でご確認ください。

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